「その解雇は絶対に無効です」と断言できる11の事例

使用者が労働者を解雇する場合、その解雇の事実について「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が認められなければ、その解雇は解雇権を濫用したものとして無効と判断されます(労働契約法第16条)。

【労働契約法第16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

しかし、この解雇の有効要件となる「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の判断は難しく、弁護士などの専門家でもない限りその有無を確認するのは容易ではありませんので一般の労者がその有無を判断することは事実上困難です。

しかし、労働関係法令では、特定の態様について使用者(事業主)の解雇を絶対的に禁止しているものがありますので、そのような絶対的に禁止される態様で解雇がなされた場合には、その解雇の事実だけで「客観的合理的な理由」が「ない」と判断できるケースもあります。

そこでここでは、「客観的合理的な理由」が「ない」として100%その解雇が無効であると断言できる解雇の態様にはどのようなケースがあるのか確認してみることにいたしましょう。

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「その解雇は100%無効だ」と断言できる11のケース

前述したように、労働関係法令では特定の態様における解雇を絶対的に禁止しているものがありますので、その態様において行われた解雇については法的に絶対的に許容されない結果として労働契約法第16条における「客観的合理的な理由」が「ない」と確定的に認定されるケースがあります。

具体的には、以下の(1)~(11)にあげる11事例の態様で解雇されたケースでは、その解雇の事実だけで確定的に「客観的合理的な理由を欠く」と認定されることになりますので、その解雇を「100%無効だ」と断言することが可能です。

(1)労働者の国籍・信条・社会的身分を理由にした解雇のケース

使用者は国籍や信条、社会的身分を理由として、労働者に差別的取り扱いをしてはなりません(労働基準法第3条)。

労働基準法第3条

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

そのため、労働者がその国籍や政治思想、信仰や社会的身分そのものを理由にして解雇された場合には、その解雇は明らかに「客観的合理的な理由」がないと判断されることになるので解雇権を濫用するものとして無効になるものと解されます。

ですから、たとえば外国人労働者が「在日外国人だから」という理由で解雇されたり、特定の政治デモに参加したことを理由に解雇されたり、部落出身者であることを理由に解雇されたりした場合には、その解雇は明らかに無効だと言えます。

(2)労働者の性別を理由にした解雇のケース

事業主は労働者の性別を理由として、解雇や契約の更新に差別的取り扱いをしてはなりません(雇用機会均等法第6条4号)。

雇用機会均等法第6条

事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。

第1号 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
第2号 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
第3号 労働者の職種及び雇用形態の変更
第4号 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

そのため、仮に労働者が事業主から性別を理由に解雇された場合には、その解雇は「客観的合理的な理由がない」と認定されることになりますので、その解雇の事実だけで確定的に「無効」と判断されることになります。

なおこれはLGBTなどの特性を持つ労働者についても当然に当てはまります。

ですから、LGBTの特性を理由に解雇された場合には、その解雇は明らかに無効だと指摘することができると言えます。

(3)業務上の負傷または疾病に関する解雇のケース

使用者は、労働者が業務上負傷しまたは疾病に罹患したために休業した場合、その労働者を解雇することが一定期間絶対的に禁止されています。具体的には、次の「ア」と「イ」の期間中は、労働者の解雇が認められていません。

ア)業務上の負傷または疾病による休業期間中に行われた解雇

使用者は、労働者が業務上負傷しまたは疾病に罹患したことのために休業する期間は、その労働者を解雇することができません(労働基準法第19条第1項)。

労働基準法第19条

第1項 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
第2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

この点、労働基準法第19条の但書は、使用者が労働基準法第81条の「打切補償」を行った場合に例外的にこの解雇制限の解除を規定していますので、「打切補償」を行えば休養期間中でもこの解雇制限が解除されることがあるように思えますが、労働基準法第81条は「療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合」に限って労働基準法第75条の打切補償を認めていますので、療養開始後3年が経過するまでは打切補償することもできませんから、その療養開始後3年の間は労働基準法第19条1項本文によって絶対的に解雇が禁止されることになります。

つまり、労働者が労働災害で負傷又は疾病にかかり療養する場合において療養開始から3年を経過しない間は、打切補償自体が認められないので労働基準法第19条1項但書の適用が排除される結果、同条1項本文によって絶対的に解雇が禁止されるので、療養開始から3年を経過しない間に行われた解雇は絶対的に「客観的合理的な理由」が「ない」と認定されるため無効と判断されることになるのです。

ですから例えば、勤務中に骨折して入院し3年が経過するまで自宅療養している状況で解雇された場合には、使用者がその労働者を「打切補償」をすること自体ができず労働基準法第19条1項本文の規定から解雇が絶対的に禁止されていることになりますので、その解雇は労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」がないとして無効と判断されることになります。

イ)業務上の負傷または疾病の休業期間終了後30日以内に打切補償がない状態で行われた解雇

使用者は、労働者が業務上負傷しまた疾病に罹患したことのために休業した後の30日間は、その労働者を解雇することができませんが(労働基準法第19条第1項)、労働基準法第81条の「打切補償」が行われた場合は例外的にこの解雇制限が解除されます(同条1項但書)。

ですから、労災で療養している労働者が3年を経過し治らない場合には、労働基準法第81条に基づいて「打切補償」を支払えば、労働基準法第19条の解雇制限が解除されるので、労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件を満たせば解雇することができるということになるのです。

しかし、それはあくまでも「打切補償をしたこと」が前提となりますから、そもそもその打切補償をしていない場合には、その解雇は絶対的に禁止されまるので「客観的合理的な理由」が「ない」と認定される結果、無効と判断されるころになります。

ですから、「ア」の労働者が勤務中に骨折して入院し、3年間療養して7月1日から勤務を再開しようとしている状況にあるケースにおいて、使用者が労働基準法第81条の打切補償を支払わないまま7月1日から7月30日までの間に解雇したケースでは、その解雇は「客観的合理的な理由がない」として無効と判断されることになります。

(4)女性労働者が産前または産後に一定の条件の下で解雇されるケース

使用者は、女性労働者が産前または産後にある一定期間、絶対的にその女性労働者を解雇することが禁止されています(労働基準法第19条)。

また、産前または産後の一定期間にかかわらず、女性労働者の婚姻・妊娠・出産に関する事由を理由にして解雇することが絶対的に禁止されるケースもあります(雇用機会均等法第9条第2項ないし3項、同法施行規則第2条の2、労働基準法第19条)。

ですから、労働基準法第19条、雇用機会均等法第9条、同法施行規則第2条の2に該当する女性労働者に対する解雇は絶対的に禁止されていることになりますので、その解雇の事実だけで無条件に労働契約法第16条の「客観的合理的な理由を欠く」と認定されることになり、その解雇が解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになります。

具体的には次に挙げる10のケースがそれにあたります。

女性労働者への解雇が「100%無効だ」と判断できる10のケース

  1. 女性労働者の産前または産後の休業中に行われた解雇
  2. 女性労働者の産前または産後の休業が明けてから30日が経過する前になされた解雇
  3. 女性労働者が婚姻・妊娠・出産したことを理由にした解雇
  4. 女性労働者が産前または産後の休業を請求しまたは取得したことを理由にした解雇
  5. 女性労働者が妊娠中および産後の健康管理に関する措置を求め、またはその措置を受けたことを理由とした解雇
  6. 女性労働者が妊娠中または産後に坑内業務や危険有害業務を避けたことを理由にした解雇
  7. 女性労働者が妊娠中に他の軽易な業務への転換を請求しまたは転換したことを理由にした解雇
  8. 妊娠中または産後1年を経過しない女性労働者が残業や休日出勤、深夜勤務をしなかったりしないことの請求をしたことを理由にした解雇
  9. 生後満1歳に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩を請求しまたは取得したことを理由にした解雇
  10. 女性労働者が妊娠または出産に起因して勤務できずまたは能力が低下したことを理由にした解雇

※なお、この10のケースにおける解雇が無効と判断される理由については『女性労働者への解雇が「100%無効だ」と判断できる10のケース』のページでより詳しく解説していますのでそちらをご確認ください。

(5)育児・介護休業を請求または取得したことを理由にして行われた解雇のケース

事業主は、労働者が育児休業を申し出たり、育児休業を実際に取得し休業したことを理由として、その労働者を解雇してはなりません(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第10条)。

育児介護休業法第10条

事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

また、この規定は労働者が介護休業を申し出たり介護休業を取得した場合にも準用されていますので(育児介護休業法第16条)、事業主は労働者が介護休業を申請したり、介護休業を取得して休業したことを理由に解雇することも許されません。

育児介護休業法第16条

第10条の規定は、介護休業申出及び介護休業について準用する。

ですから、育児休業や介護休業の取得を申請した労働者がそのことを理由に解雇されたり、育児休暇や介護休暇を取得した労働者がその休業したことを理由に解雇されたりした場合には、ただその解雇の事実だけで労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」が「ない」と認定されることになり、その解雇は解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになります。

(6)労働者が労働基準監督署に違法行為の申告を行ったことを理由にした解雇のケース

使用者において労働基準法や労働安全衛生法、賃金の支払い確保等に関する法律、最低賃金法、労働者派遣法など労働関連法に違反した事実がある場合、労働者は労働基準監督署(※ただし派遣労働者の派遣労働にかかる申告は労働局(※労働者派遣法施行規則第55条)またはハローワーク(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou/dl/12.pdf))に違法行為の申告を行うことでその是正を求めることができますが、労働者がこの違法行為の申告を行ったことを理由に使用者がその労働者を解雇することは絶対的に禁止されています(労働基準法第104条第2項、労働安全衛生法第97条第2項、賃金の支払い確保等に関する法律第14条第2項、最低賃金法第34条第2項、労働者派遣法第49条の3第2項)。

労働基準法第104条

第1項 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
第2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

労働安全衛生法第97条

第1項 労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
第2項 事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

賃金の支払い確保等に関する法律第14条

第1項 労働者は、事業主にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
第2項 事業主は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

最低賃金法第34条

第1項 労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
第2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

労働者派遣法第9条の3

第1項 労働者派遣をする事業主又は労働者派遣の役務の提供を受ける者がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、派遣労働者は、その事実を厚生労働大臣に申告することができる。
第2項 労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者は、前項の申告をしたことを理由として、派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

ですから、これらの法律に基づいて労働基準監督署(派遣労働に関する申告はハローワーク又は労働局)に違法行為の申告を行った労働者が、その申告を行ったことを理由として解雇された場合には(たとえば労働基準監督署に申告を行ったことの報復に解雇された場合など)、ただその解雇の事実だけで労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」が「ない」と認定されることになり、その解雇は解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになります。