授乳や育児のための30分の休憩時間をもらえない場合の対処法

(2)育児のための休憩時間を付与しない会社があることを労働基準監督署に申告する

生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間を請求したにもかかわらずその付与が認められない場合には、その事実を労働基準監督署に申告してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があります。

前述したように生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間を請求した場合には、使用者はその休憩時間を付与しなければならないことが労働基準法第67条で明確に義務付けられていますから、使用者がそれを無視して休憩時間を付与しないというのであればその会社は明らかに労働基準法に違反していることになります。

この点、労働基準法第104条は使用者に労働基準法違反行為がある場合に労働者から労働基準監督署にその事実を申告させることで労働基準監督署からの監督権限の行使を促す手続きを定めていますので、この場合にも休憩時間の付与が受けられない女性労働者は労働基準監督署にその事実を申告して監督署の介入を促すことができます。

そしてこの場合、監督権限を行使するか否かは労働基準監督署の行政判断にゆだねられることになりますが、仮に労働基準監督署が調査や臨検を行い、是正勧告などを行って会社側がそれに応じる場合には、会社側が違法な取り扱いを改め、育児のための休憩時間の付与を認めることも期待できます。

そのため、このようなケースではとりあえず労働基準監督署に申告(相談)してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する申告書の記載例は以下のようなもので差し支えないと思います。

労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

○年〇月〇日

○○ 労働基準監督署長 殿

申告者
郵便〒:***-****
住 所:愛知県豊田市○○一丁目〇番〇号○○マンション〇号室
氏 名:申告 花子
電 話:080-****-****

違反者
郵便〒:***-****
所在地:愛知県名古屋市〇区〇町〇番〇号
名 称:株式会社 甲
代表者:代表取締役 ○○ ○○
電 話:***-****-****

申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのない雇用契約(←注1)
役 職:なし
職 種:一般事務

労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法第67条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は〇年〇月に第一子を出産しているので、現在、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者にあたる。
・申告者は〇年〇月ごろから違反者に対してたびたび育児のための休憩時間の付与を請求しているが、違反者は「お前だけ特別扱いするわけにはいかない」と述べるだけで、これまで一切、通常の休憩時間とは別に育児のための休憩時間が付与されたことはない。
・このような違反者の措置は、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間を請求することができる旨規定した労働基準法第67条に違反する。

添付書類等
・休憩時間を付与しないことが労基法67条に違反する旨指摘した通知書の写し……1通(←注2)

備考
違反者に本件申告を行ったことが知れると、違反者から不当な圧力(他の労働者が別件で労基署に申告した際、違反者の役員が自宅に押し掛けて恫喝するなどの事例が過去にあった)を受ける恐れがあるため、違反者には本件申告を行ったことを告知しないよう配慮を求める。(←注3)

以上

※注1:契約社員やアルバイトなど期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)の場合には、「期間の定めのある雇用契約」と記載してください。

※注2:労働基準監督署への申告に添付書類の提出は必須ではありませんので添付する書類がない場合は添付しなくても構いません。なお、添付書類の原本は将来的に裁判になった場合に証拠として利用する可能性がありますので必ず「写し」を添付するようにしてください。

※注3:労働基準監督署に違法行為の申告を行った場合、その報復に会社が不当な行為をしてくる場合がありますので、労働基準監督署に申告したこと自体を会社に知られたくない場合は備考の欄に上記のような文章を記載してください。申告したことを会社に知られても構わない場合は備考の欄は「特になし」と記載しても構いません。

広告

生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間をもらえない場合のその他の対処法

生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間を請求したのにその付与が認められない場合におけるこれら以外の解決手段としては、各都道府県や労働委員会が主催する”あっせん”の手続きを利用したり、労働局が主催する紛争解決援助や調停の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

生後1年に達しない生児を養育する女性労働者が生児を育てるための休憩時間を請求または取得して解雇又は不利益な取り扱いを受けた場合

なお、生後1年に達しない生児を養育する女性労働者が生児を育てるための休憩時間を請求または取得したことを理由として勤務先の会社から解雇や減給/降格/配転など労働条件に不利益な取り扱いを受けた場合の対処法についてはこちらのページを参考にしてください。