採用面接で不採用になったら履歴書は返してもらえるか

(3)履歴書の破棄(削除)の措置に関する具体的な説明がなされない場合は書面でその説明を求めてみる

不採用になった企業に履歴書の返却を求めて返還どころか具体的にどのように破棄(または削除)されたのかの説明もなされない場合は、その措置の説明を求める通知書を作成してその企業に郵送してみるというのも一つの方法として考えられます。

前述したように、履歴書等の個人情報を収集した企業は、不採用などでその個人情報を保管する必要がなくなった時点でその履歴書等の個人情報の「破棄又は削除するための措置」を講じること、また求職者から求めがあった場合にその説明をすべきことが厚生労働省の指針でも求められていますので、不採用になった求職者から請求があれば履歴書を返却するか、返却しない場合は具体的にどのような手段で破棄(または削除)したのかを説明しなければなりません。

そうであるにもかかわらず、返却にも応じないばかりか具体的な破棄の経緯も説明しないというのであればその企業は厚生労働省の指針も無視する倫理意識の低い企業ということになりますが、かかる倫理意識の欠落した企業にいくら口頭で「具体的な破棄の経緯を説明しろ」と求めたとしてもそれに応じてもらえる期待は持てません。

しかし、通知書を作成して改めて「書面」の形で説明を求めれば、行政機関への相談や訴訟の提起などを警戒して何らかの対応を取ってくる会社もありますので、とりあえず書面の形で説明を求めてみることも対処法として有効に機能する場合があると考えられます。

なお、この場合に企業側に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

甲 株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

個人情報の破棄又は削除の確認申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から応募していた貴社の採用選考について不採用とする旨の通知を受けました。

この不採用の通知を受けた後の同月〇日、私は貴社に対して採用選考への応募の際に提出した履歴書の返却を求めましたが、貴社の人事部の担当者から「弊社は履歴書の返却はしていない」との回答があるのみで、具体的にいつ、どのような方法で破棄されたのかという点の説明をいただくことができていません。

しかしながら、厚生労働省の指針「職業安定法第5条の4に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)」の「第四の二」は、保管する必要がなくなった求職者の個人情報については「破棄又は削除するための措置」を講じていなければならず、求職者から求めがあればその具体的な措置を説明することを義務付けていますから、不採用になった私からの履歴書の返却に応じないにもかかわらず、破棄や削除の具体的な経緯について説明すらしない貴社の態様は、明らかにこの指針の趣旨に反するものであると思料いたします。

したがって、私は、貴社に対し、厚生労働省の指針にも基づいて、私の履歴書をいつ、具体的にどのような手段で破棄又は削除したのか、詳細な説明を行うよう申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで配達した記録の残る特定記録郵便などの郵送方法で送付するようにしてください。

(4)履歴書の破棄又は削除について具体的な説明がなされない事実をハローワークに申告(相談)してみる

不採用になった企業から履歴書の返却がなされないだけでなく、その履歴書の破棄や削除が具体的にどのように行われたのか説明もなされない場合には、その事実をハローワークに申告(相談)してみるというのも一つの選択肢として考えられます。

先ほど説明したように、保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置を講ずること、また求職者から求められた場合にその説明をしなければならないことは厚生労働省の指針でも義務付けられていますが、その指針の指導機関はハローワークとなりますので、ハローワークに申告(相談)することで情報提供として受理され、何らかの指導に役立つかもしれません。

また、仮にハローワークから行政指導など出されてその企業の態様が改善されることがあれば、社会から不当な個人情報の取り扱いをする会社を一つ無くすことができますので、社会的に意義のある行動となり得ます。

ですから、もし履歴書の返却がなされず、破棄や削除の具体的な説明もなされない場合には、とりあえずハローワークに申告(相談)してみるということも勧化てよいように思います。

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その他の対処法

これら以外の対処法としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、労働局の紛争解決援助の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用する方法が考えられます。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは