外国人研修生・技能実習生が賃金で差別を受けている場合の対処法

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研修生や技能実習生として来日し働いている外国人が日本人と同じ仕事に従事しているにもかかわらず、賃金で不利益を受けているケースが稀に見られます。

たとえば、外国人研修生や技能実習生として来日した外国人が工場で日本人と同じ作業に就いているにもかかわらず、日本人は時給1000円の賃金を支給されているのに外国人だけが時給800円しかもらえないというようなケースであったり、社員寮の住居費や水道光熱費の金額が日本人の入寮者と比較して外国人労働者だけ多く控除されているようなケースです。

しかし、日本人と同じ作業をしているにもかかわらず、外国人だけが賃金を低く抑えられる(または寮費を多く徴収される)のは納得できないような気がします。

では、このように外国人研修生や技能実習生など外国人労働者が日本人労働者より低い賃金しか支給を受けられない状況は差別とはならないのでしょうか。

また、実際に外国人研修生や技能実習生が賃金で差別的な待遇を受けている場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか。

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外国人研修生や技能実習生に対する賃金の不利益取り扱いは労働基準法第3条に違反する余地がある

この点、結論から言えば外国人研修生や技能実習生の賃金を日本人のそれと比較して低く抑えるのは労働基準法第3条に違反する余地があります。

労働基準法第3条は国籍を理由にした差別的取り扱いを禁止しており、同じ仕事に従事する日本人と賃金に差をつけるのは合理的な理由がない限り、この規定に抵触するからです。

【労働基準法第3条】

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

企業側が負担する研修や指導のためのコストの合理的な範囲を超える差別は違法性を帯びる

このように、外国人研修生や技能実習生の賃金を日本人と比較して低く抑えるのは差別的取り扱いとして労働基準法第3条に違反する余地があると言えます。

しかし、外国人研修生や技能実習生を受け入れる企業は研修や指導に一定程度のコストを必要としますので、外国人研修生や技能実習生の賃金を他の日本人より低く抑えることが必ずしも差別に当たるとは言えない面もあるかもしれません(たとえば、通訳を雇うのに費用が必要な場合など)。

ですから、外国人研修生や技能実習生の受け入れに必要なコストを考慮して必要な範囲であれば他の日本人との賃金に差を設けても一概には差別とは言えないケースもあるものと考えられます。

もっとも、この点はケースバイケースで考えるしかありませんから、外国人研修生や技能実習生の賃金が日本人より低く抑えられている状況がある場合には、まず労働基準法第3条に違反する差別であることを前提としたうえで、企業側のコストからその差別が合理的な範囲にとどまるものかという点を検討していくことが必要になろうかと思われます。

外国人研修生や技能実習生の賃金が日本人より低く抑えられ差別されている場合の対処法

では、実際に外国人研修生や技能実習生の賃金が同じ日本人より低く抑えられていて差別されていると感じている場合、またその差別を会社側に抗議しても会社が改善しない場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか。

(1)労働基準法第3条に違法行為の相談(申告)してみる

外国人研修生や技能実習生の賃金が同じ仕事に従事する日本人と比べて低く設定されて不利益な取り扱いを受けていると感じている場合には、その事実を労働基準監督署に相談(申告)してみるというのも対処法の一つとして有効と考えられます。

労働基準法第104条1項は使用者(個人事業主も含む)が労働基準法に違反している状況にある場合に労働者からその事実を労働基準監督署に相談(申告)することで監督署からの監督権限を促すことを認めていますから、外国人に対する賃金の差別が労働基準法第3条で禁止されている以上、このようなケースでも労働基準監督署に申告することが可能です。

【労働基準法第104条1項】

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

もちろん、この労基法104条1項に基づく労働基準監督署への申告は「労働者」のすべてに認められていますので、国籍の有無にかかわらず外国人労働者がこの申告をすることも差し支えありません。

そして仮に監督署への申告を行い、監督署から臨検や調査が行われて勧告等が出され、それに会社(個人事業主も含む)が従う場合には、違法な賃金差別が解消されることも期待できます。

また、仮に前述したように外国人研修生や技能実習生の賃金が日本人より低く抑えられていることが会社(個人事業主も含む)側のコストとして認められる範囲か不明な場合にも、この労働基準監督署への違法行為の申告をすることで労働基準監督署に相談(申告)することで監督署から必要な助言を受けられたり、監督署が調査や臨検を行うことでその賃金の差別的取扱いが合理的なコストとして許容できるか調べてもらうこともできますから、この労働基準監督署に相談(申告)することが解決につながることも期待できます。

そのため、こうしたケースでは労働基準監督署に相談(申告)することも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

