労働局に援助/あっせん/調停の相談をして解雇された場合の対処法

なお、その場合に会社に通知する書面の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

労働局への相談等を理由とした解雇の無効確認及び撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から解雇する旨の通知を受け、同月末日をもって貴社を解雇されました。

本件解雇については貴社から、私と貴社の間で生じている○○に関するトラブルに関して、私がその紛争解決を○○労働局に相談し、紛争解決の為の援助手続の利用申請を行ったことが直接の理由であるとの説明がなされております。

しかしながら、労働者が労働局の紛争解決援助の手続やあっせん、調停などの申し込みをしたことを理由とした解雇は個別労働紛争の解決の促進に関する法律第4条3項および同法第5条2項(または雇用機会均等法第17条第2項および同法第18条第2項、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第24条第2項および同法第25条第2項)で禁止されていますから、私が労働局に紛争解決のための相談等を行ったことを理由とした当該解雇は明らかに違法です。

したがって、本件解雇は解雇権を濫用した無効なもの(労働契約法第16条)と言えますから、直ちに本件解雇を撤回するよう、申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。

(3)労働局の紛争解決援助の手続きまたは調停の手続きを利用する

労働局の「紛争解決援助」「あっせん」「調停」の手続きを利用したこと(またはその相談をしたこと)を理由として解雇された場合には、その解雇に関するトラブルの解決について、あらためて別件として労働局に相談し、その解雇トラブルに関する「紛争解決援助」「あっせん」「調停」の手続きを申し込むというのも対処法の一つとして有効です。

先ほどから説明しているように、労働局の「紛争解決援助」「あっせん」「調停」の手続きを利用したこと、またはその相談をしたことを理由にした解雇は明らかに違法である無効となりますから、その解雇の撤回や解雇日以降に得られるはずであった賃金の支払いを求めることも「労働者と事業主の間で生じたトラブル」となりますので、その解決自体も労働局の「紛争解決援助」「あっせん」「調停」の対象となります。

ですから、その解雇に関する解決を改めて労働局に相談し、その解決を求めるのも解決方法として有効に機能する場合があると考えられるのです。

もっとも、労働局の勧告や指導に法的な拘束力はありませんので、労働局の指導等に会社が従わなかったり、そもそも労働局のあっせんや調停に参加しない場合には、後述するように弁護士に相談して裁判などを利用するしかないかもしれません。

なお、労働局の紛争解決援助の申込みや調停等の利用についてはこちらのページを参考にしてください。

→ 労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順

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労働局の手続きを利用(相談)したことを理由に解雇された場合のその他の対処法

労働局の「紛争解決援助」「あっせん」「調停」の手続きを利用し又は利用のための相談をしたことを理由に解雇された場合におけるこれら以外の解決手段としては、各都道府県やその労働委員会が主催する”あっせん”の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

なお、「解雇」すること自体は労働基準法に違反する行為にあたりませんので、本件のような事例を労働基準監督署に相談しても、解決の為の監督権限行使はなされないものと思われます。

解雇予告手当や退職金など解雇を前提とした金品は受け取らない方が良い

以上のように、労働局に「紛争解決援助」「あっせん」「調停」の手続の利用を申請したりその手続きの相談をしたことを理由とした解雇は絶対的に違法であり無効となりますから、そのような解雇を受けた場合であっても、以上のような方法を用いて対処することは可能です。

ただし、気を付けておきたいのが、解雇の効力を争う場合には解雇(退職)を前提とした金品を受け取らない方が良いという点です。

解雇された場合には、解雇予告手当や退職金など「解雇(退職)の事実が発生したこと」を前提とする金品が支給されることがありますが、これらを受け取ってしまうと「無効な解雇を追認した」と認定されて後に裁判や示談交渉で解雇の無効を主張することが困難になる場合があります。

そのため、解雇の効力を争う場合には、仮に解雇予告手当や退職金などが支払われたとしてもそれを受け取るのは控えた方が良いでしょう (※参考→解雇されたときにしてはいけない2つの行動とは)。

解雇のトラブルはなるべく早めに弁護士に相談した方が良い

なお、解雇された場合の個別の対応は、解雇の撤回を求めて復職を求めるのか、それとも解雇の撤回を求めつつも解雇は受け入れる方向で解雇日以降の賃金の支払いを求めるのか、また解雇を争うにしても示談交渉で処理するのか裁判までやるのか、裁判をやるにしても調停や労働審判を使うのか通常訴訟手続を利用するのかによって個別の対応も変わってくる場合があります。

労働トラブルを自分で対処してしまうとかえってトラブル解決を困難にする場合もありますので、弁護士に依頼してでも権利を実現したいと思う場合は最初から弁護士に相談する方が良いかもしれません。その点は十分に注意して下さい。