バイト・契約社員が辞めさせてくれない会社を退職する方法

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アルバイトやパート、契約社員など、いわゆる非正規労働者として働く労働者も「労働者」という点では正社員と何ら変わりありませんから、勤務している会社を退職しようとする場合には退職届(または退職願)を提出して退職の意思表示を行う必要があります。

もちろん、退職の意思表示は必ずしも「書面」で行うことが法律で定められているわけではありませんので、「口頭」で「〇月〇日付けで辞めます」と告知するだけでも退職の意思表示としては法的に有効です。

しかし、その退職の意思表示を受け取る会社側としても、事務手続き上「退職の意思表示があった」ということを有体物として保存しておくこと必要がありますので、社会の一般的なマナーとして「口頭」だけでなく退職届(退職願)という「書面」を提出して退職の意思表示をすることが求められるのです。

ところで、アルバイトやパート、契約社員がこのようにして退職届(退職願)を提出し退職の意思表示をしたにもかかわらず、使用者(雇い主)側がその退職の意思表示を拒否し、退職を妨害するケースが稀に見受けられます。

アルバイトやパート、契約社員など非正規労働者であっても使用者(雇い主)にとっては大切な労働力ですから、その労働力の減少を嫌う使用者(雇い主)では、退職を願い出たバイトや契約社員などに様々な理由を付けて退職を妨害することがあるのです。

では、このようにアルバイトやパート、契約社員として働く労働者が退職届(退職願)を提出するなどして退職の意思表示を行ったにもかかわらず仕事を辞めさせてもらえない場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか?

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有期労働契約では契約期間の途中で辞めることができないのが原則

アルバイトやパート、契約社員など、いわゆる非正規雇用として働く労働者は「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」として使用者(雇い主)との間の雇用契約(労働契約)が結ばれるのが一般的です。

「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」とは、正社員などいわゆる正規雇用として働く労働者が「終身雇用」として雇い入れられる場合の「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」と異なり、「いつからいつまで」というように働く期間が一定の期間に限定される雇用契約(労働契約)のことをいいます。

労働者がこの「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」として働く場合には、「その契約期間が満了するまでは働きますよ」ということを使用者(雇い主)との間で約束したうえで雇い入れられるのが前提となりますから、その雇用契約の契約期間の途中で労働者が一方的に退職することは認められないのが原則です。

なぜなら、この「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」ではその「〇年〇月〇日から〇年〇月まで」という契約期間自体が雇用契約(労働契約)の内容となりますので、その契約期間の途中で一方的に退職してしまうこと自体が契約違反になるからです。

もちろん、使用者(雇い主)が契約期間の途中で退職することに合意すれば「雇用契約の合意解約」として退職することは可能です。

しかし、使用者(雇い主)がその契約期間の途中での退職を認めない場合には、契約違反の責任は逃れられませんので、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」の場合では契約期間の途中で一方的な意思表示で退職することは認められないのが原則的な取り扱いとなるのです。

ただし、これはあくまでも契約違反になるので契約期間の途中で一方的に退職することはできないという意味にすぎません。後述の(1)の(ウ)で説明するように契約違反を承知の上で一方的に退職したいというケースでは、契約期間の途中でも一方的に退職することは”事実上”は可能といえます。

なお、アルバイトやパート、契約社員として採用された場合であっても、契約期間が「〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで」というように限定されなかった場合には、その雇用契約は「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」ではなく正社員と同じ「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」となりますので上記のような原則は当てはまりません。

アルバイトやパート、契約社員であっても契約期間が「いつからいつまで」と限定されなかった場合は正社員と同じようにいつでも自由に退職することができますのでその点を誤解しないように注意しましょう。

なお、正社員など「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」における辞めさせてくれないトラブルの解決方法等についてはこちらのページで詳しく解説しています。

正社員が辞めさせてくれない会社を退職する方法

契約期間の途中で退職することが例外的に認められる場合

このように、アルバイトやパート、契約社員などいわゆる非正規雇用として働く労働者に代表される「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」においては、労働者はその契約期間中は働くことをあらかじめ了承したうえで雇用契約(労働契約)を結んでいることになりますので、契約期間が満了する前に一方的な意思表示によって退職することは認められないのが原則です。

しかし、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働くアルバイトやパート、契約社員も人間ですから、働き始めた当初は「契約期間中は退職できない」と合意していたとしても、様々な事情から契約期間の途中で退職したくなる場合もあるのが実情です。

そのため、法律では「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」における退職の例外として「やむを得ない事由」がある場合(民法628条)と「契約期間の初日から1年が経過」した場合(労働基準法137条)の2つの場合に限って例外的に契約期間の途中で退職することを認めています。

【民法第628条】
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

【労働基準法第137条】
期間の定めのある労働契約(中略)を締結した労働者(中略)は、(中略)民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。


※注釈:ただし高度な専門的知識を有する労働者および満60歳以上の労働者は適用除外されています。

つまり、「やむを得ない事由(理由)」がある場合と「契約期間の初日から1年」が経過した場合の2つのケースでは、契約期間の途中で一方的に退職したとしても契約違反の責任は問われないということが法律で認められているわけです。

なぜこのような法律が定められているかというと、「やむを得ない事由(やむを得ない理由)」や「契約期間の初日から1年が経過」した後にまで「契約で合意したから」という理由で労働者に就労を強制するのは、その労働者の身体的自由を著しく制限することになり不都合だからです。

憲法の18条では全ての国民に「奴隷的拘束の禁止」が保障されていますから、たとえ労働者が契約で合意した場合であっても、その「意に反して」就労を強制させられることは最小限に抑えられる必要があります。

【日本国憲法第18条.】
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

ですから、たとえ「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」として契約した労働者であっても、「やむを得ない事由(やむを得ない理由)」がある場合と「契約期間の初日から1年が経過」した場合に限って、労働者が自由に一方的な意思表示で退職することが認められているわけです。

なお、この点については『バイトや契約社員が契約期間内でも会社を辞められる3つのケース』のページで更に詳しく解説しています。

有期労働契約で働く労働者が辞めさせてもらえない場合の対処法

以上の原則と例外を踏まえたうえで、アルバイトやパート、契約社員など「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が、退職の意思表示を行ったにもかかわらず退職を妨害されて辞めさせてもらえない場合の対処法を考えていくことにいたしましょう。

なお、これら有期労働契約で働く労働者が辞めさせてもらえないケースとしては

の3つのケースがあると思いますので、以下その3つのケースそれぞれにおける対処法を検討していくことにいたしましょう。

(1)契約期間が「満了する前」に辞めさせてくれない場合

アルバイトやパート、契約社員など「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が、「契約期間が満了する前」つまり「契約期間中」に退職の意思表示を行った場合において、退職を拒否されて辞めさせてくれない場合の対処法は次の(ア)(イ)(ウ)の3つのシチュエーションで異なりますので、以下それぞれに分けて解説いたします。

(ア)「やむを得ない事由」がある場合

有期労働契約で働く労働者に「やむを得ない事由(やむを得ない理由)」がある場合には、先ほども説明したように民法628条の規定により自由に退職することが認められています。

したがって、たとえ契約期間が「満了する前」であっても、労働者の意思で一方的に退職することが認められることになりますので、仮に会社から「契約期間が満了してないから辞めさせない」と言われたとしてもそのような主張は一切無視して構いません。

もちろん、この「やむを得ない事由」による退職は法律で認められた労働者の権利であり、契約期間が「満了する前」の退職であっても契約違反とはなりませんから、仮にその退職によって会社に損害が発生したとしても労働者にはその責任が一切発生しないのは当然です。

この場合、どうしても会社が退職を認めないと譲らない場合の対処法が問題となりますが、そのようなケースでは退職届(退職願)を作成し会社に郵送で送付するなどし、その退職届(退職願)に記載した退職日以降は出社しないようにすればよいでしょう。

なお、この民法628条にいう「やむを得ない事由」が具体的にどのような事由をいうのかという点は条文上明確ではありませんのでケースバイケースで判断するしかありませんが、一般的には以下のような場合が「やむを得ない事由」に該当するのではないかと考えられます(※ただしあくまでも私見です)。

