試用期間中を理由に解雇予告手当が支払われない場合の対処法

(イ)試用期間が延長されて14日を超えた場合

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

解雇予告手当の支払いを求める申入書

私は…(※ここはアと同じなので省略します)

しかしながら…(※ここはアと同じなので省略します)

この点、私と貴社の間で締結された労働契約における試用期間は「2週間」となっておりましたが、その試用期間は6月1日から勤務を開始し2週間が経過する前の6月13日に店長から試用期間を3週間に延長する旨の告知を受けたことにより1週間延長されていますから、私が本件解雇を受けた当時すでに「14日間を超えて引き続き使用されるに至った」状態にあったということになりますので、本件解雇には労働基準法第20条1項ないし2項が適用されることになり、貴社には30日前の解雇予告または30日分の平均賃金の支払いが義務付けられるものと考えられます。

したがって…(以下はアと同じなので省略します)

(3)労働基準監督署に違法行為の申告を行う

試用期間中の解雇を理由に解雇予告手当の支払いに応じてくれない場合には、労働基準監督署に違法行為の申告を行うというのも解決方法の一つとして有効です。

前述したように、たとえ試用期間中の解雇であっても、その試用期間中の労働者が「14日間を超えて引き続き使用されるに至った場合」には労働基準法第21条の適用はなく、労働基準法第20条にしたがって30日前の解雇予告を行うか、解雇予告手当の支払いを行うことが使用者に義務付けられますので、それに違反して解雇予告手当の支払いに応じない場合には、その使用者は労働基準監督署に違法行為している状態にあると言えます。

この点、使用者が労働基準法に違反する場合には労働基準法第104条で労働基準監督署に違法行為の申告をすることが認められていますが、仮に労働者がその申告を行い、労働基準監督署から調査や是正勧告がなされれば、会社が監督署の指示に従い、解雇予告手当の支払いに応じることも期待できます。

ですから、このようなケースでは、労働基準監督署に違法行為の申告を行うことを検討してみるのも対処法の一つとして有効と考えられるわけです。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する申告書の記載例は以下のようなもので差し支えないと思います。

(A)試用期間が14日を超えている場合

労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

○年〇月〇日

○○ 労働基準監督署長 殿

申告者
郵便〒:***-****
住 所:愛媛県松山市○○一丁目〇番〇号○○マンション〇号室
氏 名:申告 太郎
電 話:080-****-****

違反者
郵便〒:***-****
所在地:愛媛県松山市〇丁目〇番〇号
名 称:株式会社 X
代表者:代表取締役 ○○ ○○
電 話:****-****-****

申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのない雇用契約(契約期間〇か月)
役 職:特になし
職 種:営業

労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法20条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は試用期間1か月、契約期間〇か月の約定で〇年6月1日から違反者の下で働き始めた。
・申告者は〇年6月15日、違反者から同日付で解雇する旨の解雇通知を受け、同日付で解雇された。
・この解雇について違反者は、事前の解雇予告を一切しておらず、解雇予告手当も全く支払っていない。
・当該解雇は申告者が試用期間中になされたものであるが、解雇が行われたのは試用期間が15日経過した後であるから、解雇された当時の申告者は労働基準法第21条の但書の「第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」にあたる。
・したがって、違反者には同法第20条第1項ないし2項が適用されるが、違反者は事前予告なく30日分の平均賃金も支払わないまま即日解雇しているから、違反者は同法第20条に違反していると言える。

添付書類等
・解雇通知書の写し……1通(←注1)

備考
違反者に本件申告を行ったことが知れると、違反者から不当な圧力(元上司が申告者の自宅に押し掛けて恫喝するなどが過去にあった)を受ける恐れがあるため、違反者には本件申告を行ったことを告知しないよう配慮を求める。(←注2)

以上

※註1:労働基準監督署への申告に証拠書類は必須ではありませんので必ずしも添付する必要はありません。なお、書類を添付する場合、原本は後日裁判などで使用する可能性がありますので添付する場合は必ず「写し(コピー)」を添付するようにしてください。

※註2:労働基準監督署に違法行為の申告を行った場合、その報復に会社が不当な行為をしてくる場合がありますので、労働基準監督署に申告したこと自体を会社に知られたくない場合は備考の欄に上記のような文章を記載してください。申告したことを会社に知られても構わない場合は備考の欄は「特になし」と記載しても構いません。

(B)試用期間が延長されて14日を超えた場合

労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

(※この部分はAと同じなので省略します)

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は、試用期間2週間の約定で〇年6月1日から違反者の下で働き始めた。
・申告者は〇年6月15日、違反者から同日付で解雇する旨の解雇通知を受け、同日付で解雇された。
・この解雇について違反者は、事前の解雇予告を一切しておらず、解雇予告手当も全く支払っていない。
・申告者と違反者の間で締結された労働契約の試用期間は2週間(14日間)であるが、試用期間が満了する前の〇年6月13日、違反者の担当者から試用期間の1週間の延長を告知され試用期間は6月21日まで延長されているから、解雇された6月15日当時の申告者は労働基準法第21条の但書の「第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」にあたる。
・したがって、違反者には同法第20条第1項ないし2項が適用されるが、違反者は事前予告なく30日分の平均賃金も支払わないまま即日解雇しているから、違反者は同法第20条に違反していると言える。

(※以降はAと同じなので省略します)

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試用期間中を理由に解雇予告手当の支払いを受けられない場合のその他の対処法

上記以外の対処法としては、以下のようなものが考えられます。

(1)労働局に個別紛争解決援助(またはあっせん)の申し立てを行う

労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行っても解雇予告手当が支払われない場合は、労働局に個別労働関係紛争解決援助または”あっせん”の申し立てをしてみるのも解決方法の一つとして有効です。

労働局では事業者とそこに勤務する労働者との間で生じた紛争の解決を図るため、個別紛争解決援助の手続きを行っており、そこではあっせん委員によるあっせん手続きも利用できますから、この労働局の紛争解決手続きを利用することで労働局の関与の下で未払い(不払い)分の解雇予告手当に関するトラブルの解決を図ることも期待できます。

なお、この労働局の手続きについては『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説しています。

(2)その他の対処法

以上の外の解決手段としては、各都道府県やその労働委員会が主催する”あっせん”の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは