会社都合の休業で会社に請求できる給料の金額はいくらか

スポンサーリンク

会社の都合で仕事が休みになる場合があります。

たとえば、原材料不足で会社がやむを得ず工場の稼働を停止したり、設備に異常が発生した会社がその復旧までの期間従業員を休ませるような場合です。

このような「会社の都合」による休業が発生した場合、労働者はその休業期間中の賃金を請求することができるのでしょうか。

また、請求できるとすれば、具体的にいくらの金額を会社から支払ってもらうことができるのでしょうか。

スポンサーリンク

会社都合による休業の場合、休業期間中の「賃金」を請求することができる

このように、会社の都合で仕事が休みになった場合、その休業期間中の給料を会社に対して請求することができるのかという点が問題となりますが、結論から言うと労働者はその会社都合による休業期間中の「賃金」の支払いを請求することができます。

なぜそのような結論になるかと言うと、会社都合による休業が発生した場合であっても、労働者はその会社との間で締結した雇用契約(労働契約)から生じる賃金請求権を失わないからです。

雇用契約(労働契約)では、使用者は労働者から「労働力の提供を受けることができる」という債権(権利)を有している半面、労働者から労働力の提供を受けた対価として「賃金を支払わなければならない」という債務(義務)を負担していることになります。

一方、労働者の方も、使用者に対して「労働力を提供しなければならない」という債務(義務)を負担している反面、その対価として「賃金の支払いを受けることができる」という債権(権利)を有することになります。

このように、契約当事者の双方が権利と義務をそれぞれ負担している契約は双務契約と呼ばれますが、この双務契約では当事者の一方が債務を履行しない場合にはその反対給付を受ける権利を失うのが原則です。

たとえば、日給制で働く労働者が仕事を休んだ場合にその休んだ日数分の給料を請求することができないのは、その労働者が双務契約で生じた債務の履行を怠ったため反対給付である賃金請求権という債権を行使する権利が失われてしまうからに他なりません。

しかし、この双務契約の原則をすべての場合に適用してしまうと不都合な結果が生じます。債権者の都合で債務者が債務の履行が困難になった場合にまで債務者が反対給付を受ける権利の行使まで制限してしまうと、何の落ち度もない債務者が本来受けられるべき権利を失うことになってしまい、債務者が一方的に不利益を受けてしまうからです。

たとえば、今の事例で労働者が仕事を休んだ理由が会社都合の休業であった場合にまで労働者がその休業期間中の賃金を受け取ることができなくなるとしてしまうと、何の落ち度もない労働者が会社が勝手な都合で休業した場合にまで賃金の支給を受け取ることができなくなってしまいます。

このような不都合を回避するために規定されたのが「危険負担」の規定と呼ばれる民法第536条2項です。

【民法第536条2項】

(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(後段省略)

この民法第536条2項では「債権者の責めに帰すべき事由」によって債務者が債務を履行することができなくなったときであっても、「債務者は反対給付を受ける権利を失わない」とされていますから、たとえ債務者が債務を履行しなかった場合であっても、その理由が債権者の都合によって生じたものである場合には、債務者は債権者に対して反対給付を請求することができることになります。

この点、これを雇用契約(労働契約)関係で当てはめると、先ほども述べたように、使用者(雇い主)は労働者から労働力の提供を受ける権利があるという点で「債権者」となり、労働者は労働力を提供しなければならないという点で「債務者」となり、その債務者が労働力を提供した対価として支払いを受ける賃金が「反対給付」ということになりますから、これを踏まえて民法第536条2項の規定に当てはめると、

「会社の責めに帰すべき事由によって労働者が労務を提供することができなくなったときは、労働者は反対給付である賃金を失わない」

ということになります。

ですから、仮に使用者(雇い主)の都合で仕事が休みになった場合であっても、労働者は民法第536条2項の規定によってその反対給付となる賃金の支払い請求権を失うことはありませんから、労働者はその休業期間中の賃金の支払いを請求することができるということになるのです。

会社都合による休業の場合に労働者が請求できる金額は「休業期間中の賃金の全額」

このように、たとえ会社都合で仕事が休みになった場合であっても、民法第536条2項の規定がありますから、労働者はその休業期間中の「賃金」の支払いを会社に対して請求することができるということになります。

この点、具体的にどれだけの金額を会社に請求することができるのか、という点が問題となりますが、その金額はその休業期間中に本来請求できる賃金の全額ということになります。

なぜなら、先ほど説明したように、民法第536条2項の規定では「反対給付を受ける権利を失わない」と規定されていますので、労働者はその休業期間中に働いていれば受け取ることができたであろう反対給付、つまりその休業期間の「賃金の全額」を受ける権利を失わないからです。

たとえば、月曜から金曜まで週5日勤務の日給1万円の仕事で働いている場合に、会社が会社の都合で3日間休業し労働者がその3日間仕事を休まされた場合は、その労働者は会社に対してその休んだ3日間の給料3万円の全額を会社に対して請求することができるということになります。

なお、会社都合の休業で「賃金の全額」が支払われない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業期間中に「賃金」が支払われない場合の対処法』のページで詳しく解説しています。

会社都合による休業の場合に労働者が請求できる金額は「休業期間中の平均賃金の6割」ではない

この点、労働基準法第26条で「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合には、「平均賃金の6割の休業手当」を支払わなければならないと規定されていることから、

「会社都合による休業の場合に労働者が会社に請求できるのは”賃金の全額”ではなく”平均賃金の6割の休業手当”じゃないか?」

と思う人もいるかもしれませんが、それは間違いです。

【労働基準法第26条】

(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

なぜなら、労働基準法の第26条は、使用者の都合によって生じた休業期間中の賃金の最低60%の支払いを「休業手当」として使用者に義務付けることで労働者の賃金を確保させ生活を安定させる趣旨で規定されたものであり、使用者が民法第536条2項で負担する賃金全額の支払いを軽減する趣旨で規定されたものではないと考えられているからです(最高裁昭和37年7月20日|裁判所判例検索ノースウエスト航空事件:最高裁昭和62年7月17日|裁判所判例検索)。

労働者が労働の対価として支給を受ける賃金はその労働者が生活していくうえで不可欠のものとなりますから、たとえ何らかのやむを得ない事由で会社が休業する場合であっても確保されなければなりません。労働者が休業によって賃金の支給を受けられなくなってしまえば、その労働者の生活は破綻してしまうからです。

そのため、労働基準法では26条で平均賃金の60%の支払いを「休業手当」という形で義務付け、それに違反する使用者に罰則(労働基準法26条違反は同法第120条で30万円以下の罰金)を設けることで労働者に最低限の賃金の受け取りを保障しているのです。

【労働基準法第120条】

次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
第1号 (省略)第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで(中略)…に違反した者。

このように、労働基準法第26条の規定は使用者(雇い主)に「平均賃金の6割」の「休業手当」の支払いを義務付けることで労働者に必要な最低限の生活費を保障する目的で制定された規定であり、民法第536条2項から支払いが義務付けられる休業期間中の「賃金」の支払い義務を軽減するために制定された規定ではありません。

つまり、会社の都合で休業が発生した場合には、会社はその休業期間中の賃金の平均賃金の60%に相当する「休業手当」を支払えば労働基準法違反として罰則(30万円以下の罰金)からは逃れることができますが、「賃金」の全額を支払わなければならない責任からは逃れられないのです。

ですから、会社は労働者に対しては賃金の全額(100%)を支払わなければなりませんし、労働者も会社に対してその休業期間中の賃金の全額を請求することができるということになります。

なお、仮に会社が平均賃金の6割の「休業手当」しか支払わない場合には、その支払われた「休業手当」の金額と休業期間中の「賃金」の全額の金額との差額をさらに会社に対して請求することができるということになります。

なお、会社都合の休業で会社が「平均賃金の6割の休業手当」しか支払ってくれない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業で「平均賃金の6割」の手当しか支払われない場合』のページで詳しく解説しています。

就業規則や労働協約、個別の雇用契約書(労働契約書)や労働条件通知書に別段の定めがあればそれに従うことになる

もっとも、会社の就業規則や労働協約、あるいは入社する際の雇用契約書(労働契約書)や労働条件通知書に

「会社都合の休業の場合は平均賃金の〇%の賃金を支給する」

などと記載されている場合には、その記載された割合の賃金を支払えばその規定が労働契約の内容となり会社は賃金支払い債務から逃れられますので、たとえば

「会社都合の休業の場合は平均賃金の60%の賃金を支給する」

などと記載されている会社の場合には、労働者は会社都合による休業の場合であっても賃金の全額の請求はできず、その記載された平均賃金の6割の賃金しか支払いを受けることができなくなりますので注意が必要です。

なお、この場合も労働基準法第26条の適用はありますので、「平均賃金の60%」を下回る割合の記載は無効と判断され60%までは請求できることになります。

たとえば会社の就業規則や労働協約、雇用契約書(労働契約書)や労働条件通知書等に

「会社都合の休業の場合は平均賃金の50%の賃金を支給する」

という記載があったとしても、その60%に満たない部分は無効となりますので、労働者は会社に対して平均賃金の60%の賃金の賃金(休業手当)の支払いを請求することができるということになります。

なお、会社が個別の雇用契約や就業規則等に規定された割合の賃金(手当)を支払ってくれない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業で就業規則等の賃金・休業手当が支払われない場合』のページで詳しく解説しています。