授乳や育児のための30分の休憩時間をもらえない場合の対処法

生後間もない生児を育てる女性労働者が勤務中に授乳や育児の必要から一定の時間だけ離籍したり仕事場を離れることがあります。

たとえば、自宅の近くの職場で働いている女性労働者が勤務中に授乳のため20~30分間離籍(休憩)して自宅に帰り自分の親に預けていた乳幼児に授乳させたり、あるいは会社内に託児所のある会社で一定時間離籍(休憩)して授乳などをするようなケースです。

しかし、このような養育に必要な時間であっても雇用主や役職者によっては快く思わない人もいますから、そのような勤務中の離籍(休憩)を認めてくれない会社もあるかもしれません。

では、このように生後間もない乳幼児を育てる女性労働者が勤務中に離籍(休憩)することを求めて拒否された場合、具体的にどのように対処すればその離籍(休憩)を認めてもらえるのでしょうか。

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生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者は通常の休憩時間とは別に育児のための30分の休憩を2回請求することができる

このように、出産後まもない生児を養育する女性労働者においては、授乳や育児のために勤務中に離籍する必要がある場合があるわけですが、このような女性労働者は勤務中に少なくとも30分の休憩を1日2回とることができます。

なぜなら、労働基準法第67条にそのように規定されているからです。

労働基準法第34条は労働者が1日において請求できる休憩時間を規定していますが、そこでは勤務時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩時間を付与することが使用者に義務付けられていますので、通常の労働者は会社に対して少なくとも45分または1時間の休憩時間を請求することができます(ただし残業が入った場合はまた別の休憩時間が取れます)。

【労働基準法第34条

第1項 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
第2項 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
第3項 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

しかし、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者については、労働基準法第67条で「1日2回」少なくとも「各々30分」の休憩時間をその通常の休憩時間とは別にとることが認められていますので、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者は通常の45分(または60分)の休憩とは全く別に、1日2回少なくとも30分の育児のための休憩を請求することが可能です。

【労働基準法第67条第1項

生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。

ですから、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者においては、たとえ勤務中であって、かつ通常の休憩時間ではなくても、会社に申告して少なくとも1日2回、各30分以内の育児のための休憩を取得して離籍し、授乳や育児のために自宅に帰ったり、託児所に赴くことができると言えます。

生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が通常の休憩時間とは別に育児のための休憩時間を請求した場合、使用者はそれを拒否できない

この点、その労働基準法第67条1項の規定に基づいて女性労働者が育児のための休憩を請求した場合に会社側がそれを拒否できるかが問題となりますが、それはできません。

なぜなら、労度基準法第67条の第2項がそれを禁止ているからです。

【労働基準法第67条第2項

使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

労働基準法第67条第2項はこのように、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩を取得して育児に携わっている時間について、労働者として「使用してはならない」と規定していますから、仮にその女性労働者からの請求を拒否して育児のための休憩時間を与えず就労を強制すればそれ自体が労働基準法違反となります。

ですから、この育児のための休憩時間に関する女性労働者の請求を使用者が拒否することはできないということになります。

生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が通常の休憩時間とは別に1日2回各30分以内の育児のための休憩時間を請求したのに休憩させてくれない場合の対処法

以上で説明したように、生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者は少なくとも1日2回、各々30分の育児のための休憩を取得することが可能であり、使用者はその育児休憩の取得を拒否することはできませんから、仮にその女性労働者が育児のための休憩時間を請求したにもかかわらずそれが与えられない場合には、その違法性を指摘して休憩時間を与えるよう請求することが可能です。

もっとも、実際に女性労働者がそのような不当な会社側の措置に遭遇した場合には女性労働者の側で何らかの対処を取らなければなりませんので、その場合にどのような対処を取れば休憩時間を取ることができるのかという点が問題となります。

(1)育児のための休憩時間を付与しないことが違法である旨指摘した通知書を作成して会社に郵送してみる

生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間を請求したにもかかわらず会社がそれを与えてくれない場合には、それが違法である旨記載した通知書を作成して会社に郵送してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があります。

前述したように労働基準法第67条は生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が請求した場合には少なくとも1日2回、各30分の休憩時間を通常の休憩時間とは別に付与しなければなりません。

そうすると、それを守らず育児のための休憩時間を付与しない会社があれば、その会社は法律に違反していることになりますが、法律に違反する会社はそもそも法令遵守意識が低いので口頭でいくら「違法な取り扱いを改めて休憩時間を認めろ」と抗議したところでそれが受け入れられる可能性はありません。

しかし書面という形でその違法性を指摘して抗議すれば、将来的な裁判への発展や行政官庁の介入などを警戒してそれまでの態度を改め、労基法に沿った休憩時間の付与に応じる可能性も期待できます。

そのため、このようなケースではとりあえず書面を作成して文書でその違法性を指摘してみるというのも効果がある場合があると考えられるのです。

なお、この場合に会社に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

育児のための休憩時間の付与申入書

私は、〇年〇月以降、貴社に対して育児のための休憩時間を付与するよう度々申し入れておりますが、未だその休憩時間の付与が受けられません。

しかしながら、労働基準法第67条は生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が育児のための休憩時間を請求した場合には、1日2回少なくとも各々30分の生児を育てるための休憩時間を付与することが義務付けられていますから、生後満1年に達しない生児を育てる私に対して育児のための休憩時間を付与しない貴社の取り扱いは明らかに違法です。

つきましては、貴社がこのような違法な取り扱いを改め、私に対して直ちに育児のための休憩時間を最低でも1日2回各々30分までの育児のための休憩時間を与えるよう、改めて申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。