外国人研修生・技能実習生が不当な寮費を給料から控除された場合

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外国人研修生や技能実習生を雇用している会社では、そうして雇い入れ外国人を自社が管理する社員寮などに住まわせて、その寮費や水道光熱費を毎月の給料(賃金)から控除しているケースが多く外国人研修生や技能実習生を雇用している会社では、そうして雇い入れ外国人を自社が管理する社員寮などに住まわせて、その寮費や水道光熱費を毎月の給料(賃金)から控除しているケースが多くみられます。

もちろん、こうした寮費や水道光熱費の控除は労働者が自由な意思の下で承諾しているものであれば問題とはならないわけですが、その控除額が正当な金額を超えた不当なものであったり、他の日本人労働者と比較して不公平なものである場合には問題となりえます。

たとえば、外国人研修生や技能実習生5~6人が六畳一間の部屋で生活しているにもかかわらず、水道光熱費を含む寮費として毎月一人暮らしできるぐらいの金額を控除されていたり、他の日本人従業員が毎月5万円しか控除されていないにもかかわらず同じ寮に入居している外国人研修生や技能実習生だけがなぜか5万円以上控除されているケースです。

このような合理性のない寮費や水道光熱費の控除は外国人労働者にとって到底納得できるものではありませんが、言葉も習慣も異なる外国人労働者がそうした不当な控除の問題を指摘するのは容易ではありません。

では、外国人研修生や技能実習生がこうした寮費や水道光熱費について賃金(給料)から不当な控除を受けている場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか。

また、そうした不当な控除がなされていることに気づいた日本人は、具体的にどのような助言や行動をすればそうしたトラブルから外国人研修生や技能実習生が助けることができるのでしょうか。

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過大または差別的な寮費や水道光熱費の控除は労働基準法違反行為として違法性を指摘できる

このように、勤務先の会社が管理する社員寮などで生活している外国人研修生や技能実習生が毎月の給料(賃金)から不当に高額な寮費や水道光熱費あるいは食費等を控除されたり、同じ寮に入居している他の日本人従業員と比較して不公平に高額な寮費等を控除されるケースがあるわけですが、こうした控除は労働基準法に違反する違法性を指摘することが可能です。

(1)賃金(給料)から控除される寮費や水道光熱費等が不当に過大なケース

まず、勤務先が管理する社員寮などに入居している外国人研修生や技能実習生が不当に高額な寮費や水道光熱費あるいは食費等を賃金(給料)から控除されているケースを考えてみましょう。

たとえば、先ほど例示したような六畳一間に数人の外国人労働者が詰め込まれて生活しているようなケースが代表的ですが、地価の高い東京の中心部であっても六畳一間のアパートなら5、6万円程で借りられますから、かかる相場より高い寮費を控除されているケースがあれば明らかに不当な搾取と言えます。

また、水道光熱費にしても単身者なら電気やガス代は高くても月5千円前後、水道代は地域によっても差がありますが概ね月3千円前後が相場でしょうし、しかも複数人が一部屋に同居していれば一人当たりの光熱費は少なくなるのが普通ですから、かかる平均的な光熱費を超えた金額が控除されているケースがあるとすれば、それは明らかに不当な搾取と考えられます。

仮にこうしたケースがあるとすれば、それは本来支給されるべき賃金(給料)から「寮費」「水道光熱費」あるいは「食費等」の名目で不当に金銭が控除されているということになりますが、それは本来支給されるべき賃金(給料)の一部が支払われていないということになりますので、賃金の「全額払い」を義務付けた労働基準法第24条に違反しているという指摘が可能です。

【労働基準法第24条】

第1項 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
第2項 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

ですから、外国人研修生や技能実習生が本来支給されるべき賃金(給料)から寮費や水道光熱費などの名目で不当に高額な金額を控除されている場合には、労働基準法第24条違反を指摘してその控除の撤回やそれまで控除されてきた分の寮費等を「賃金の未払い」として請求することが可能であると考えられます。

(2)賃金(給料)から控除される寮費や水道光熱費が他の日本人従業員と比較して不公平に高額なケース

(1)とは異なり、勤務先の会社が管理する社員寮などで生活している外国人研修生や技能実習生が、同じ寮に入居している他の日本人労働者と比較して不当に高額な寮費や水道光熱費・食費などを控除されているケースでは、必ずしも(1)のような労働基準法第24条違反とはなりません。

日本人労働者と比較して不当に高額な寮費や水道光熱費を控除されていたとしても、その控除された金額が実際にかかった住居費や水道光熱費等に相当する場合には、不当な控除とは言えず「賃金の未払い」の問題は生じないからです。

たとえば、勤務先の会社が管理する社員寮に入居している外国人労働者が水道光熱費・食費も含めた寮費として毎月6万円を控除されているケースがあったとして、その金額が周辺地域のアパートや水道光熱費の相場と比較して妥当な金額である場合には、たとえ同じ寮に入居している他の日本人労働者が毎月3万円しか控除されていないとしても、それは日本人労働者の控除額が低いだけで外国人労働者の控除額が高いわけではありませんから不当な控除とはなりません。

