会社都合の休業では休業手当はいくら支払ってもらえるのか

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会社の都合で休業になった場合に気になるのが、その休業期間中に賃金や休業手当を支払ってもらえるのかという点です。

休業期間中は働かなくて済みますが、その期間の賃金が支払われなければ生活が破綻してしまう危険性もありますので、最低限でも休業手当の支給は望みたいものです。

では、実際に会社の都合で休業になった場合、会社から賃金や休業手当を支払ってもらえるのでしょうか。

また、支払ってもらえるとすれば具体的に「いくら(何円)」支払ってもらうことができるのでしょうか。

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会社都合の休業の場合、休業期間中の「賃金の全額」を支払ってもらうことができる

このように、会社都合の休業の場合に労働者が会社からその休業期間中の賃金や休業手当を支払ってもらえるのか、また支払ってもらえるとすればいくらもらえるのかという点が問題となりますが、結論から言うと労働者はその休業期間中の「賃金の全額」を支払ってもらうことができます。

ここで重要なのは、あくまでも会社から支払ってもらえるのが「給料(賃金)」の「全額」であって「休業手当」ではないという点です。

たとえば、日給1万円で働いているアルバイトの学生が会社側が勝手に5日間休業したため仕事が休みになった場合には、その休業期間の5日間分の賃金である「1万円」を会社に対して請求することができますが、あくまでもこれは「休業手当」としてではなく「賃金」として請求できるという意味になります。

ではなぜ、会社が休みになって働いていないのにその休業期間中の「賃金」のしかも「全額」の請求ができるかというと、民法の「危険負担」の条文でそのように規定されているからです。

民法第536条2項では、債権者の都合で債務者が債務の履行をできなくなった場合にその債務者の反対給付が得られなくなった危険を債権者と債務者のどちらが負担するかという基準が定められていますが、そこでは「債権者の責めに帰すべき事由」によって債務者が債務の履行をできなくなった場合でもその反対給付を受ける権利を失わないと規定されています。

【民法第536条2項】

(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(後段省略)

なぜ、このような規定が定められているかというと、契約上の債務者を保護するためです。

契約で債務者は債務を履行することによって債権者からその反対給付である権利を行使できますが、債権者の都合で債務者がその債務の履行ができなくなった場合には債権者の都合で債務者の権利が奪われてしまうことになって不都合になります。

そのため、債権者の都合で債務者の権利行使ができなくなった場合に債務者を保護するために、その債務者が被る不利益(危険)を債権者に転嫁して(負担させて)債務者が反対給付を行使できるようにしているのです。

そして、この民法の規定は契約に関する一般規定ですが、使用者(雇い主)と労働者の間で結ばれる雇用契約(労働契約)も契約である以上、この民法第536条2項の規定の適用がありますが、雇用契約(労働契約)をこの民法第536条2項の規定に当てはめると

「使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が労働力を提供することができなくなった時であっても、労働者はその反対給付である賃金請求権を失わない」

という文章になりますので、会社都合の休業で仕事が休みになった場合であっても、労働者は会社に対してその休業期間中の「賃金」の「全額」を支払ってもらうことができるということになるのです。

なお、会社都合の休業で「賃金の全額」が支払われない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業期間中に「賃金」が支払われない場合の対処法』のページで詳しく解説しています。

会社都合の休業の場合「平均賃金の6割」の「休業手当」の支給を受けられるだけではない

この点、労働基準法第26条に「使用者の責めに帰すべき事由」の場合には「平均賃金の6割」の「休業手当」を支払わなければならないと規定されていることから、「会社の都合で休業になった場合は平均賃金の6割の休業手当しか支払ってもらえない」と理解している人が多くいますが、これは間違いです。

【労働基準法第26条】

(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

なぜなら、労働基準法第26条の規定は会社都合の休業が発生した場合に平均賃金の6割の休業手当の支払いを使用者に義務付けることで労働者の最低生活を保障するために定められた規定であって、民法第536条2項によって生じる支払い義務を軽減する趣旨で規定されたものではないからです(最高裁昭和37年7月20日|裁判所判例検索ノースウエスト航空事件:最高裁昭和62年7月17日|裁判所判例検索)。