【民法628条における「やむを得ない事由」の具体例】
① 賃金不払いや違法残業、休日・産休等の付与違反など雇い主に労基法違反がある場合。
② 職場いじめやパワハラ、セクハラ.が原因で勤務継続が困難な場合。
③ 肉体的・精神的・年齢的な体力減退等で従前同様の業務従事が困難になった場合。
④ 子供の通学・通園等の事情で勤務の継続が困難になった場合。
⑤ 人事異動の辞令を受けたものの家族の都合で単身赴任も困難な事情がある場合。
⑥ 配偶者が人事異動の辞令を受け転居が必要になった結果、勤務が困難になった場合。
⑦ 通勤で使うバス.や電車の路線廃止、ダイヤ改正等で通勤が不能又は困難になった場合。
⑧ 会社が通勤困難な地域に移転し通勤自体が著しく困難になった場合。
⑨ 親族の介護が必要になり従前の勤務が困難になった場合。
⑩ その他これらに準ずるやむを得ない事由がある場合。
※なお、やむを得ない理由があるにもかかわらず会社が辞めさせてくれない場合の対処法については『バイトやパートがやむを得ない理由でも辞めさせてもらえない場合』のページで詳しく解説しています。

(イ)「契約期間の初日から1年が経過」した場合

「契約期間の初日から1年が経過」した場合も、先ほども説明したように労働基準法137条で自由に退職することが認められています。

したがって、仮に有期労働契約の契約期間が「満了する前」であっても、その退職したい日が「契約期間の初日から1年が経過」した日以降である限り、いつでも自由に退職することが可能です。

例えば、2018年の1月1日から「契約期間3年」で働き始めた場合は2020年の12月31日まで働くことが契約上求められますが、2018年の12月31日まで勤務した場合は「契約期間の初日から1年が経過」したことになりますので、2019年1月1日以降は会社の承諾なしに一方的にいつでも自由に退職することが認められることになります。

もちろん、この場合も法律で認められた契約解除となりますので、その契約期間の途中の退職によって会社に損害が発生したとしても、「契約期間の初日から1年が経過」したことを理由に退職した労働者には一切の損害賠償責任は発生しないということになります。

なお、このケースでも使用者(雇い主)が退職届(退職願)の受け取りを拒否して辞めさせない場合の対処法が問題となりますが、先ほども説明したのと同じように、退職届(退職願)を作成し会社に郵送で送付するなどして、その退職届(退職願)に記載した退職日以降は出社しないようにすればよいと思います。

ちなみに、契約期間の初日から1年が経過したにもかかわらず会社が辞めさせてくれない場合の具体的な対処法については『バイトやパートが1年以上勤務したのに辞めさせてもらえない場合』のページで詳しく解説しています

(ウ)「やむを得ない事由」がなく「契約期間の初日から1年が経過」していない場合

以上の(ア)と(イ)の場合と異なり、「やむを得ない事由」がなく、かつ、「契約期間の初日から1年が経過」していない場合には、有期労働契約で働く労働者が契約期間の契約期間が「満了する前」に退職することは契約上認められません。

もちろん、使用者(雇い主)がその退職に同意すれば契約期間の途中でも辞めることはできますが、民法628条や労働基準法137条のような契約期間の途中における退職を正当化させる法律がありませんので、雇用契約(労働契約)に反して契約期間が「満了する前」に退職すること自体が契約違反ということになるからです。

もっとも、このような場合であっても使用者(雇い主)側の承諾を受けずに一方的に辞めること自体は可能です。

なぜなら、労働基準法5条で「強制労働の禁止」が明確に規定されているからです。

【労働基準法5条.】
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

先ほども説明したように、「やむを得ない事由」がなく、「契約期間の初日から1年が経過」していない場合には、契約期間が「満了する前」に退職することを正当化させる法律がありませんので、仮に有期労働契約の労働者が契約期間の途中で一方的に退職しようとする場合は、契約違反の責任が発生することになります。

そして、そのような契約期間途中での退職が契約違反ということになれば、民法415条の債務不履行責任が生じますので、仮にその契約期間の途中で退職したことによって使用者に何らかの損害が発生した場合は、その退職した労働者が損害賠償責任を負担しなければならなくなるでしょう。

【民法第415条.】
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

しかし、このようにして契約違反になる場合であっても、それを理由に使用者(雇い主)が退職する労働者を引き留めて強制的に就労を強要することは「強制労働の禁止」を規定した労働基準法5条に抵触することになりますので法的に禁止されます。

つまり、使用者(雇い主)は、契約期間が「満了する前」に契約違反を承知のうえで退職する労働者に「契約違反を理由に損害賠償請求」することはできても、その退職を強行する労働者を引き留めて「就労を強制する」ことはできないわけです。

