解雇されたら何をするべきか 解雇でやっておきたい3つのこと

人生の中で会社から解雇されるような経験を何度もしてしまう人はごく稀でしょうから、いざ勤務先の会社(個人事業主も含む)から解雇されてしまった場合、どう対処してよいかわからず右往左往するだけで時間を無駄にしてしまう人が多いと思います。

しかし、解雇の効力を争って復職を求めたり、解雇日以降に勤務していれば得られてであろう賃金の支払いを請求するような場合には、解雇された後に労働者がどう対処するかによって、その後の裁判や交渉の結果に大きな違いが生じることも少なくありません。

つまり、解雇の後に労働者が適切に対処すれば復職や解雇日以降の賃金の請求が認められる一方、その対処を誤れば会社側の不当な解雇が裁判で容認され労働者が思わぬ不利益を受けてしまうこともあるのです。

では、労働者が解雇された場合、具体的にどのような点に気を付けて、具体的にどのように対処することが必要なのでしょうか。

ここでは、労働者が解雇されたときに特に気を付けておきたい3つの事項について簡単に解説しておくことにいたしましょう。

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(1)解雇理由証明書の交付を求めておく

解雇された際にまずやっておきたいのが、会社(個人事業主も含む)に対して解雇理由証明書の交付を求めておくことです。

労働基準法第22条では退職や解雇された労働者が使用者にその退職や解雇に関する証明書の交付を求めた場合、その事実関係(解雇の場合は「解雇の理由」も含む)を記載した証明書の交付を使用者に義務付けていますから、労働者が請求すれば必ずその証明書を発行してもらうことができます。

この点、なぜその証明書の交付を受けることが大切なのかというと、それは労働者を解雇した使用者が後になって解雇の理由を変えてしまうことがあるからです。

使用者が労働者を解雇する場合、労働契約法第16条の規定に基づいて「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件を満たすことが必要ですが、その2つの要件を満たすことは容易ではありませんので、裁判になれば「無効」と判断されて会社側が敗訴することも少なくありません。

そのため悪質な会社では、裁判を有利にするために、後になって解雇の理由を勝手に会社に都合の良い理由に変更してしまうことがあるのです。

たとえば、内部告発をした労働者を報復として解雇した会社が、当初はその理由を「勤務成績不良」としていたにもかかわらず、裁判が始まると「勤務成績不良を理由とした解雇では裁判に負ける」と判断して、ハラスメントをでっち上げて「就業規則第〇条〇項の懲戒事由に該当するから解雇した」などと解雇の理由を変更してしまうようなケースがそれです。

このような解雇理由の恣意的な変更を防ぐには、解雇された時点で「解雇の理由」を確定させておく必要があります。

そのため、解雇された時点で労働基準法第22条の証明書の交付を求めておいた方が良いと考えられるのです。

なお、労働基準法第22条の証明書の交付を求めても交付を拒否されたり、記載内容に不備がある場合の対処法については以下のページでさらに詳しく解説しています。

(2)解雇の無効を主張した事実を客観的証拠として残しておく

解雇された場合にやっておきたい2つ目の事項は、とりあえず「解雇の無効」を主張しておくという点です。

解雇された場合においてその解雇を受け入れるのであればそれでよいですが、解雇をあくまでも受け入れないというのであれば、解雇の無効を主張してその意思表示を使用者側に通知しておかなければなりません。

解雇に対して何もしなければ、解雇を受け入れたとみなされて後で解雇の無効を主張することが難しくなってしまうからです。

ですから、解雇された場合においてその解雇に承諾できないと思う場合には、まずその解雇の無効を主張して使用者側に伝達しておく必要があります。

そしてこの場合、後に裁判などで争うことを想定した場合には、自分が解雇の無効を主張したという事実が客観的な証拠として残しておく方が無難です。

ですから、解雇された場合はまず、その解雇の無効を主張する通知書を作成し、特定記録郵便など使用者にその通知が到達したという記録が残る郵送方法を用いて送付するようにした方が良いでしょう。

