普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の違いとは何か

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使用者が労働者との雇用契約を一方的に解除することを「解雇」と言いますが、その解雇の中にも「普通解雇」と呼ばれる解雇や、「懲戒解雇」と呼ばれる解雇、あるいは「整理解雇」と呼ばれる解雇など、様々な呼び名の解雇が存在します。

しかし、解雇される労働者にしてみれば、結局は強制的に退職を迫られる結果になるのは変わりませんので、その解雇が具体的にどのような性質のもので、具体的にどのように異なるのか、その区別を正確に理解することは困難な面もあると思われます。

では、この解雇における普通解雇・懲戒解雇・整理解雇は、それぞれどのような性質のもので、具体的にどのように異なるのでしょうか。簡単に確認してみることにいたしましょう。

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普通解雇とは

普通解雇とは、一般に労働者の労務提供の不能や業務への適正の欠如などを理由に解雇する場合の解雇をいいます。

たとえば、休暇中に大怪我をして勤務の継続が困難になった労働者が解雇されたり、勤務成績が悪いことを理由に解雇されるようなケースがそれにあたります。

他にも、採用時における労働者の経歴詐称が発覚して解雇される場合であったり、労使間の信頼関係が破綻したという理由で解雇されるようなケースも普通解雇にあたるといえるでしょう。

もっとも、一般的な会社では就業規則等に普通解雇事由を列挙したうえで、最後に「その他前各号に準ずる重大な事由またはやむを得ない事由が生じたとき」に解雇するなど包括的な解雇事由を明記して解雇権の根拠としているはずですので、後述する懲戒解雇や整理解雇にあたらない解雇はおしなべて普通解雇にあたると考えて差し支えないのではないかと思います。

普通解雇の例

  • 傷病その他後遺症等も含む労働能力の喪失を理由とした解雇
  • 勤務成績不良などを理由とした解雇
  • 経歴詐称を理由とした解雇
  • 信頼関係が破綻したことを理由にした解雇
  • その他の普通解雇など

常時10人以上の労働者を使用する使用者では普通解雇事由が就業規則に明記されていなければならない

常時10人以上の労働者を使用する使用者が労働者を普通解雇する場合、その普通解雇事由があらかじめ就業規則に記載されていることが必要です(※なお「常時10人以上」の意味については→会社に就業規則があるかないか確認する方法)。

これは、労働基準法第89条が常時10人以上使用する使用者に就業規則の作成を義務付け、そこに解雇の理由を含めた退職に関する事項を明記することが義務付けられていることによるものです(労働基準法第89条第3号)。

労働基準法第89条

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

第1号 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
第2号 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
第3号 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(以下省略)

ですから、常時10人以上の労働者を使用する使用者が、労働者の「勤務成績不良」を理由に解雇したい場合であっても、ただその労働者に「勤務成績不良」の事実があるだけでは普通解雇することはできず、あらかじめ就業規則に普通解雇事由として「勤務成績不良の場合」など具体的に規定されている場合についてのみ、その普通解雇が許されることになります。

なお、この普通解雇の場合における就業規則への解雇事由の明記に関して限定列挙なのか例示列挙なのかという点で解釈に争いがありますが(※限定列挙説と解釈すれば使用者は就業規則に明記されていない事由で労働者を普通解雇することはできませんが、例示列挙説と解釈すれば就業規則に明記された解雇事由は例示に過ぎないので就業規則に明記されていない事由で普通解雇した場合であっても必ずしもそれがその規定がないことのみをもって無効と判断されないことになります)、前述したように一般的な会社では普通解雇事由の最後に「その他前各号に準ずる重大な事由またはやむを得ない事由が生じたとき」などと包括的な普通解雇事由を規定するのが普通ですので、仮に限定列挙説に立ったとしても、実務的にはあらゆる事由で使用者の普通解雇が成立することになると考えられます。

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、使用者が労働者の企業秩序違反行為に対する制裁として雇用契約を一方的に解約する場合の解雇を言います。

一般に、企業はその企業の存立と事業の円滑な運営の維持のため企業秩序を定立し維持する権限を有しており、その企業秩序維持のために企業秩序に違反する行為があった労働者に対して制裁を与えることができるものと考えられていますが、この企業秩序の維持確保のための権限は労働契約に本来的に内在するものと理解されていますので、労働者が使用者と労働契約を締結すれば当然に労働者はその企業秩序遵守義務を負担することになります。

そのため、労働者がその企業秩序遵守義務に違反して企業秩序を乱した場合には、使用者からその本来的に持つ制裁権によって懲戒処分が与えられることになり、その処分の内容として契約を強制的に解約される懲戒処分が、懲戒解雇ということになるわけです。

懲戒解雇も含む懲戒事由は必ず就業規則に明記されていなければならない

このように、企業の懲戒権は労働契約に本来的に内在する企業秩序定立権の一環として認めていますので、労働契約が締結されればただそれだけで使用者の懲戒処分が認められるとも考えられます。

しかし最高裁の判例は、使用者が企業秩序遵守義務に違反する労働者に対しては「規則の定めるところに従い」懲戒処分をなしうると述べていますので(菅野和夫著「労働法第8版」弘文堂388頁参照)、使用者が労働者に懲戒解雇する場合においても、その懲戒解雇事由が明確に就業規則に規定されていることが必要となります。

つまり、あらかじめその懲戒解雇事由が就業規則に「○○したときに懲戒解雇する」などと明記されていなければ、使用者は労働者を懲戒解雇することができないわけです。

なお、先ほど挙げたように労働基準法第89条では常時10人以上の労働者を使用する使用者に解雇事由を就業規則に明記することが義務付けられていますので、使用者が労働者を解雇する場合に就業規則の規定根拠が必要であるとされる点については労働法上も明らかであると言えます。