その外国人労働者の賃金から控除されているのは、その外国人労働者がその入居している社員寮で必要となる住居費や水道光熱費あるいは食費の正当な金額の範囲にとどまるので、それは正当な控除額が控除されているだけにすぎず賃金の未払い」が生じているとは言えないからです。

しかし、このケースでは日本人労働者が本来控除されるべき6万円の寮費から3万円がディスカウントされて半額の3万円しか控除されていないわけですから、その差額の3万円は会社が賃金の給付として優遇しているか福利厚生の一つとして日本人労働者に給付していることになります。

そうすると、このケースでは寮費の全額の6万円を控除されている外国人労働者だけがその賃金または福利厚生の恩恵を受けられていないということになりますので、外国人労働者だけが賃金又は福利厚生の対象から除外されているということになるでしょう。

これはすなわち、外国人労働者が「国籍」を理由に賃金その他の労働条件で差別的取り扱いを受けているということになりますから、その差別的取り扱いを禁止した労働基準法第3条に違反しているという指摘が可能です。

【労働基準法第3条】

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

ですから、勤務先の会社が管理する社員寮などで生活している外国人研修生や技能実習生が、同じ寮に入居している他の日本人労働者と比較して不当に高額な寮費や水道光熱費・食費などを控除されているケースでは、(1)のように労働基準法第24条違反を指摘することができないケースであったとしても、少なくとも労働基準法第3条違反を指摘して、その差別の解消を求めることで結果的に控除された賃金(給料)の支払いを求めることができるものと考えられます。

外国人研修生や技能実習生が寮費や水道光熱費・食費等の名目で賃金(給料)から不当に控除された場合の対処法

以上で説明したように、勤務先の会社が管理する社員寮などで生活している外国人研修生や技能実習生が寮費や水道光熱費・食費等の名目で本来支給されるべき賃金(給料)から過大なもしくは差別的な控除を受けている場合には、労働基準法第3条や同法第24条を根拠にしてその控除された賃金(給料)の支払いを求めたり差別的取り扱いを止めさせることが可能と考えられます。

もっとも、実際に外国人研修生や技能実習生がそうした控除を受けた場合には、外国人労働者自らが何らかの対処を取らなければなりませんので、その場合に取りうる具体的な対処法が問題となります。

(1)労働基準監督署に相談(申告)する

勤務先の会社が管理する社員寮などで生活している外国人研修生や技能実習生が寮費や水道光熱費・食費等の名目で本来支給されるべき賃金(給料)から過大なもしくは差別的な控除を受けている場合には、その事実を労働基準監督署に相談(申告)してみるというのも対処法の一つとして有効と考えられます。

前述したようにそうしたケースは労働基準法第24条又は同法第3条に違反することを指摘できますが、使用者(個人事業主も含む)に労働基準法違反がある場合には、労働者がその事実を労働基準監督署に相談(申告)することで監督署からの監督権限の行使を促すことが可能です(労働基準法第104条1項)。

【労働基準法第104条1項】

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

この労働基準監督署への申告がなされた場合、監督署は必要に応じて調査や臨検を行うことがありますが、仮に監督署が臨検や調査を行い、使用者(個人事業主も含む)側に労基法違反の事実が確認されて監督署から勧告等が出されれば、使用者側がそれに従うことで不当な金額の控除が改善されたり、日本人労働者との差別的取り扱いが是正されることも期待できます。

そのため、こうしたケースではとりあえず労働基準監督署に相談(申告)してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する申告書の記載は以下のようなもので差し支えないと思います。

ア)本来の経費より過大な寮費や水道光熱費・食費等が賃金(給料)から控除されている場合

労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

○年〇月〇日

○○ 労働基準監督署長 殿

申告者
郵便〒:***-****
住 所:東京都〇〇区○○一丁目〇番〇号 株式会社○○社員寮〇号室
氏 名:ソーダン・スルティット・スグーニ
電 話:080-****-****

違反者
郵便〒:***-****
所在地:東京都〇区〇丁目〇番〇号
名 称:株式会社○○
代表者:代表取締役 ○○ ○○
電 話:03-****-****

申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのある雇用契約※注1
役 職:特になし
職 種:工場作業員(技能実習生)

労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法第24条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は、〇年〇月〇日、技能実習生として来日し、同年〇月から〇年間の契約で違反者の○工場で○○作業員として働いている。
・申告者は違反者が運営する社員寮に入居しているが、同時に来日した他の技能実習生4人で六畳一間の一室を割り当てられているにすぎず、特段の電化製品やガス器具を利用していないにもかかわらず、寮費(水道光熱費・食費も含む)として毎月10万円を賃金(給料)から控除されている。
・しかし、近隣の同程度のアパートは家賃4万円程度で借りられるので、食費や光熱費を合計しても一人当たりの実際の経費は月5万円を超えないものと考えられる。
・したがって、違反者は毎月5万円を申告者の賃金から寮費の名目で不当に控除していると言えるから、その控除された部分の賃金は未払い状態になっていると言えるので、賃金の全額払いを規定した労働基準法第24条に違反している。