ですから、このように「やむを得ない事由」がなく、かつ、「契約期間の初日から1年が経過」していない状態で退職届(退職願)を提出し、使用者(雇い主)から拒否されたとしても、一方的に退職届(退職願)を郵送するなどすれば、いつでも自由に退職することができるということになるのです。

ただし、繰り返しますが、この場合は前述した(ア)や(イ)のように契約期間中の退職を正当化させる法的根拠がありませんので、契約違反の責任は逃れられませんから、仮にその退職によって使用者に損害が発生した場合には、民法415条に基づいてその損害を弁償しなければならないこともありますので注意が必要です。
なお、この点については『バイト・契約社員の契約違反による退職を会社が拒否できない理由』のページでも詳しく解説しています。

(2)契約期間が「満了する日」に辞めさせてくれない場合

次に、契約期間が「満了する日」に退職する場合を検討します。

この点、有期労働契約で働く労働者が契約期間が「満了する日」をもって退職しようとする場合は、当初の契約で約束した契約期間を就労し終えているわけですから、契約違反にはなりませんので一方的に退職を申し入れて仕事を辞めることは当然に認められます。

たとえば、2018年の1月1日から「契約期間3年」で働き始めた場合は2020年の12月31日で契約期間が満了することになりますので、2020年12月31日の24時が到来するまでの間に退職届(退職願)を提出するなどして退職の意思表示を行えば、契約上何の問題も生じさせずに契約を解除して退職することができるのは当然の帰結といえます。

ですから、このように契約期間が「満了する日」をもって退職する意思表示を行った場合において、仮に会社がそれを拒否して就労を求めてきたとしても、そのような主張は一切無視して構いません。

どうしても使用者側が退職を認めないというのであれば、先ほどと同じように退職届(退職願)を郵送で送り付けるなどして、それに記載した退職日以降は出社しないようにすればよいでしょう。

(3)契約期間が「満了した後」に辞めさせてくれない場合

最後に、有期労働契約で働く労働者が契約期間が「満了した後」に退職する場合を検討しましょう。

契約期間が「満了した後」に退職する場合とは、当初の契約期間が満了する際に「契約更新の有無」の連絡がなかったことから労働者が引き続き従前の職場で働いていたものの、その契約期間が「満了した後」になって退職を申し出るような場合です。

たとえば、2018年の1月1日から「契約期間3年」で働き始めた場合は2020年の12月31日で契約期間が満了することになりますので、2020年12月31日の24時が到来するまでの間に会社から契約を更新するかしないか連絡が入るのが通常ですが、何らかの事情で会社がその連絡をしなかったことから労働者がそのまま2021年の1月1日以降も従前と同じ職場に出社して就労を継続したものの、2021年1月2日以降になって一方的に退職しようとするようなケースがこれに当たります。

このようなケースで労働者が一方的な意思表示で退職することができるかという点が問題となりますが、その退職は認められることになります。

なぜなら、このようなケースでは契約期間が満了した労働者と使用者(雇い主)との間に「黙示の更新」が成立することになるからです(民法629条1項)。

【民法629条1項.】

雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条.の規定により解約の申入れをすることができる。

この民法629条1項は、有期労働契約の契約期間が満了した場合に、労働者が引き続き従前の職場で働いていた場合において、使用者(雇い主)がその就労を黙認し異議を唱えないときは従前の雇用契約と同一の労働条件における契約の更新を黙示的に承認させる条文になります。

契約期間満了後も引き続き労働者が従前の職場で働き、使用者(雇い主)がそれに異議を唱えず黙認していたような場合には、その労働者は「契約は更新されてるのだろう」と考えるのが通常で、その期待を保護する必要がありますので、そのようなケースでは使用者が「黙示的に契約更新の承認を与えた」と考えて契約が更新されたことにしているわけです。

もっとも、この「黙示の更新」が適用された場合の更新後の契約は、従前の「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」ではなく「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」になりますので、その後に労働者が退職する場合は「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」の退職を規定した民法627条の規定によることになります。

この点、民法627条では退職予定日から2週間の予告期間を置きさえすればいつでも自由に退職することが認められています。

【民法第627条1項】
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

したがって、先ほど挙げた2020年の12月31日で契約期間が満了し、2021年1月1日以降も就労を継続した事実があるようなケースでは、2021年1月1日をもって「黙示の更新」があったことになり、その後の契約は「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」に変更されて更新されることになりますので、民法627条1項により退職日の2週間前までに退職届(退職願)を提出すれば、会社の承諾を得ずに自由に会社を辞めることが可能ということになるのです。

ですから、例えばこの場合で2021年1月1日以降も従前の職場で働き続けたものの「2021年の1月末日付けでやっぱり辞めよう」と思ったような場合であれば、退職希望日である2021年1月31日の2週間前となる2021年1月17日までに退職届(退職願)を提出しておけば、2021年1月31日付けで会社を辞めることができるということになります。

なお、この場合も会社が退職を認めない場合の対処法が問題となりますが、この場合もこれまでと同様にその退職を拒否する法律上および契約上の根拠を使用者側は有していませんから、退職届(退職願)を郵送で送付するなどして一方的に退職の意思表示を行っておけば問題なく退職することができるということになります。

ただし、この黙示の更新後の契約は「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」となりますので前述した(1)や(2)の場合と異なり退職日の2週間前までに退職届(退職願)を提出することが必要となりますので注意しましょう。

退職届の記載例

なお、退職届を使用者(雇い主)に郵送で送付する場合の記載例は以下のようなもので差し支えありません。

株式会社○○

代表取締役○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、△年△月△日をもって退職いたします。

以上

〇年〇月〇日

東京都〇区○○一丁目〇番〇号

○○ ○○ ㊞

内容証明郵便で送る場合は以下のような記載例になります。

退職届

私は、一身上の都合により、△年△月△日をもって退職いたします。

以上

○年○月○日

通知人

東京都〇区〇丁目〇番〇号
○○ ○○

被通知人

東京都〇区〇丁目〇番〇号
株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○

会社に確実に到達したことを客観的証拠として残しておくため、郵送する退職届(退職願)はコピーを取ったうえで普通郵便ではなく特定記録郵便などの郵送方法で送付しておく必要があります(※内容証明で送る場合は自動的に書留扱いになります)。
前述した(1)の(ア)(イ)(ウ)および(2)の場合は「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」の退職となりますので、法律上は退職日と退職届(退職願)の提出日の間に2週間の猶予期間を置く必要はありません。
そのため、上記の記載例の提出日である「〇年〇月〇日」の日付は退職希望日である「△年△月△日」と同一日であっても法的には差し支えありませんが、会社側の人員補充などの負担も考えて退職希望日の「△年△月△日」は提出日の「〇年〇月〇日」から2週間以上経過した後の日付を記載する方がよいと思います。
一方、前述した(3)の場合における退職は「黙示の更新」後の退職となり「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」の退職となりますので、上記の記載例の提出日である「〇年〇月〇日」の日付は退職希望日である「△年△月△日」から2週間以上「前」の日付を記入するようにしなければなりませんので注意してください。

退職届(退職願)は「退職する」という意思表示と退職を希望する「退職日」が記載されていれば足り、「退職する理由」を記載する必要はありません。「退職の理由」まで記載してしまうと、後で裁判になったような場合にその退職届(退職願)に記載した退職理由に縛られることになり裁判が不利になる場合もありますので、退職届(退職願)には上記のように完結に記載する方がよいと思います。
ただし、セクハラやパワハラなど会社都合の退職としたい場合は『自己都合退職にしないための退職届・退職願の記載例』を参照してください。

なお、弁護士や社労士、司法書士の資格を持たない人が作成したサイトでは、表題に「退職届」と記載するか「退職願」と記載するかで効果が異なるような説明をしているものが散見されますが、表題を「退職届」としても「退職願」としても退職の意思表示が会社側に到達したことには変わりありませんのでどちらを使用しても構いません。退職の意思表示は単に「退職する」との意思表示が使用者に「到達するか」という問題なので表題の文言は「退職届」でも「退職願」でも差異はありません。

辞めさせてくれないトラブルの具体的なトラブルごとの対処法

有期労働契約における「辞めさせてくれないトラブル」の解決方法としては、以上で説明したように退職届(退職願)を送り付けてその後は出社しないというのが一番簡単な対処法となります(※ただし「黙示の更新」後の退職の場合は退職希望日の2週間前までに退職届(退職願)を提出することが必要です)。

なお、実際に「辞めさせてくれないトラブル」に遭遇する場合は具体的なシチュエーションごとに対処法を考える必要もありますので、個別具体的なトラブルごとの解決法等については以下のそれぞれのケースごとのページを参考にしてください。