労使委員会の委員になり又は行動したことを理由に解雇された場合

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企画業務型裁量労働制を導入する企業では労使委員会の設置が義務付けられますが(労働基準法第38条の4)、その労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇されてしまうケースがあります。

たとえば、企画業務型裁量労働制を導入しようとする会社が、法律で義務付けられた労使委員会を設置しようとしたところ、会社の方針に否定的な意見を持つ他の社員Aが労使委員会の委員になろうとしたためその社員Aを解雇したり、会社に否定的な意見を持つ労使委員会の委員Bを解雇したり、会社との交渉に出席した委員Cを解雇するようなケースがそれです。

このような解雇は、労使委員会の存在意義自体を否定するものであり到底是認できるものではありませんが、実際に解雇されてしまえば労働者の側で何らかの対処を取らなければなりません。

では、そのように労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇されてしまった場合、労働者はどのような対処を取り得るのでしょうか。

その解雇の無効を主張して争うことはできるのでしょうか。

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解雇は「客観的合理的な理由」がない限り無効

労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇されてしまった場合の対処法を考える前提として、そもそも解雇がどのような要件の下で認められるのか、その基準を理解してもらわなければなりません。

解雇がどのような基準で判断されるのかを正確に理解できなければ、解雇された場合にその効力を争うことができるのか否かさえ判断ができないからです。

この点、解雇については労働契約法第16条に規定がありますので、まず条文を確認してみましょう。

労働契約法第16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法第16条は、このように解雇に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件を求めていますので、この2つの要件をどちらも満たす場合でなければその解雇は無効と判断されることになります。

つまり、労働者が解雇されたとしても、その解雇事由に「客観的合理的な理由」が「ない」と認められる限りその解雇は無効となりますし、仮にその解雇事由に「客観的合理的な理由」が「ある」と認められる事案であったとしても、その「客観的合理的な理由」に基づいて解雇することが「社会通念上相当ではない」と認められるのであれば、その解雇はやはり無効と判断されることになるわけです。

法律に違反する解雇に「客観的合理的な理由」は存在しない

では、この労働契約法第16条の規定を理解したうえで、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由になされた解雇の効力を検討してみますが、結論から言うとそのような解雇は無効です。絶対的・確定的に100%無効ということになります。

ではなぜ、そのような解雇が無効と言えるかというと、それは労働基準法施行規則がそのような解雇を禁止しているからです。

労働基準法施行規則第24条の2の4第6項

使用者は、労働者が労使委員会の委員であること若しくは労使委員会の委員になろうとしたこと又は労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

労働基準法の施行規則第24条の2の4第6項は、このように「労働者が労使委員会の委員であること若しくは労使委員会の委員になろうとしたこと又は労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱い」をすることを禁止していますので、解雇が労働者に対する労働契約の一方的破棄にあたり不利益取扱いとなる以上、そのようなケースにおける解雇が禁止されていることになります。

そのような解雇が労基法施行規則に違反するのであればその解雇は法的に違法な解雇となりますが、違法な解雇に「客観的合理的な理由」は存在しませんので、労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」も「ない」と認定されますからその解雇は解雇権を濫用した無効なものと判断されることになります。

ですから、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由になされた解雇は絶対的・確定的に100%無効ということが言えるわけです。

労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇された場合の対処法

以上で説明したように、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由になされた解雇は無効と言えますから、そのような理由で解雇された労働者はその解雇の効力を争って解雇の撤回を求めたり、解雇日以降に得られるはずであった賃金の支払いを求めることも可能です。

もっとも、実際にそのような理由で解雇された場合には労働者において何らかの対応をしなければ解雇が既成事実化されてしまいますので、労働者としての地位や権利を保全するために具体的にどのような対処をとれるのかという点を検討することが必要となります。

(1)解雇理由証明書の交付を受けておく

労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇された場合には、まず会社に対して解雇理由証明書の発行を請求しその証明書の交付を受けておくようにしましょう。

解雇理由証明書の交付は労働基準法第22条ですべての使用者に義務付けられていますので、労働者が請求すれば必ずその発行を受けることができます(※仮に会社がその発行をしない場合はそれ自体が労基法違反となります)。