そしてもちろん、行政の手続きなので申告(相談)は無料です。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する申告書の記載は次のようなもので差し支えないと思います。

労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

○年〇月〇日

○○ 労働基準監督署長 殿

申告者
郵便〒:***-****
住 所:東京都〇〇区○○一丁目〇番〇号 株式会社○○社員寮〇号室
氏 名:シンコク・スルティット・スグーニ
電 話:080-****-****

違反者
郵便〒:***-****
所在地:東京都〇区〇丁目〇番〇号
名 称:株式会社○○
代表者:代表取締役 ○○ ○○
電 話:03-****-****

申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのない雇用契約※注1
役 職:特になし
職 種:一般事務

労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法第3条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は、〇年〇月〇日に違反者に技能実習生として入社して以降、日本人従業員と全く同じ作業(養殖ガキの選別作業)に従事しているが、日本人労働者の給与が時給1000円である一方、申告者の給与は時給800円に据え置かれている。
・違反者は福利厚生の一環で社員寮を設置し入寮している従業員の給与から毎月水道光熱費と食費を含む寮費を控除しているが、日本人の社員からは毎月5万円しか控除していないにもかかわらず、外国人労働者の申告者からは毎月金10万円を控除している。
・以上の違反者における申告者への賃金の差別的取り扱いは労働基準法第3条の国籍を理由とした差別的取り扱いにあたる。

添付書類等
・労働契約書の写し…1通※注2
・〇月分の給与明細書の写し…1通※注2

備考
本件申告をしたことが違反者に知れるとハラスメント等の被害を受ける恐れがあるため違反者には申告者の氏名等を公表しないよう求める。※注3

以上

※注1:アルバイトやパート、契約社員など有期労働契約の場合は「期間の定めのある雇用契約」と記載してください。

※注2:使用者側の違法性を証明できる資料があればその写し(コピー)を添付してください。写し(コピー)を添付するのは後日裁判などに発展した場合に原本を利用する必要があるからです。もっとも、労働基準監督署への申告に証拠書類の添付は必ずしも必要ありませんので、証拠がない場合は「特になし」等記載して添付しなくても構いません。

※労働基準監督署に申告したことが会社に知れてしまうと制裁に不当なパワハラ等を受けてしまう危険性もありますので、そうした危険がある場合はこのような文章を記述して会社側に自分の名前を伏せておくように依頼しておきます。会社に申告したことが知られても構わない場合はこの欄は削除しても構いません。

(2)労働局の紛争解決援助の手続きを利用してみる

外国人研修生や技能実習生が賃金で差別的取り扱いを受けていると感じている場合には、その事実を労働局に相談(申告)して労働局の紛争解決援助の手続きを利用してみるというのも対処法の一つとして有効です。

全国の労働局では労働者と事業主の間で発生したトラブルの解決を図るための手続きとして紛争解決援助の手続きを提供していますが、こうした外国人研修生や技能実習生が賃金で差別的取り扱いを受けているような問題についてもこの紛争解決援助の手続きを利用して解決を図ることが可能です。

この点、この労働局の紛争解決援助の手続きに法的な拘束力はないので会社側が手続きに応じない場合には解決は見込めませんが、会社が手続きに参加するケースでは労働局から出される助言や指導、あっせん案などに会社が従うことで差別的取り扱いが改善されることも期待できます。

また、会社側の賃金に関する差別的取り扱いが合理的な範囲として認められるかという点が不明な場合も労働局に相談(申告)することで助言がなされ、解決につながることも期待できますから、こうしたケースではとりあえず労働局に相談してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

もちろん、この手続きも労働者であれば利用できますので外国人研修生や技能実習生が利用することも差し支えありません。そしてこの手続きも無料です。

なお、労働局の手続きについては『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説しています。

(3)弁護士等に相談して訴訟や示談交渉をしてもらう

他の方法としては、弁護士に相談して示談交渉や裁判手続きを利用して解決を図るというのももちろん有効です。

また、法律に詳しくない素人が下手に交渉するとかえって不利になるケースもありますので(たとえば会社側が証拠隠滅したりすることがあります)、とりあえず弁護士等に相談してみるということも考えてよいかもしれません。

なお、弁護士等に相談する場合の詳細は『弁護士・司法書士に依頼して裁判をする方法』のページで詳しく解説しています。

(4)その他の対処法

これら以外の方法としては、各自治体の提供する相談やあっせん手続きを利用したり、各地方の労働委員会が主催するあっせん手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会などが提供するADR手続きを利用したりする方法が考えられます。

なお、それら他の手続きについては『労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは』のページでまとめていますので参考にしてください。