介護休業を申請・取得したことを理由に解雇された場合の対処法

(2)労働局の紛争解決援助の手続きまたは調停の手続きを利用する

介護休業を申請または取得したことを理由として解雇された場合には、その事実を労働局に相談し、労働局が主催している「紛争解決援助」の手続きまたは「調停」の手続きを利用してみるのも対処法として有効です。

前述したように、介護休業を申請または取得したことを理由として労働者を解雇することは育児介護休業法に違反しますが、育児介護休業法に違反する労使間のトラブルが発生した場合には、その当事者の一方から労働局に相談をすることで「紛争解決援助の手続」または「調停の手続」を利用し、労働局から必要な助言や指導や勧告、あるいは調停案の提示などを受けて解決を図ることが可能です。

育児介護休業法第52条の4第1項

都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

育児介護休業法第52条の5第1項

都道府県労働局長は、第52条の3に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。

この労働局の紛争解決援助や調停の手続きは裁判所における裁判とは異なり法的な強制力はありませんが、会社側が労働局の指導や勧告、調停案に従う場合には違法な解雇が撤回されたり労働者の求める保障に応じるなどトラブルの解消が図れるケースもあります。

そのため、介護休業を申請または取得したことを理由として解雇された場合には、労働局に相談して紛争解決援助や調停の手続きを試してみるというのも対処法の一つとして有効な場合があると考えられるのです。

なお、労働局の紛争解決援助の申込みや調停等の利用についてはこちらのページを参考にしてください。

→ 労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順

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介護休業を申請または取得したことを理由に解雇された場合のその他の対処法

介護休業を申請または取得したことを理由に解雇された場合におけるこれら以外の解決手段としては、各都道府県やその労働委員会が主催する”あっせん”の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用して解決を図る手段もあります。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

解雇予告手当や退職金など解雇を前提とした金品は受け取らないこと

以上のように、介護休業を申請または取得したことを理由に解雇された場合には、その解雇が育児介護休業法第16条で準用する第10条に違反することから確定的に違法な解雇となるため労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」が「ない」と判断されることになり、その解雇は確定的に無効であるとして様々な対処法をとることができます。

もっとも、このようにして解雇の効力を争う場合には、解雇予告手当や退職金など解雇を前提とする金品を受け取らないようした方が良いと思います。

解雇予告手当や退職金など「解雇(退職)の事実が発生したこと」が前提となって支給される金品を受け取ってしまうと「無効な解雇を追認した」と認定されて後で解雇の無効を主張することが困難になるケースがあるからです。

ですから、解雇の効力を争う場合には、仮に解雇予告手当や退職金などが支払われたとしてもそれを受け取るのは控えた方が良いですし、受け取るにしても事前に弁護士など専門家に相談する方が良いと思います (※参考→解雇されたときにしてはいけない2つの行動とは)。

解雇のトラブルはなるべく早めに弁護士に相談した方が良い

なお、このページでは介護休業を申請または取得したことを理由に解雇された場合の対処法を解説してきましたが、解雇された場合の個別の対応は、解雇の撤回を求めて復職を求めるのか、それとも解雇の撤回を求めつつも解雇は受け入れる方向で解雇日以降の賃金の支払いを求めるのか、また解雇を争うにしても示談交渉で処理するのか裁判までやるのか、裁判をやるにしても調停や労働審判を使うのか通常訴訟手続を利用するのかによって個別の対応も変わってくる場合があります。

将来的にトラブルの解決を弁護士など専門家に依頼しようと考える場合は、早めに弁護士に相談しておかないとかえってトラブル解決を困難にする場合もありますので、その点は注意するようにしてください。