労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

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勤務先の会社(個人事業主も含む)で何らかの労働問題に巻き込まれた場合、具体的な行動を起こしてそのトラブルに対処することが求められます。

この点、労働トラブルの具体的な対処法は様々ですが、現在の日本で労働トラブルの解決に利用できる対処法としては、「国」に解決を助けてもらう方法と「都道府県自治体」に解決を助けてもらう方法、さらには国でも自治体でもなく「民間の団体または私人」に解決を助けてもらう方法の3種類に分けることができます。

このうち、労働トラブルの解決を「国」に委ねる方法としては「労働基準監督署に労働基準法違反の申告」をする方法と「労働局の紛争解決援助の手続」を利用する方法の2つに、「都道府県自治体」に解決を委ねる方法としては「都道府県自治体の相談・あっせん」を利用する方法と「労働委員会の相談・あっせん」を利用する方法の2つに、「民間の団体または私人」に解決を依頼する方法としては「ADR(裁判外紛争解決手続)」を利用する方法と「弁護士・司法書士に依頼して裁判」をする方法、さらには「労働組合に解決を任せる」方法の3つに分けることができますので、現在の日本では労働トラブルの解決方法が大きく分けて全部で7つ用意されていることになります。

【Ⅰ】労働問題を「国」に解決してもらいたい場合
(1)労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行う方法
(2)労働局の紛争解決援助手続を利用する方法
【Ⅱ】労働問題を「都道府県自治体」に解決してもらいたい場合
(3)都道府県自治体の相談・あっせんを利用する方法
(4)労働委員会の相談・あっせんを利用する方法
【Ⅲ】労働問題を「民間の団体または私人」に解決してもらいたい場合
(5)ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する方法
(6)弁護士・司法書士に依頼して裁判をする方法
(7)労働組合に解決を任せる方法

そこでここでは、労働トラブルに巻き込まれた場合に利用できる、これら7つの解決法(解決手段)について、それぞれの特徴や違いなどを簡単に解説してみることにいたしましょう。

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【Ⅰ】労働問題を「国」に解決してもらいたい場合

勤務先の会社において巻き込まれた労働問題の解決を「国」の機関に委ねる場合には、「労働基準監督署」もしくは「労働局」の手続きを利用します。

(1)労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行う方法

勤務先の会社(個人事業主も含む)で労働トラブルに巻き込まれてしまった場合において、その巻き込まれた労働トラブルが「労働基準法」やそれに関連する政令、省令に関するものである場合には、労働基準監督署に「労働基準法違反の申告」を行ってみるというのも労働問題を解決する手段の一つとして有効に機能すると考えられます。

労働基準監督署は全ての都道府県に設置されている国の機関で、労働基準法という法律をキチンと使用者(雇い主)が守っているか調査したりするのが仕事です。

労働基準監督署ではすべての労働者から使用者(雇い主)の労働基準法違反行為の申告を受け付けていますので、労働者からの申告に基づいた調査の結果「労働基準法違反がある」と判断すれば、その違法行為の是正勧告や検察への送検(刑事罰のある労働基準法違反行為について刑罰を加えてもらう手続きをとること)を行うこともあります。

労働基準監督署からの是正勧告が出されればたいていの会社はその勧告にしたがって労働基準法違反の状態を改善しようとしますので、労働トラブルの原因が会社側の労働基準法違反行為にあるようなケースでは、労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行うことでその発生している労働トラブルの解消が図れることになるわけです。

なお、労働基準監督署への労働基準法違反の申告を行う手順やその場合の注意点など、より詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。
→ 労働基準監督署への労働基準法違反の相談・申告手順と注意点

(2)労働局の紛争解決援助手続を利用する方法

勤務先の会社との間に何らかの労働トラブルが発生した場合には、全国に設置されている「労働局」に対してそのトラブル解消のための「助言」や「指導」を出してもらうよう求めることができます(※セクハラや産休・育休に関する問題など男女雇用機会均等法等に関して会社側に違法性がある場合は労働局から「勧告(是正勧告)」を出してもらうことも可能です(男女雇用機会均等法第17条1項))。

