妊娠中又は産後1年の間に残業/休日出勤/深夜勤務を拒否する方法

この点、使用者が労働基準法違反を行っている場合には労働基準法第104条ですべての労働者にその事実を労働基準監督署に申告することで監督署の監督権限行使を促す手続きを認めていますが、労働者からその申告を行うことで労働基準監督署が臨検や調査を行って是正勧告などを実施し、それに会社側が応じる場合には、違法な残業や休日出勤あるいは深夜勤務の強制が止むことも期待できます。

【労働基準法第104条1項】

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

そのため、このようなケースではとりあえず労働基準監督署に申告してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する申告書の記載例は以下のようなもので差し支えないと思います。

労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

○年〇月〇日

○○ 労働基準監督署長 殿

申告者
郵便〒:***-****
住 所:長野市○○一丁目〇番〇号○○マンション〇号室
氏 名:悪阻 花子
電 話:080-****-****

違反者
郵便〒:***-****
所在地:長野県松本市〇区〇町〇番〇号
名 称:株式会社 甲
代表者:代表取締役 ○○ ○○
電 話:***-****-****

申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのない雇用契約(←注1)
役 職:なし
職 種:作業員

労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法第66条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は〇年〇月ごろから違反者にたびたび深夜勤務を命じられている。
・申告者は〇年4月に妊娠が判明し現在妊娠中であり、同月に直属の上司である○○氏に妊産婦にある期間は時間外労働や休日出勤あるいは深夜勤務をすることができない旨申告している。
・違反者は申告者が妊娠中のため時間外労働や休日出勤あるいは深夜勤務に従事できない旨の請求を受けた後も、執拗に申告者に対して深夜勤務への対応を求め続けている。
・このような違反者の措置は、妊産婦が時間外労働/休日出勤/深夜勤務をしないことを請求した場合におけるその強制を禁止した労働基準法第66条に違反する。

添付書類等
・深夜勤務の強制が労基法66条に違反する旨指摘した通知書の写し……1通(←注2)

備考
違反者に本件申告を行ったことが知れると、違反者から不当な圧力(他の労働者が別件で労基署に申告した際、違反者の役員が自宅に押し掛けて恫喝するなどの事例が過去にあった)を受ける恐れがあるため、違反者には本件申告を行ったことを告知しないよう配慮を求める。(←注3)

以上

※注1:契約社員やアルバイトなど期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)の場合には、「期間の定めのある雇用契約」と記載してください。

※注2:労働基準監督署への申告に添付書類の提出は必須ではありませんので添付する書類がない場合は添付しなくても構いません。なお、添付書類の原本は将来的に裁判になった場合に証拠として利用する可能性がありますので必ず「写し」を添付するようにしてください。

※注3:労働基準監督署に違法行為の申告を行った場合、その報復に会社が不当な行為をしてくる場合がありますので、労働基準監督署に申告したこと自体を会社に知られたくない場合は備考の欄に上記のような文章を記載してください。申告したことを会社に知られても構わない場合は備考の欄は「特になし」と記載しても構いません。

※「時間外労働(残業)」や「休日出勤」を強制させられている場合は上記の記載例の「深夜勤務」の部分を「時間外労働」や「休日出勤」などに適宜置き換えてください。

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妊産婦が時間外労働/休日出勤/深夜勤務を強制させられる場合のその他の対処法

妊娠中又は産後1年を経過しない女性労働者が時間外労働や休日出勤あるいは深夜勤務をしない旨申告したにもかかわらずそれを強制させられている場合におけるこれら以外の解決手段としては、各都道府県や労働委員会が主催する”あっせん”の手続きを利用したり、労働局が主催する紛争解決援助や調停の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

妊娠中又は産後1年を経過しない女性労働者が残業/休日出勤/深夜勤務を拒否して解雇その他の不利益取扱いを受けた場合

なお、妊娠中又は産後1年を経過しない女性労働者が残業や休日出勤あるいは深夜勤務を拒否して解雇されたり減給や降格、配転など不利益な取り扱いを受けた場合の対処法についてはこちらのページで解説しています。