添付書類等
・〇月分~〇月分までの給与明細書の写し…○通※注2
・労働契約書の写し…1通※注2

備考
本件申告をしたことが違反者に知れるとハラスメント等の被害を受ける恐れがあるため違反者には申告者の氏名等を公表しないよう求める。※注3

以上

※注1:正社員など無期労働契約の場合は「期間の定めのない雇用契約」と記載してください。

※注2:賃金(給料)の未払い(不払い)を証明する証拠がある場合はその書類等の写し(コピー)を添付してください。写し(コピー)を添付するのは後日裁判などに発展した場合に原本を利用する必要があるからです。労働基準監督署への申告に証拠書類の添付は必ずしも必要ありませんので、証拠がない場合は「特になし」等記載して添付しなくても構いません。

※注3:労働基準監督署に申告したことが会社に知れてしまうと制裁に不当なパワハラ等を受けてしまう危険性もありますので、そうした危険がある場合はこのような文章を記述して会社側に自分の名前を伏せておくように依頼しておきます。会社に申告したことが知られても構わない場合はこの欄は削除しても構いません。

イ)他の日本人労働者と比較して不当に高額な寮費や水道光熱費等が賃金(給料)から控除されている場合

(省略)

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法第3条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は、〇年〇月〇日、技能研修性として来日し、同年〇月から〇年間の契約で違反者の○工場で○○作業員として働いている。
・申告者は違反者が運営する社員寮に入居しているが、同じ寮に入居している他の日本人労働者が毎月寮費として5万円を給料から控除されているにすぎないにもかかわらず、申告者をはじめとした外国人研修生だけが毎月10万円を賃金(給料)から控除されている。
・この5万円の差について違反者は「外国人は日本語が不自由だから寮生活でもいろいろと配慮が必要になるので日本人より寮費が高くなるのは仕方ない」などと説明しているが、仮に日本語が堪能でないとしても毎月5万円もの金額を控除するのは合理的範囲を超えており理由なく搾取しているというほかない。
・したがって、かかる寮費の不公平な取り扱いは、国籍を理由とした差別的取り扱いを禁止した労働基準法第3条に違反する。

添付書類等

(省略)

(2)労働局に相談(申告)して労働局の個別紛争解決援助の手続きを利用してみる

勤務先の会社が管理する社員寮などで生活している外国人研修生や技能実習生が寮費や水道光熱費・食費等の名目で本来支給されるべき賃金(給料)から過大なもしくは差別的な控除を受けている場合には、その事実を労働局に相談(申告)してみるというのも対処法の一つとして有効と考えられます。

労働局では労働者と事業主の間で発生したトラブルの解決を図るための紛争解決援助の手続きを用意していますが、かかる寮費の不当な控除についても労働者と事業主の間で発生した「賃金」に関するトラブルと言えますのでこの労働局の紛争解決援助の手続きを利用して解決を図ることが可能です。

この点、この労働局の紛争解決援助の手続きには法的な強制力がありませんので会社側が手続きに応じない場合には解決は望めませんが、会社が手続きに応じる場合には労働局から出される助言や指導、あっせん案などに会社が従うことで不当な寮費の控除や日本人労働者との差別的取り扱いが改善されることも望めます。

そのため、こうしたケースではとりあえず労働局に相談して紛争解決援助の手続きを利用できないか検討してみるのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、この労働局の紛争解決援助の手続きは労働者であればだれでも利用できますから、外国人研修生や技能実習生として来日した外国人もこの手続きを利用することが可能です。

ちなみに、労働局の手続きについては『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説しています。

(3)弁護士等に相談して示談交渉や裁判所の訴訟手続きを提起してもらう

こうしたケースでは、弁護士(不当に控除された金額の合計が140万円以下の場合は司法書士でもよい)に相談して示談交渉や裁判手続きを利用して不当に控除された賃金(給料)の回収を図ったり、寮費に関する日本人労働者との差別的取り扱いを改善させることももちろん可能です。

また、弁護士の手を借りない場合であっても、法律に詳しくない素人が下手に交渉するとかえって不利になるケースもありますので、不当な控除があった時点でとりあえず弁護士等に相談してみるということも考えてよいかもしれません。

なお、弁護士等に相談する場合の詳細は『弁護士・司法書士に依頼して裁判をする方法』のページで詳しく解説しています。

(4)その他の対処法

これら以外の方法としては、各自治体の提供する相談やあっせん手続きを利用したり、各地方の労働委員会が主催するあっせん手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会などが提供するADR手続きを利用したりする方法が考えられます。

なお、それら他の手続きについては『労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは』のページでまとめていますので参考にしてください。