なお、労働基準監督署に違法行為の申告を行う場合の申告書の記載例は以下のようなもので差し支えないと思います。
①「有期労働契約が3回以上更新されている労働者」が解雇予告手当の支払いを受けられない場合の労働基準監督署への申告書の記載例
労働基準法違反に関する申告書
(労働基準法第104条1項に基づく)
○年〇月〇日
○○ 労働基準監督署長 殿
申告者
郵便〒:***-****
住 所:大阪市〇〇区○○一丁目〇番〇号○○マンション〇号室
氏 名:申告 太郎
電 話:080-****-****
違反者
郵便〒:***-****
所在地:大阪市〇区〇丁目〇番〇号
名 称:株式会社 甲
代表者:代表取締役 ○○ ○○
電 話:06-****-****
申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのある雇用契約(アルバイト)
役 職:特になし
職 種:店員
労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。
記
関係する労働基準法等の条項等
労働基準法20条
違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は違反者との間で〇年1月1日を始期とする契約期間2か月間の有期労働契約を締結した。
・申告者と違反者の間では、当該有期労働契約が終了する同年2月28日までに1回目の更新が、さらに4月30日までに2回目の、6月30日までに3回目の更新が行われていた。
・したがって、4回目の契約が満了する8月31日の時点で、申告者と違反者の間で締結されていた労働契約は「有期労働契約が3回以上更新されている」状態にあったと言える。
・違反者は4回目の契約が満了する8月31日の当日に申告者に対して4回目の更新はしないこと、また4回目の契約が満了する8月31日を以て契約を終了し雇止めすることを告知したが、それ以前に契約更新をしない旨の雇止めの予告はしていない。
・しかしながら、厚生労働省の労働基準法第14条2項に基づく告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」は、「有期労働契約が3回以上更新されている労働者」を雇止めする際に労働基準法第20条所定の解雇予告と解雇予告手当の支払いを義務付けているから、違反者が雇止めの予告をせず、かつ30日分の平均賃金を支払わずに申告者を雇止めした行為は労働基準法第20条に違反していると言える。
添付書類等
・解雇通知書の写し……1通(←注1)
備考
違反者に本件申告を行ったことが知れると、違反者から不当な圧力(元上司が申告者の自宅に押し掛けて恫喝するなどが過去にあった)を受ける恐れがあるため、違反者には本件申告を行ったことを告知しないよう配慮を求める。(←注2)
以上
※注1:労働基準監督署への申告に添付書類の提出は必須ではありませんので添付する書類がない場合は添付しなくても構いません。なお、添付書類の原本は将来的に裁判になった場合に証拠として利用する可能性がありますので添付する場合でも必ず「写し」を添付するようにしてください。
※注2:労働基準監督署に違法行為の申告を行った場合、その報復に会社が嫌がらせ等してくる場合がありますので、労働基準監督署に申告したこと自体を会社に知られたくない場合は備考の欄に上記のような文章を記載してください。会社に知られても構わない場合は備考の欄に「特になし」と記載しても構いません。
②「1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える労働者」が解雇予告手当の支払いを受けられない場合の労働基準監督署への申告書の記載例
労働基準法違反に関する申告書
(労働基準法第104条1項に基づく)
(※ここは①と同じなので省略します)
違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は違反者との間で01年1月1日を始期とする契約期間6か月間の有期労働契約を締結した。
・申告者と違反者の間では、当該有期労働契約が終了する同年6月30日までに1回目の更新が、さらに同年12月31日までに2回目の更新が行われていた。
・したがって、3回目の契約が満了する02年6月30日の時点で、申告者と違反者の間で締結されていた労働契約は「1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える」状態にあったと言える。
・違反者は3回目の契約が満了する02年6月30日の当日に申告者に対して3回目の更新はしないこと、また3回目の契約が満了する02年6月30日を以て契約を終了し雇止めすることを告知したが、それ以前に契約更新をしない旨の雇止めの予告はしていない。
・しかしながら、厚生労働省の労働基準法第14条2項に基づく告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」は、「1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える労働者」を雇止めする際に労働基準法第20条所定の解雇予告と解雇予告手当の支払いを義務付けているから、違反者が雇止めの予告をせず、かつ30日分の平均賃金を支払わずに申告者を雇止めした行為は労働基準法第20条に違反していると言える。
(※以下は①と同じなので省略します)
③「1 年を超える有期労働契約の労働者」が解雇予告手当の支払いを受けられない場合の労働基準監督署への申告書の記載例
労働基準法違反に関する申告書
(労働基準法第104条1項に基づく)
(※ここは①と同じなので省略します)
違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は違反者との間で01年1月1日を始期とする契約期間2年間の有期労働契約を締結した。
・したがって、申告者と違反者の間には「1 年を超える有期労働契約」が締結されていた状態にあったと言える。
・違反者は当該有期労働契約が満了する02年12月31日の当日に申告者に対して契約の更新はしないこと、また契約が満了する02年12月31日を以て契約を終了し雇止めすることを告知したが、それ以前に契約更新をしない旨の雇止めの予告はしていない。
・しかしながら、厚生労働省の労働基準法第14条2項に基づく告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」は、「1 年を超える有期労働契約の労働者」を雇止めする際に労働基準法第20条所定の解雇予告と解雇予告手当の支払いを義務付けているから、違反者が雇止めの予告をせず、かつ30日分の平均賃金を支払わずに申告者を雇止めした行為は労働基準法第20条に違反していると言える。
(※以下は①と同じなので省略します)
(3)労働局に個別紛争解決援助(またはあっせん)の申し立てを行う
(2)のように労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行っても解雇予告手当が支払われない場合は、労働局に個別労働関係紛争解決援助または”あっせん”の申し立てをしてみるのも解決方法の一つとして有効です。
労働局では事業者とそこに勤務する労働者との間で生じた紛争の解決を図るため、個別紛争解決援助の手続きを行っており、そこではあっせん委員によるあっせん手続きも利用できますから、この労働局の紛争解決手続きを利用することで労働局の関与の下で未払い(不払い)分の解雇予告手当に関するトラブルの解決を図ることも期待できるからです。
なお、この労働局の手続きについては『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説しています。
(4)その他の対処法
以上の外の解決手段としては、各都道府県やその労働委員会が主催する”あっせん”の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。
なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。