労働組合に加入し又は結成しようとして解雇された場合の対処法

スポンサーリンク

労働組合の組合活動に理解のない会社では、労働組合に加入したり、労働組合を結成しようとしたり、労働組合の組合員であることを理由に労働者を解雇してしてしまうケースが稀に見られます。

たとえば、労働組合に加入しようとした新入社員を解雇したり、労働組合に加入している既存の社員を解雇したり、労働組合のない会社で労働組合を結成しようと活動した社員が解雇されるようなケースです。

しかし、このような解雇は、憲法で認められた勤労者の団結権(憲法第28条)を侵すものであり基本的人権の侵害とも言えますから到底納得できるものではありません。

日本国憲法第28条

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

では、労働組合の組合員であること、または加入したこと、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由に解雇されてしまった場合、労働者はどのように対処すればよいのでしょうか。

その解雇の無効を主張してその撤回などを求めることができるのでしょうか。

スポンサーリンク

「客観的合理的な理由」がない解雇は無効

労働組合の組合員であること、または加入したこと、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由に解雇されてしまった場合の対処法を考える前提として、そもそも労働者の解雇がどのようなケースで認められ、どのようなケースで無効と判断され得るのか、その基準を理解してもらわなければなりません。

解雇の有効性の基準を理解できなければ、労働組合の組合員であることを理由に解雇された場合の対処法を選択することもできないからです。

この点、解雇については労働契約法第16条にその規定が置かれていますので、まず条文を確認してみましょう。

労働契約法第16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法第16条はこのように解雇に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つ要件を求めていますから、この2つの要件のうち一つでも欠けている場合には、その解雇は無効と判断されることになります。

つまり、労働者が解雇されたとしても、その解雇事由に「客観的合理的な理由」が「ない」と認定されるケースであればその解雇は無効となりますし、仮のその「客観的合理的な理由」が「ある」と認定できるケースであったとしても、その「客観的合理的な理由」に基づいて解雇することが「社会通念上相当」と言える事情がにないのであれば、その解雇はやはり解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになるわけです。

労働組合に加入したこと、組合員であること、組合を結成しようとしたことを理由とした解雇に「客観的合理的な理由」はない

このような労働契約法第16条の要件を確認したうえで、労働組合の組合員であること、または加入したこと、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由とした解雇の効力を検討してみますが、結論から言うとそのような解雇は無効です。

なぜなら、労働組合法の第7条がそのような解雇を明確に禁止しているからです。

労働組合法第7条

使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
第1号 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
(以下省略)

労働組合法第7条はこのように「労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと」を理由に労働者を解雇することを明確に禁止していますから、仮に使用者が雇用している労働者に対して「組合員であること」または「組合に加入したこと」あるいは「労働組合を結成しようとしたこと」を理由に解雇したというのであれば、その解雇自体が労働組合法第7条に違反する違法な解雇ということになります。

しかし先ほど説明したように、労働契約法第16条は解雇に「客観的合理的な理由」を求めていますが、違法な解雇に「客観的合理的な理由」は存在しませんので、そのような解雇は労働契約法第16条の要件を満たさないと判断される結果、解雇権を濫用するものとして無効と判断されることになります。

ですから、労働組合の組合員であること、または加入したこと、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由とした解雇は絶対的・確定的に100%無効ということが言えるのです。

労働組合に加入したこと、組合員であること、組合を結成しようとしたことを理由として解雇された場合の対処法

以上で説明したように、労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇されたとしてもその解雇は絶対的・確定的に100%無効となりますから、そのような解雇を受けた労働者はその効力を争ってその撤回を求めたり、解雇日以降に得られるはずであった賃金の支払いを求めることが可能と言えます。

もっとも、労働者が実際にそのような解雇を受けた場合には労働者の側で具体的な対処を取らなければなりませんので、その場合に取り得る対処法が問題となります。

(1)解雇理由証明書の交付を受けておく

労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇された場合は、まず解雇された時点で解雇理由証明書の交付を請求し、その交付を受けておくようにしてください。

なぜこの解雇理由証明書が必要になるかというと、それは後になって会社が勝手に解雇の理由を変更してしまうことがあるからです。

先ほど説明したように、労働者が労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇することは労働組合法第7条で明確に禁止されていますから、そのような理由で行われた解雇は裁判になれば確実に会社が負けることになります。

そのため、そのような理由で解雇した会社の中には、当初は労働組合を理由として解雇したにもかかわらず、裁判になると「あの解雇は労働組合とは関係なくて、その労働者が○○の行為をしたからなんですよ」などと勝手に解雇理由を変更し、解雇を正当化するケースがあるのです。

しかし、解雇された時点で解雇理由証明書の交付を受けておけば、解雇された時点で解雇理由を「労働組合に加入したこと」又は「労働組合の組合員であること」あるいは「労働組合を結成しようとしたこと」という理由で確定させておくことができますので、それ以降に会社側で勝手に解雇理由を変更することを防ぐことができます。

このような理由があることから、解雇された時点で解雇理由証明書の交付を受けておくことが必要になるのです。

なお、解雇理由証明書の交付は労働基準法第22条で使用者に義務付けられていますので、労働者が請求すれば会社側はそれを拒否することはできませんので必ず発行してもらうことが可能です(使用者が発行しない場合はそれ自体が労基法違反となります)。

ちなみに、解雇理由証明書の請求に関する詳細は以下のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。

(2)労働組合の加入、結成を理由とした解雇が無効である旨記載した通知書を送付してみる

労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇された場合は、その解雇が労働組合法第7条に違反する違法な解雇である旨記載した通知書を作成して使用者に送付してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があります。

前述したように、労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由とした解雇は明らかに労働組合法に違反しますが、法令違反の解雇をする会社がまともな会社であるはずがありませんのでそのような法令遵守意識の低い会社にいくら口頭で「違法な解雇を撤回しろ」と抗議したとしてもそれに会社が応じることは期待できません。

しかし通知書という書面の形で正式に申し入れを行えば将来的な裁判や弁護士の介入などを警戒して解雇の撤回や話し合いに応じるケースもあるかもしれませんので、とりあえず書面で抗議しておくというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、この場合に会社に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

労働組合への加入を理由とした解雇の無効確認及び撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から解雇する旨の通知を受け、同月末日をもって貴社を解雇されました。

本件解雇については、〇年〇月、私が直属の上司であった○○にその理由を尋ねたところ、同氏から、私が同年〇月に貴社の労働組合に加入したことが直接の理由であるとの説明がなされております。

しかしながら、労働者が労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇することは労働組合法第7条第1号で明確に禁止されていますから、本件解雇は明らかに同法に違反します。

したがって、本件解雇に客観的合理的な理由はなく、労働契約法第16条の規定から解雇権を濫用した無効なものと言えますから、直ちに本件解雇を撤回するよう、申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。

労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇された場合のその他の対処法

労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由として解雇された場合のこれら以外の解決手段としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、労働局の主催する紛争解決援助の手続きやあっせんの手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

解雇予告手当や退職金など解雇を前提とした金品は受け取らない

以上で説明したように、労働組合に加入したこと、又は労働組合の組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたことを理由とした解雇は明確に違法であり無効となりますから、そのような解雇を受けた場合であっても、それに対処することは可能です。

ただし、解雇の効力を争う場合には解雇(退職)を前提とした金品を受け取らないように注意した方が良いかもしれません。

解雇された場合には、解雇予告手当や退職金など「解雇(退職)の事実が発生したこと」を前提とする金品が支給されることがありますが、これらを受け取ってしまうと「無効な解雇を追認した」と認定されてしまい、いざ裁判や示談交渉になったさいに労働者の側で解雇の無効を主張することが困難になる場合があります。

そのため、解雇の効力を争う場合には、仮に解雇予告手当や退職金などが支払われたとしてもそれを受け取る前に弁護士など専門家の助言を受けるようにした方が良いでしょう (※参考→解雇されたときにしてはいけない2つの行動とは)。

解雇のトラブルはなるべく早めに弁護士に相談した方が良い

なお、解雇された場合の個別の対応は、解雇の撤回を求めて復職を求めるのか、それとも解雇の撤回を求めつつも解雇は受け入れる方向で解雇日以降の賃金の支払いを求めるのか、また解雇を争うにしても示談交渉で処理するのか裁判までやるのか、裁判をやるにしても調停や労働審判を使うのか通常訴訟手続を利用するのかによって個別の対応も変わってくる場合があります。

労働トラブルを自分で対処してしまうとかえってトラブル解決を困難にする場合もありますので、弁護士に依頼してでも権利を実現したいと思う場合は最初から弁護士に相談する方が良いかもしれません。その点は十分に注意して下さい。