この手続きは「個別労働関係紛争解決の援助の手続」などと呼ばれますが、労働局にこの援助の申し立てを行い、「助言」や「指導」あるいは「勧告」を出してもらうことができれば、大抵の会社は労働局の「助言」や「指導」「勧告」に従って違法状態を改善しようとしますので、この労働局の援助手続きを利用することによって労働問題の解決を図ることも可能といえます。

(1)で説明した労働基準監督署への労基法違反の申告手続きは「労働基準法」に関連する法令等に違反する労働トラブルしか対象になりませんでしたが、この労働局の紛争解決援助手続きは労働基準法に関係しない法律違反であったり法律違反に当たらない単なる雇用契約違反などの行為であっても手続きの対象にすることができます。

また、この労働局の紛争解決援助の手続きでは、「助言」や「指導」のほかにも、労働局に紛争解決のための「あっせん(※労働局のあっせん委員が一定の解決策となるあっせん案を提示し、それを紛争当事者が受け入れることによって問題の解消を図る手続き)」を求めることもできますので、その「あっせん」を利用することによって問題解決を図ることも可能です。

なお、労働局に対して個別労働関係紛争解決の援助手続き(助言・指導・あっせん)を求める場合の手順や注意点などより詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。
→ 労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順

【Ⅱ】労働問題を「都道府県自治体」に解決してもらいたい場合

勤務先の会社において巻き込まれた労働問題の解決を都道府県(自治体)に委ねる場合には、都道府県が設置した「労働センター等」もしくは「労働委員会」の手続きを利用します。

(3)都道府県自治体の相談・あっせんを利用する方法

都道府県の所管する機関を利用して労働問題の解決を図りたい場合は、都道府県が出先機関として設置した「相談窓口(労働センター等)」を利用します。

都道府県が設置している「相談窓口」の名称は様々ですので(東京都の場合は「東京都労働相談情報センター」)自分が働いている会社所在地の県庁等で確認してもらう必要がありますが、ほとんどの都道府県では自治体独自の労働相談窓口を設置していますので、勤務先の会社(個人事業主も含む)との間で何らかの紛争が生じた場合には、まず都道府県自治体が設置した「相談窓口」に相談してみるとよいでしょう。

また、都道府県が設置している「相談窓口」では、弁護士や社会保険労務士など労働法に精通した専門家が組織する「あっせん委員会」が主催する「あっせん(※あっせん委員が一定の解決策となるあっせん案を提示し、それを紛争当事者が受け入れることによって問題の解消を図る手続き)」も行っていますので、その「あっせん」を利用してトラブルの解消を図ることも可能です。

ただし、都道府県(自治体)の実施している「あっせん」については強制力がないため、紛争の相手方となる使用者(雇い主)側が「あっせん」の手続きに参加してくれる程度に協力的であることが大前提となりますので、使用者(雇い主)側が労働トラブルの原因を明確に争っていたり、話し合いへの協力自体を拒否しているような案件では都道府県(自治体)の主催する「あっせん」の手続きは不適といえます。

なお、「北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・石川県・山梨県・鳥取県・高知県」については自治体の出先機関となる労働相談窓口が設置されていないようですので(※設置されている可能性もありますので各自で道または県に確認してください)、これらの自治体で自治体による労働トラブルの解決を図りたい場合は、後述の(4)で説明する「労働委員会」の「相談」や「あっせん」を利用する必要があります。

都道府県(自治体)の出先機関としての労働相談窓口における「相談」や「あっせん」を利用して労働トラブルの解決を図る場合の具体的な手順や注意点などについてより詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。
→ 労働問題を自治体の相談窓口やあっせんで解決する場合