ではなぜ、その解雇理由証明書が必要になるかというと、それは後になって会社側で勝手に解雇理由を変更されてしまう危険性を回避するためです。

前述したように、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇することは労働基準法施行規則で禁止されていますから、裁判になればまず間違いなく会社側が負けてしまいます。

そのため、悪質な会社では裁判に発展した途端に「あの解雇は労使委員会とは関係がなく、その労働者に○○の行為があったからなんですよ」などと解雇理由を全く別のものに変更し、裁判を有利に進めようとするケースがあるのです。

しかし、解雇された時点で解雇理由証明書の交付を受けておけば、その解雇理由証明書には解雇の理由が具体的に記載されなければなりませんから、その解雇された時点で解雇理由を確定させ後で勝手に変更されるのを防ぐことができます。

そのため、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇された場合には、その時点で速やかに会社に対して解雇理由証明書の交付を請求しその交付を受けておく必要があるのです。

なお、解雇理由証明書の請求に関する詳細は以下のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。

(2)労使委員会の委員になること、委員になろうとしたこと、委員として正当な行為をしたことを理由に解雇することが違法である旨記載した通知書を送付してみる

労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇された場合には、その解雇が労働基準法施行規則に違反する旨記載した通知書を作成して会社に送付してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があります。

前述したように、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に労働者を解雇することは労基法施行規則で明確に禁止されていますから、そのような解雇をする会社はそもそも法令遵守意識が低いと思われますので、そのような会社に対して口頭でいくら「違法な解雇を撤回しろ」と抗議してもそれが受け入れられる可能性は期待できません。

しかし書面という形で正式に抗議を申し入れれば、将来的な裁判への発展などを警戒して解雇の撤回や話し合いに応じてくる可能性もありますので、とりあえず書面で抗議してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、この場合に会社に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

労働組合の正当な行為を理由とした解雇の無効確認及び撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から解雇する旨の通知を受け、同月末日をもって解雇されました。

この解雇の理由について私が〇年〇月、直属の上司であった○○に尋ねたところ、同氏からは、貴社が企画業務型裁量労働制を導入するために設置した労使委員会の委員に私が就任を申し入れたことが原因であるとの説明がなされております。

しかしながら、労働者が労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に労働者を解雇することは労働基準法施行規則第24条の2の4第6項で明確に禁止されていますから、本件解雇は明らかに違法です。

したがって、本件解雇に客観的合理的な理由はなく解雇権を濫用した無効なものと言えますから(労働契約法第16条参照)、直ちに本件解雇を撤回するよう申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。

労使委員会の委員になること、なろうとしたこと、委員として正当な行為をしたことを理由に解雇された場合のその他の対処法

労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇された場合のこれら以外の対処法としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、労働局の主催する紛争解決援助の手続きやあっせんの手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用する方法が考えられます。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

解雇を前提とした金品(解雇予告手当や退職金など)は受け取らない方が良い

なお、労使委員会の委員になること、又はその委員になろうとしたこと、あるいはその労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由に解雇されてしまった場合にこのような対処がとれるとしても、解雇された時点で会社から交付される解雇予告手当や退職金などは受け取らない方が良いかもしれません。

解雇予告手当や退職金は「退職(解雇)の事実があったこと」を前提として交付されますから、そのような退職(解雇)を前提とした金品を受け取ってしまうと「無効な解雇を追認した」と裁判所に判断されて後で解雇の無効を主張するのが事実上困難になるケースがあるからです。

解雇された時点でそのような金品の交付を受けた場合には、それを受け取る前に速やかに弁護士などに相談し、受け取るべきか否か助言を受ける方が良いでしょう(※参考→解雇されたときにしてはいけない2つの行動とは)。

解雇のトラブルはなるべく早めに弁護士に相談した方が良い

なお、解雇された場合の個別の対応は、解雇の撤回を求めて復職を求めるのか、それとも解雇の撤回を求めつつも解雇は受け入れる方向で解雇日以降の賃金の支払いを求めるのか、また解雇を争うにしても示談交渉で処理するのか裁判までやるのか、裁判をやるにしても調停や労働審判を使うのか通常訴訟手続を利用するのかによって個別の対応も変わってくる場合があります。

労働トラブルを自分で対処してしまうとかえってトラブル解決を困難にする場合もありますので、弁護士に依頼してでも権利を実現したいと思う場合は最初から弁護士に相談する方が良いかもしれません。その点は十分に注意して下さい。