妊娠中又は産後の体調不良で仕事の能率が下がって減給された場合

なお、この場合に会社に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

労働能率が低下したことを理由とした減給の無効確認及び撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から〇月支払い分の賃金から〇%減額する旨の減給の辞令を受けました。

この減給の措置について同年〇月〇日、私が直属の上司であった○○氏(課長)にその理由を尋ねたところ、同氏から、私が妊娠してつわりが酷い時期がありたびたび洗面所に離籍するなど作業効率が低下したことからその低下した分の賃金を減額した、との説明がなされております。

しかしながら、雇用機会均等法第9条第3項および同条施行規則第2条の2第9号は「妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかつたこと又は労働能率が低下したこと」を理由として、その女性労働者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをすることを禁止しています。

そうであれば、仮に私がつわり等の体調不良のために仕事の能率や効率が低下したとしても、それを理由に貴社が減給の取り扱いをすることは許されませんから、貴社が私に行った減給の取り扱いは雇用機会均等法第9条第3項に明らかに違反するものと言えます。

したがって私は、貴社に対し、当該違法な減給の取り扱いを即時に撤回するとともに、〇月分の賃金として本来支払われるべきであった賃金との差額を直ちに支払うよう、本通知書を以て申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。

(2)労働局の紛争解決援助または調停の手続きを利用する

妊娠中または出産後の女性労働者がつわりや体調不良などの為に従前の仕事ができなかったり仕事の能率や効率が低下したことを理由として減給や降格あるいは配置転換など不利益な取り扱いを受けた場合には、労働局に相談(申告)して労働局の主催する紛争解決援助または調停の手続きを利用してみるのも対処法として有効な場合があります。

前述したように、そのような不利益な取り扱いは雇用機会均等法で禁止されていますが、雇用機会均等法に関するトラブルが発生した場合には当事者の一方が労働局に申告することで労働局が主催する紛争解決援助または調停の手続きを利用することができるようになっています。

雇用機会均等法第16条

第5条から第7条まで、第9条、第11条第1項、第11条の2第1項、第12条及び第13条第1項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(中略)第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、次条から第27条までに定めるところによる。

雇用機会均等法第17条

第1項 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
第2項 事業主は、労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

雇用機会均等法第18条

第1項 都道府県労働局長は、第16条に規定する紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)について、当該紛争の当事者(中略)の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会(中略)に調停を行わせるものとする。
第2項 前条第2項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。

この労働局の紛争解決援助または調停の手続きに法的な拘束力はありませんから会社側が手続きへの参加を拒否してきた場合は解決は望めませんが、会社側が手続きへの参加を承諾する場合には、労働局から出される指導や勧告、あるいは労働局の調停委員会から出される調停案に会社が従うことですでになされた減給/降格/配転などの違法な取り扱いが撤回されることも期待できます。

そのため、このようなケースではとりあえず労働局に相談(申告)してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、労働局の紛争解決援助の手続き等の利用については『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください(当該ページは個別労働関係紛争の解決に関する法律にかかる労働局の手続き利用を説明していますが、雇用機会均等法における労働局の手続きも同じ要領で利用可能です。細かいところは労働局に相談に行けば教えてもらえますので問題ありません)。

広告

妊娠中または出産後の女性労働者が従前の仕事ができなかったり仕事の能率や効率が低下したことを理由として労働条件等に不利益な取り扱いを受けた場合のこれ以外の対処法

妊娠中または出産後の女性労働者が従前の仕事ができなかったり仕事の能率や効率が低下したことを理由として減給や降格あるいは配置転換など不利益な取り扱いを受けた場合のこれら以外の対処法としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用する方法が考えられます。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは