暇だから休んで…と言われたパートは給料や休業手当をもらえるか

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アルバイトやパートとして働いている場合、会社(個人事業主も含む)から「暇だから明日休みね」とか「暇だから早めに帰っていいよ」などと言われて休業したり、所定の労働時間より早く仕事を切り上げて帰宅させられるケースがあります。

たとえば、工事現場の作業が予定より早く終わったため作業員のアルバイトが「暇だから明日来なくていいよ」といわれて元々シフトが入っていた勤務日を休みにさせられたり、イベント会場で働いているパート労働者が客の入りが悪いことから主催者に「定時より1時間早めに帰っていいよ」といわれて所定の労働時間よりも短い時間で帰宅するようなケースです。

このように使用者(個人事業主も含む)から「暇だから」という理由で休業を命じられた場合、労働者としては仕事をしなくてもよくなるのである意味”ラッキー”ですが、その休業になった分の賃金が支払われない場合には、せっかくのバイト代やパート代を稼ぐ機会を取り上げられてしまうことになり、不合理とも思えます。

では、このように会社から「暇だから明日休んで」とか「暇だから帰っていいよ」といわれた場合、その働かなくてよくなって休業になった日数・時間の給料や休業手当を請求することはできないのでしょうか。

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個別の雇用契約や就業規則で「会社都合による休業」に関する合意がある場合

今述べたように、会社が「暇だから明日休みにする」「暇だから帰っていい」などと一方的にアルバイトやパート労働者を休業させたり、所定の労働時間の途中で帰宅させたりする場合があるわけですが、このような場合に労働者が休業期間中(休業時間中)の賃金(または休業手当)の支払いを請求することができるかという問題は、一義的にはそのような場合の賃金(または休業手当)の支払いが雇用契約(労働契約)で具体的にどのように定められているかによります。

つまり、個別の雇用契約(労働契約)や就業規則あるいは労働組合が会社との間で取り交わす労働協約に「会社都合による休業」の場合の賃金(または休業手当)の支払いが規定されている場合にはその規定によって労働者はその定められた金額を会社に対して請求することができるということになります。

なぜこのような結論になるかと言うと、個別の雇用契約(労働契約)で合意した内容や就業規則あるいは労働協約で規定された内容は雇用契約(労働契約)の内容となって労働者を拘束するからです(※ただし就業規則の場合は労働者に周知されていなければ無効になります→就業規則を見せてくれない会社で就業規則の内容を確認する方法)。

たとえば、会社の就業規則などに

「会社都合による休業の場合、会社は休業期間中の賃金を支払う」

などという規定がある場合は、会社は「暇だから明日休みにする」「暇だから帰っていい」と命じて休業した場合のその休業期間中(休業時間中)の「賃金の全額」を労働者に支払わなければなりませんし、たとえば

「会社都合による休業の場合、会社は平均賃金の6割の休業手当を支払う」

などと規定されている場合には、会社は休業させた労働者に対してその休業期間中(休業時間中)の「平均賃金の6割の休業手当」を支払わなければならないということになります。

ですから、会社から「暇だから明日休んでいいよ」「今日は暇だから帰っていいよ」などと言われて休業を命じられた場合には、まずこれらの書面を確認して会社都合による休業の場合の賃金(または休業手当)の支払いに関する合意がなされていないか確認することが必要となるでしょう。

これらの書類を確認し、実際に会社が支払った賃金(または休業手当)があらかじめ雇用契約(労働契約)の内容となっている金額と一致しているか精査して、不足する部分があれば会社に対して請求する必要があります。

なお、この場合、具体的にどのようにしてその合意があるかないか確認するかという点が問題となりますが、具体的には

  • 雇用契約書(労働契約書)
  • 労働条件通知書
  • 就業規則
  • 労働協約
  • その他使用者と労働者の間で個別に合意した合意書・同意書等

の内容によって定まることになりますので、入社する際に会社から受け取った、あるいは会社に備え付けられているこれらの書面を確認して判断することが必要になるでしょう。

なお、これらの書面の具体的な確認方法は以下の方法を参考にしてください。

個別の雇用契約や就業規則等における合意は労働基準法第26条の基準を下回る合意ではいけない

ただし、これらの書面に規定されている内容のうち「休業手当」を支払う旨が定められている場合は、後述するように労働基準法第26条で「平均賃金の6割」の金額を最低でも支払うことが義務付けられていますので、たとえば

「会社都合による休業の場合、会社は平均賃金の5割の休業手当を支払う」

などと規定されている場合には「平均賃金の6割」の支払いを義務付けた労働基準法第26条に違反することになる結果その合意自体が無効となります。

ですから、そのようなケースであれば労働者は会社に対して「平均賃金の6割」の休業手当の支払いを求めることができますし、仮に会社から「平均賃金の5割」の休業手当を受け取っている場合は「平均賃金の6割」との差額の休業手当をさらに請求することができるということになります。

なお、このように「暇だから…」という会社都合の休業で会社が個別の雇用契約や就業規則等に規定された割合の賃金(手当)を支払ってくれない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業で就業規則等の賃金・休業手当が支払われない場合』のページで詳しく解説しています。

個別の雇用契約や就業規則で「会社都合による休業」に関する合意がない場合

このように、個別の雇用契約(労働契約)や就業規則等で会社都合による休業の場合の賃金(または休業手当)の支払いについて会社と労働者の間で合意があればその合意によって支給される賃金(または休業手当)の金額が決まります。

では、そのような当事者間の合意がない場合はどのように処理されるのでしょうか。

(1)「暇だから休んで」「暇だから帰っていい」で休業する場合は「賃金の全額」を請求できる

会社が「暇だから明日休みにする」「暇だから帰っていい」などと一方的にアルバイトやパート労働者を休業させたり、所定の労働時間の途中で帰宅させたりする場合において、個別の雇用契約(労働契約)や就業規則などに別段の定めや合意がない場合には、法律の規定によって判断するしかありません。

もっとも、結論から言うとこのような場合、労働者はその休業期間中(または所定の時間より早く帰宅した時間の分)の「賃金の全額」の支払いを会社に対して請求することができます。

たとえば日給1万円で毎週月曜から金曜まで働いているアルバイト作業員が木曜日の夕方に「暇だから明日休んでいいよ」言われて翌日の金曜日に休んだ場合には、会社に対してその金曜日の給料として1万円の支払いを求めることができますし、時給1,000円で1日5時間働いているパート労働者が3時間勤務した時点で「今日は暇だから帰っていいよ」と言われて帰宅した場合は、その日の給料として5時間分の5,000円のパート代を請求することができるということになります。

なぜ、このような結論になるかと言うと、民法第536条2項にそのように規定されているからです。

【民法第536条2項】

(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(後段省略)

民法第536条2項の規定は債権者の都合で債務者が債務の履行をできなくなってしまう場合に債務者が反対給付を請求する権利を失ってしまう危険を債権者に負担させて債務者を保護するための契約法の一般規定と考えられていますが、雇用契約書(労働契約)も契約の一つである以上、この民法の一般規定が適用されて解釈が導かれることになります。

この点、雇用契約(労働契約)において使用者(会社だけでなく個人事業主も含む)が休業した場合の賃金の支払いのケースをこの民法第536条2項の規定に当てはめると

「使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が仕事をすることができなくなったときは、労働者は、反対給付となる賃金を受ける権利を失わない。」

という文章になりますから、会社に「責めに帰すべき事由」がある事情、つまり会社に帰責事由のある事情で休業する場合には、労働者はその休業した期間中(時間中)の賃金の支払いを受ける権利を失わないということになります。

この点、会社が「暇だから明日休んでいいよ」と告知して翌日の仕事を休ませたり「今日は暇だから帰っていいよ」と言って所定の労働時間よりも早く帰宅させるような場合は、その休業の理由はもっぱら「その会社が暇なこと」であり「会社がその労働者に与える仕事がないこと」という点にありますから、その休業に至った事由は100%その会社に帰責事由があると言えます。

その「会社が暇なこと」や「与える仕事がないこと」は休業を命じられた労働者には全く責任がありませんし、天災事変などの不可抗力にもあたらないからです。

そうであれば、会社が「暇だから明日休んでいいよ」と告知して翌日の仕事を休ませたり「今日は暇だから帰っていいよ」と言って所定の労働時間よりも早く帰宅させることによって行われる休業は、民法第536条2項にいう「攻めに帰すべき事由」が会社にあると判断されることになります。

したがって、会社が「暇だから明日休みにする」「暇だから帰っていい」などと一方的にアルバイトやパート労働者を休業させたり、所定の労働時間の途中で帰宅させたりした場合において、個別の雇用契約(労働契約)や就業規則などに別段の合意がない場合は、休業を強制させられた労働者は会社に対してその休業期間中(または休業時間中)の「賃金の全額」の支払いを求めることができるということになるのです。

※ここではアルバイトやパートに限って解説していますが、これは正社員や契約社員、派遣社員でも全く変わりません。仮に正社員や契約社員、派遣社員が会社(または派遣先の会社)から「暇だから明日休みにする」「暇だから帰っていい」などと休業を言い渡された場合も同じように民法第536条2項を根拠にしてその休業期間中(休業時間中)の「給料の全額」の支払いを求めることができるということになります。
なお、このように「暇だから…」という会社都合の休業で「賃金の全額」が支払われない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業期間中に「賃金」が支払われない場合の対処法』のページで詳しく解説しています。

(2)請求できるのは「平均賃金の6割の休業手当」ではない

以上で説明したように、個別の雇用契約(労働契約)や就業規則等で会社都合による休業の場合の賃金(または休業手当)の支払い基準が合意されている場合はそれによりますが、その合意がない場合には民法第536条2項の規定を根拠にしてその休業期間中の「賃金の全額」の支払いを求めることができるということになります。

なお、ここで注意してもらいたいのが、その場合に会社に請求できるのが「平均賃金の6割」の「休業手当」ではないという点です。

会社の都合によって休業する場合の休業手当の支払いについては労働基準法第26条に規定されていますが、そこでは「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合に限って休業手当の支払いを義務付けていますので「会社の都合で休業する場合は平均賃金の6割の休業手当さえ支払っておけばいいんだ」と誤解している経営者や役職者が少なくありません。

【労働基準法第26条】

(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

しかし、その解釈は間違っています。

なぜなら、労働基準法の第26条は使用者の都合によって生じた休業期間中の賃金の最低60%の支払いを「休業手当」として使用者に義務付けることで労働者の賃金を確保させ生活を安定させる趣旨で規定されたものであり、民法第536条2項によって使用者が負担することになる賃金全額の支払いを軽減する趣旨で規定されたものではないと考えられているからです(最高裁昭和37年7月20日|裁判所判例検索ノースウエスト航空事件:最高裁昭和62年7月17日|裁判所判例検索)。

確かに、「暇だから…」という理由で会社が労働者を休業させる場合は「使用者の責めに帰すべき事由」による休業としてこの労働基準法第26条の規定が適用されることになりますから、会社は労働基準法第26条の規定にしたがって、その休業を命じた労働者に対して「平均賃金の6割の休業手当」を支払うことが義務付けられます。

そして、労働基準法第26条の違反行為については同条120条で「30万円以下の罰金」の刑事罰が課せられていますから、「暇だから…」という理由で休業を命じた会社が「平均賃金の6割の休業手当」を支払わない場合は刑事罰の対象として罰せられることになりますから、会社は刑事罰をもって「平均賃金の6割の休業手当」の支払いを義務付けられていると言えるでしょう。

しかし、その「平均賃金の6割の休業手当」を支払ったからと言って先ほど説明した民法第536条2項の責任が消滅するわけではありません。

先ほども説明したように、「暇だから…」という理由で休業を命じた場合は、民法第536条2項の規定が適用されることによってその休業を命じた労働者に対して休業期間中の「賃金の全額」を支払わなければならない義務が生じるからです。

ですから、仮に「暇だから…」という理由で会社から休業を命じられた場合に「平均賃金の6割の休業手当」の支払いが行われたとしても、労働者はその受け取った「平均賃金の6割の休業手当」の金額と、その休業期間中の「賃金の全額」との差額を更に会社に対して請求することができるということになります。

この点を誤解している経営者や役職者はとても多く、「会社の都合で休業する場合は平均賃金の6割の休業手当さえ支払っておけばいいんだ」という間違えた知識で「平均賃金の6割の休業手当」しか支払わない会社は腐るほどありますので、そのような誤解に惑わされないように十分な注意が必要と言えます。

なお、このように「暇だから…」という会社都合の休業で会社が「平均賃金の6割の休業手当」しか支払ってくれない場合の具体的な対処法については『会社都合の休業で「平均賃金の6割」の手当しか支払われない場合』のページで詳しく解説しています。