被差別部落出身者であることを理由に解雇された場合の対処法

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被差別部落出身者であることを理由に解雇されてしまうケースがごく稀にあるようです。

たとえば、会社での雑談で本籍地の話題になったところ自分の本籍地が被差別部落にあたる地域であったことから差別意識のある社長や上司に疎まれて解雇させられてしまうようなケースがそれにあたります。

このような部落差別が許されないことは誰でも分かりますが、実際にそのような理由で解雇されてしまえばどのように対処してよいか分からないかもしれません。

では、このように部落出身者であることを理由に解雇された場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか。

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解雇は「客観的合理的な理由」がない限り無効と判断される

被差別部落出身者であることを理由に解雇された場合の対処法を考える前提として、そもそもその解雇が具体的にどのようなケースで有効と判断され、どのようなケースで無効と判断されるのか、その基準を理解しておく必要があります。

解雇自体の有効性の基準を理解できなければ、そもそもその解雇が有効か無効かもわからないからです。

この点、解雇の有効要件は労働契約法第16条に規定されていますので、条文を確認してみましょう。

労働契約法第16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

このように、労働契約法第16条は解雇に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件を求めていますので、解雇の事由に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」のどちらか一方でも欠けていれば、その解雇は解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになります。

つまり、労働者が解雇された場合には、その解雇の事由に「客観的合理的な理由」がない場合にそれが無効になるだけではなく、仮にその客観的合理的な理由があると判断できる事案であっても、その理由に基づいて解雇することに「社会通念上の相当性」がない場合には、その解雇は解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになるわけです。

被差別部落出身者であること(社会的身分)を理由とした解雇は確定的に無効

このように、解雇は労働契約法第16条に従い、その解雇事由に「客観的合理的な理由」があるかないか、また仮にその客観的合理的な理由が「ある」と判断される場合であっても、その解雇理由に基づいて解雇することが「社会通念上相当」と言える事案でない限り、解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになります。

この点、これを踏まえたうえで被差別部落出身者であることを理由にした解雇の効力を考えてみますが、結論から言えばそのような解雇は無効と判断されることになります。

なぜなら、社会的身分を理由に解雇することが労働基準法第3条で絶対的に禁止されているからです。

労働基準法第3条

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

労働基準法第3条は、「社会的身分」を理由に労働者に対して差別的な取り扱いをすることを禁止していますから、被差別部落出身者であることが社会的身分に含まれること、また解雇が労働契約の一方的解約として労働条件の全面的破棄である以上、労働者が被差別部落出身者であることを理由に解雇することはこの労働基準法第3条によって禁じられていることになります。

そして被差別部落出身者であることを理由に解雇することが労働基準法第3条によって絶対的に禁止されているのであれば、被差別部落出身者であることを理由に解雇することに「客観的合理的な理由」は存在しませんから、当然それを理由とした解雇は労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」の要件を満たさないことになります。

そのため、被差別部落出身者であることを理由に行われた解雇は、絶対的確定的に、ただその事実だけで無効と判断されることになるのです。

被差別部落出身者であることを理由に解雇された場合の対処法

以上で説明したように、被差別部落出身者であることを理由になされた解雇は絶対的・確定的に無効といえますので、労働者はその無効を主張して撤回を申し入れたり、解雇日以降に得られるはずであった賃金の支払いを請求することもできます。

もっとも、実際に労働者が勤務先から被差別部落出身者であることを理由に解雇された場合には、解雇された労働者の方で何らかの具体的な対処をしないとその解雇の手続きが進められてしまいますので、その場合に取り得る対処法が問題となります。

(1)解雇理由の証明書の交付を請求しその交付を受けておく

被差別部落出身者であることを理由に解雇された場合には、勤務先に解雇理由の証明書の交付を請求し、その証明書の交付を受けておくようにしてください。

労働基準法第22条は、退職または解雇された労働者が請求した場合に使用者がその退職の理由に係る証明書(解雇の場合は解雇の理由が記載された証明書)を交付しなければならないことを義務付けていますので、解雇された労働者が請求すれば必ず使用者から解雇理由の証明書を交付してもらえることができます。

ではなぜこの解雇理由の証明書の交付を受けておく必要があるかというと、それは会社が後になって勝手に解雇の理由を変更してしまうのを防ぐ必要があるからです。

先ほどから説明しているように被差別部落出身者であることを理由に解雇することは労働基準法第3条で絶対的に禁止されていますから、裁判になれば間違いなく使用者側が敗訴することになります。

そのため、被差別部落出身者であることを理由に解雇した会社の中には、裁判になった際に勝手に解雇の理由を別の理由に変更し「あれは部落出身者であることを理由に解雇したのではなくて労働者に○○の行為があったからですよ」などと労働者の非違行為をでっちあげて、裁判を有利にしようとするケースがあるのです。

このような解雇理由の変更を防ぐためには、解雇を受けた時点で解雇の理由を確定させておく必要がありますが、解雇理由証明書の交付を受けておけば、その証明書に解雇の事由が具体的に記載されることになりますので解雇の事由が勝手に変更されてしまうことを防ぐことができます。

そのため、部落出身者であることを理由に解雇された場合には、まず解雇理由証明書の交付を受けておくことを心掛ける必要があるのです。

なお、解雇理由証明書の請求に関する詳細は以下のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。

(2)被差別部落出身者であることを理由にした解雇が違法であることを書面で通知する

部落出身者であることを理由に解雇された場合は、その解雇が違法であることを記載した通知書を作成し使用者に送付してみるのも対処法の一つとして有効な場合があります。

先ほどから説明しているように部落出身者であることを理由に解雇することは労働基準法第3条で絶対的に禁止されていますが、そうした差別をする会社はそもそも法令遵守意識が低いと思いますので、そのような会社に口頭で「違法な解雇を撤回しろ」と抗議しても無視されるのが通常です。

しかし、書面という形で正式に抗議すれば、将来的な裁判や行政官庁への相談を警戒して、解雇の撤回や交渉に応じてくるケースもありますので、とりあえず書面の形で通知してみるというのも対処法として効果がある場合があると考えられるのです。

なお、この場合に使用者に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

社会的身分を理由にした解雇の無効確認及び撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から解雇する旨の通知を受け、同月末日をもって貴社を解雇されました。

この解雇に関しては、貴社から、私の本籍地が○○県○○市○○町にあり、そこがいわゆる被差別部落であるとの情報があったことから貴社の社員としてふさわしくないと判断した旨の説明がなされております。

しかしながら、労働基準法第3条は社会的身分を理由にした労働者の差別的取り扱いを禁止していますので、被差別部落出身者であることを理由にした解雇は明らかに違法です。

したがって、私は、貴社に対し、本件解雇が無効であることを確認するとともに、当該解雇を直ちに撤回するよう、申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。