なお、この場合に会社に通知する通知書には、解雇が無効である理由を具体的に記載しても構いませんが、具体的に記載してしまうと後でその内容を変更することができなくなってしまいますので、以下のような抽象的な文面にしておいた方が良いかもしれません。

株式会社 甲

代表取締役 ○○ ○○ 殿

解雇の無効確認および解雇の撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から一方的に解雇の通知を受け、同月〇日、貴社を解雇されました。

しかしながら、労働者の解雇については労働契約法第16条において客観的合理的な理由と社会通念上の相当性の2つの要件を満たすことが必要であるとされているところ、貴社の行った私に対する解雇にはそのいずれも見当たりません。

したがって、貴社が私の行った解雇は、解雇権を濫用するものであって無効ですから、直ちに当該解雇を撤回するよう、申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※送付した事実を証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで、特定記録郵便など配達記録の残る郵送方法で郵送するようにしてください。

※このような通知書は、後日裁判になったときに不測の影響が生じる場合もありますので、実際に送付する場合は事前に弁護士等専門家に確認するようにした方が良いかもしれません。

(3)「出社する意思があること」を書面で通知し、その事実を客観的証拠として残しておく

解雇された場合にやっておきたい3つ目の事項としては、とりあえず「勤務する意思」があることを使用者側に書面等で通知しておくという点です。

労働者が解雇された場合、それが不当な解雇だと思っていても、会社から出社を拒否されれば出社すること自体ができませんから、多くの労働者は出社しなくなるのが普通です。

しかし、解雇された後に労働者が出社しなくなると、後で解雇の無効が裁判で争われるようになった際に、会社が「解雇するつもりはなかったけど、本人が出社しなくなったから仕方なく解雇したんだ」などと「労働者が出社しなくなった事実」を解雇を正当化する理由にすることがよくあります。

このような主張が会社からなされれば労働者は「会社に出社しなくなった原因が会社側にあること」を立証しなければなりませんが、そのためには会社から解雇の通知があった日以降、会社に勤務する意思があったことを示す客観的証拠が必要となります。

そのため、使用者から解雇された場合には「出勤する意思はあったのに会社から出勤を拒否された」事実を客観的証拠として残しておくために、「出社する意思があること」を通知する書面を作成し、その通知書を会社に送付してその証拠を保全しておく必要があるのです。

なお、その場合に会社に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

株式会社 甲

代表取締役 ○○ ○○ 殿

解雇の無効確認および出勤の受け入れ申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から一方的に解雇の通知を受け、同月〇日、貴社を解雇されました。

この解雇については、労働契約法第16条で解雇に必要とされる客観的合理的な理由と社会通念上の相当性の2つの要件が満たされていないことから無効と判断されますが、貴社がその撤回に応じず、私の出社を貴社が拒絶していることから、私の就労が妨げられている状況にあります。

したがって私は、貴社に対し、速やかに当該解雇を撤回するとともに、私の貴社への出社と就労を認めるよう、申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※送付した事実を証拠として残しておくため、コピーを取ったうえで、特定記録郵便など配達記録の残る郵送方法で郵送するようにしてください(※ケースによっては内容証明郵便で送付する方が良い場合もあります)。

※このような通知書は、後日裁判になったときに不測の影響が生じる可能性もありますので、実際に送付する場合は事前に弁護士に相談するようにしてください。

解雇された場合のその他の注意点

上に挙げた3つの対処は、あくまでも解雇された際に特に気を付けておきたい点にすぎませんので、上記の3つの対処を取ったからと言って解雇の無効が確実に実現できるというようなものではありません。

解雇された際に、その解雇の無効を主張して復職を求めたり、解雇日以降の賃金の支払いを請求しようとする場合は、早い時期に弁護士など専門家に相談することを心がけるようにしてください。