有期契約の「雇止め」でも解雇予告手当を請求できる3つのケース

(2)1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える労働者が雇止めされる場合

契約期間が「1年以下」というように短い期間に限定された有期労働契約(有期雇用契約)であっても、その1 年以下の有期労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超えて原雷帝留労働者が雇止めされる場合にも、その労働者は雇い主に対して労働基準法第20条に基づいて解雇予告手当(雇止め予告手当)の支払いを求めることができます。

これは、1年以下の短期の有期契約であっても、それが反復継続して更新され通算期間が1年を超える長期にわたるような場合には、実質的に期間の定めのない雇用契約で働く正規労働者(正社員)と変わりがなく、労働者の保護の必要性が生じるからです。

ですからたとえば、「契約期間6か月」の有期労働契約で2020年の1月1日からファミレスで働くパート労働者のBさんが6月30日に1回目の契約更新を受け、12月31日に2回目の契約更新を受けた場合には、3回目の契約期間が満了する2021年の6月30日に事前予告なくファミレスの店長から「3回目の契約更新はしないから」と言われて6月30日で雇止めされたケースであれば、「1年以下の契約が反復更新されて通算期間が1年を超える」ことになりますので、ファミレスの運営会社に対して「30日分の平均賃金を解雇予告手当(雇止め予告手当)として支払え」と請求できることなります。

また、たとえばこの場合に3回目の契約が満了する2021年の6月30日の10日前にあたる6月20日に「次の更新はしない」と雇止めの告知を受けた場合には、予告期間が20日間足りませんので、その場合には「20日分の平均賃金を支払え」と請求できることになります。

(3)1 年を超える有期労働契約の労働者が雇止めされる場合

契約期間が「1年を超える」有期労働契約(有期雇用契約)で働く労働者が雇止めされる場合にも、その労働者は雇い主に対して労働基準法第20条に基づいて解雇予告手当(雇止め予告手当)の支払いを求めることができます。

これは、(2)と同様に、たとえ期間の限定された有期労働契約であっても1年を超えるほど長期間にわたって雇用される場合には実質的に期間の定めのない雇用契約(正社員)と変わりがなく、突然雇止めされる労働者の保護も考えなければならないからです。

ですからたとえば、「契約期間2年間」の契約で働く労働者が最初の契約更新時に雇止めされる場合において、事前予告なく雇止めされた場合には、使用者に対して「30日分の平均賃金を支払え」と請求できることになります。

なお、この場合は有期労働契約の契約期間が「1年を超え」ていなければなりませんので、「契約期間1年間」の有期契約で働いている労働者が最初の更新を受けられずに雇止めされる場合にはたとえ事前予告なく雇止めされても30日分の平均賃金(雇止め予告手当)の支払いを求めることはできません。

ただし、このケースでは、「1年間」の最初の契約が満了して最初の更新を受けた場合には、2回目の契約が満了する際に前述した(2)の場合に該当することになりますので、2回目の更新の際は会社に対して「解雇予告手当(雇止め予告手当)を支払え」と請求できることになります。

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有期労働契約で雇止めされた場合には労働基準法第20条に該当しないか確認することが必要

以上で説明したように、有期労働契約の場合は基本的には労働基準法第20条の適用はありませんが、前述した3つのケースに該当する有期労働契約において、契約期間が満了して雇止めされた際に事前予告がなかった場合(または事前予告があってもその予告期間が30日に満たない場合)には、会社に対して「解雇予告手当(雇止めの予告手当※平均賃金×30日に満たない予告期間の日数)」の請求ができることがありますので注意が必要です。

有期労働契約の場合の雇止めでは、労働者は「契約期間が満了したから仕方ない」と思いがちですが、法的には有期契約だからといって必ずしも予告期間を置かない雇止めが許されているわけではないのです。

雇い主側は、労働者の無知に付け込んでこのような厚生労働省の告示がある事実を労働者に告知せず、「有期契約のアルバイト(またはパート・契約社員・派遣社員)には解雇予告手当は支払わなくてもいい」とか「解雇じゃなくて雇止めだから解雇予告手当を支払うわけないだろう」などと事実と異なる告知を行い、本来であれば支払わなければならない予告手当を支払わずに雇止めするケースが多くありますので、正しい知識を身に付けて会社側に騙されないようにすることが大切です。

「雇止めだから解雇予告手当は支払わない」と言われた場合の対処法

なお、前述した厚生労働省の告示にあげられた3つのケースに該当する雇止めで解雇予告手当が支払われなかったにもかかわらず、会社から「雇止めだから解雇予告手当は支払わない」と言われた場合の具体的な対処法については『雇止めだから解雇予告手当は支払わない…と言われた場合の対処法』のページで詳しく解説しています。