労働者が会社から受け取る賃金はその労働者の生活を支える必要不可欠なお金ですから、会社の都合で休業になった際に労働者がそれを受け取ることができなくなってしまうと労働者の生活は破綻してしまいます。

もちろん、先ほど説明したように会社の都合で休業になった場合も民法第536条2項の規定の適用がありますから、労働者は会社に対してその休業期間中の「賃金」の支払いを請求することが可能なのですが、民法第536条2項に罰則規定がありませんので、悪質な会社では民法第536条2項の規定など無視して労働者に休業期間中の賃金を支払わない可能性もでてきてしまいます。

そのため、労働基準法第26条で平均賃金の6割の「休業手当」の支払いを使用者に義務付けるだけでなく、それに違反する使用者を「30万円以下の罰金(労働基準法第120条)」の罰金という刑事罰を設けることで労働者の最低限の生活資金が得られるようにしているのです。

【労働基準法第120条】

次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
第1号 (省略)第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで(中略)…に違反した者。

ですから、仮に会社都合の休業の場合に、その会社が労働者に対して労働基準法第26条に基づいた「平均賃金の6割の休業手当」しか支給しなかった場合には、その会社は労働基準法120条の罰則(刑事罰)からは逃れられますので、労働基準監督署から検察に送検されて刑事罰を科されることはありませんが、労働者に対してはすでに支給した「平均賃金の6割の休業手当」と「賃金の全額」の差額を支払わなければならないということになります。

この点は一般の労働者だけでなく、大企業から中小企業まで多くの会社経営者や役職者が誤解して理解していますので注意が必要です。

重ねて言いますが、労働基準法第26条の「休業手当」の規定は、民法第536条2項の危険負担の規定の適用によって会社に義務付けられる休業期間中の「賃金」の支払い義務を軽減する趣旨で規定されたものではありません。

「会社の都合による休業」「会社の責めに帰すべき事由による休業」「休業の責任が会社にある場合の休業」に関しては、労働者はその休業期間中の「平均賃金の6割の休業手当」ではなく、あくまでも「賃金の全額」の支払いを求めることができますので、その点は誤解のないにしてください。

なお、会社都合の休業で会社が「平均賃金の6割の休業手当」しか支払ってくれない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業で「平均賃金の6割」の手当しか支払われない場合』のページで詳しく解説しています。

個別の雇用契約(労働契約)、就業規則、労働協約で別段の定めがある場合はそれに従う

以上で説明したように、会社の都合による休業(会社の責めに帰すべき事由による休業)の場合には、労働者はその休業期間中の「賃金の全額」の支払いを求めることができ、会社は「平均賃金の6割の休業手当」ではなくその休業期間中の「賃金の全額」を労働者に支払わなければならないということになります。

ただし、これには例外があります。個別の雇用契約(労働契約)で別段の定めが労働者はその別段の定めにこうそくされることになるからです。

たとえば、労働者が会社に入社する際に

「会社の責めに帰すべき事由による休業の場合は平均賃金の6割の休業手当のみを支払う」

などという内容で会社と合意している場合には、労働者はその合意が労働契約の内容となって労働者を拘束することになりますので、その場合の労働者は会社に対して「賃金の全額」ヲ請求することができず「平均賃金の6割の休業手当」の部分しか支払いを請求することができなくなります。

もっとも、この場合であっても労働基準法第26条の規定は適用されますので、たとえば

「会社の責めに帰すべき事由による休業の場合は平均賃金の50%の休業手当のみを支払う」

などといった内容で合意している場合には、「平均賃金の60%」と規定された労働基準法第26条に平均賃金の10%が不足することになりますので、この場合には労働者は会社に対してその不足分の10%の支払いを重ねて求めることができます。

なお、雇用契約(労働契約)に別段の定めがあるかないかは、以下の書類等の記載を確認することで判断できます。

なお、会社が個別の雇用契約や就業規則等に規定された割合の賃金(手当)を支払ってくれない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業で就業規則等の賃金・休業手当が支払われない場合』のページで詳しく解説しています。