(4)労働委員会の相談・あっせんを利用する方法

勤務先の会社で労働トラブルに巻き込まれてしまった場合には、各都道府県に設置された「労働委員会(都道府県労働委員会)」の主催する「相談事業」を利用して専門家(弁護士や社会保険労務士など)の助言を受けたり、労働委員会が組織するあっせん委員会の行う「あっせん(※あっせん委員が一定の解決策となるあっせん案を提示し、それを紛争当事者が受け入れることによって問題の解消を図る手続き)」を利用してトラブルの解決を図ることが可能です。

労働委員会における手続きは従来、労働組合を主体とする団体交渉のみが認められ労働者個人による労働委員会の利用は認められていませんでしたが、最近になって「東京・兵庫・福岡」を除くすべての道府県の労働委員会が労働組合に加入していない労働者個人からの「相談」や「あっせん」の申し込みを受理するようになりました。

そのため、「東京都」「兵庫県」「福岡県」を除くすべての道府県に所在する会社で働く労働者については、労働組合に加入していなくても労働委員会に労働トラブルに関して「相談」をしたり、会社との間で紛争になっている労働問題の解決を図るために労働委員会に対して「あっせん」を求めることができるのです。

ただし、労働委員会の「あっせん」に関しては使用者(雇い主)側が「あっせん」に協力し、労働委員会の提示する「あっせん案」に同意する程度に協力的であることが前提となりますので、使用者(雇い主)側が労働トラブルの原因を明確に争っていたり、話し合いへの協力自体を拒否しているような案件では労働委員会の手続きは不適といえます。

ちなみに「東京都」「兵庫県」「福岡県」については、先ほどの(3)で説明したように「東京都」「兵庫県」「福岡県」という自治体が「相談センター」などの独立した出先機関を相談窓口として設置し、その相談窓口で「相談」や「あっせん」を受け付けていますので、抱えている労働トラブルを都道府県(自治体)の機関で解決したい場合は「都道府県労働委員会」ではなく「自治体の相談窓口」を利用することになります。

なお、都道府県の所轄となる「労働委員会」の「相談」や「あっせん」を利用して労働トラブルの解決を図る場合の具体的な手順や注意点などをより詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。
→ 労働委員会の相談・あっせん等を利用して労働問題を解決する場合

【Ⅲ】労働問題を「民間の団体または私人」に解決してもらいたい場合

勤務先の会社において巻き込まれた労働問題の解決を「民間の団体または私人」に委ねる場合には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」の手続きを利用するか、もしくは「弁護士または司法書士」に依頼して裁判所で裁判を提起してトラブルの解決を図るのが一般的です。また「労働組合」への加入ができる状況にある場合であれば、加入した労働組合に問題解決を一任してトラブルの解消を図ることも可能です。

(5)ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する方法

「ADR」とは「裁判外紛争解決手続き」の略称で、裁判所以外の場所において当事者間の話し合いで紛争の解決を図ることを目的とした手続きのことを言います。

ADRの手続きを主宰している団体はいくつかありますが、労働トラブルの解決に関しては弁護士会や司法書士会が主催するADRが比較的利用されており、弁護士会が主催するADRにおいては労働法に精通した弁護士が、司法書士会が主催するADRにおいては労働法に精通した司法書士が労働者と使用者(雇い主)の話し合いに同席し、両者の話し合いが適法に行われるよう助言を行います。

ADRにおける話し合いで労働者と使用者(雇い主)が合意に至れば、それまで生じていた労働トラブルがその合意に従って解消される可能性が高いので、労働問題の解決方法としてADRの手続きは十分に機能するものと思われます。

なお、このADRの手続きの最大の特徴は、ADRを主宰する弁護士会や司法書士会から派遣される弁護士や司法書士が単に労働者と使用者(雇い主)の間で行われる「話し合いの場に同席するだけ」という点です。

先ほど説明した労働基準監督署や労働局、都道府県の労働相談センターや労働委員会の手続きを利用する場合は、そういった公的な機関が関与することを嫌う使用者(雇い主)にとっては多大なストレスとなるため、そのような手続きを選択した労働者に対してパワハラまがいの嫌がらせを行う事例も見られます。

しかし、ADRは単に当事者間の話し合いに弁護士や司法書士が同席するだけにすぎませんので、使用者(雇い主)をあまり刺激せずに済む結果としてそのようなリスクを最小限に抑えることができます。

労働トラブルは、問題解決の後もその紛争の相手方となる使用者(雇い主)の下で就労を継続しなければならないという特殊な性質を持つ紛争といえますので、使用者(雇い主)が話し合いに応じてくれる程度に協力的で、かつ、そのような使用者(雇い主)との関係をあまり損ねたくないと思う場合には、ADRは最適な手続きといえるかもしれません。

なお、ADRの具体的な利用方法や利用する場合の注意点などをより詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。
→ 労働問題の解決に使える!弁護士・司法書士のADRという手続

(6)弁護士・司法書士に依頼して裁判をする方法

以上の(1)~(5)の手続きを利用しても労働問題の解決が図れない場合であったり、使用者(雇い主)側が最初から話し合いに協力する姿勢がなく、労働トラブルの原因となっている事実を明確に争う姿勢を示しているようなケースでは、弁護士や司法書士に依頼して「裁判」を行うことも考える必要があります。

(1)で説明した労働基準監督署の手続きは使用者(雇い主)の労基法違反を監督署に申告するだけの手続きで監督署が労働者の救済を直接的に手助けしてくれるものではありませんし、(2)から(5)の手続きもすべて使用者(雇い主)側の協力が不可欠となりますから、使用者(雇い主)側が自らの意思で労働トラブルの原因となっている事由の改善を行わない限り、問題の解決は望めません。

これに対し、裁判所の裁判であれば判決や調停(和解)が出される限り、使用者(雇い主)が従わない場合はその判決や調停調書(和解調書)に基づいて強制執行によって労働者の権利を実現することも可能ですので、話し合いで解決しない場合には裁判所の裁判で解決を図るほかないでしょう。

なお、裁判所の裁判手続きを利用する場合は、裁判所に通常の訴えを起こす通常の訴訟手続きのほかにも、原則3日(3回)の期日で結審する労働審判の手続きなども利用することができますので、弁護士や司法書士と十分に打ち合わせを行って最適な裁判方法を選択する必要があります。

弁護士や司法書士に依頼して裁判を行う場合の具体的な手順や注意点についてより詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。
→ 労働問題の裁判は弁護士と司法書士のどちらに依頼するべきか

(7)労働組合に解決を任せる方法

勤務先の会社で労働トラブルに巻き込まれてしまった場合には、労働組合に相談するというのも解決方法の一つとして有効です。

勤務している会社に労働組合がない場合には、個人加入を認めている労働組合(○○ユニオンなど)に加入して、その加入した労働組合から団体交渉してもらうというのも効果的だと思います。

なお、労働組合を介して会社と交渉する場合は、事案によって労働組合が前述した(1)の労働基準監督署に労基法違反の申告を行ったり、(2)の労働局や(4)の労働委員会の「あっせん」等を利用して解決を図る場合もありますので、加入した労働組合と十分に打ち合わせを行って適当な手段を選択する必要があります。

最後に

以上のように、労働問題の解決手段といっても様々な方法がありますので、自分がどのような解決を求めるのかによって利用する機関や手続きを熟慮して選択する必要があります。

会社側が明らかに争う姿勢を示していて話し合いに応じる気配がないにもかかわらず労働局や自治体、労働委員会が主催する「あっせん」を利用しても無駄ですし、労働基準監督署や労働局の勧告など無視するほどブラック体質のある会社が紛争の相手方となっているにもかかわらず監督署や労働局に監督権限を行使してもらうのも意味がありません。

また、使用者(雇い主)との関係を損なわないで解決したいと考えているにもかかわらず、いきなり裁判を起こしてしまうのも、問題の解決をかえって難しくさせてしまう可能性もありますので、手続きの選択には十分に注意が必要です。

勤務先の会社で労働トラブルに巻き込まれた場合には、早めに専門家に相談し適切な対処法を取って解決への道筋を作るのが何より大切といえるでしょう。