正当な理由がないと辞めさせないと退職を拒否された場合

勤務している会社を辞める際は退職届(退職願)に「一身上の都合により退職いたします…」などという一文を添えて退職の意思表示を行うのが通例ですが、上司などから「辞める理由はなんだ?」「正当な理由がないと辞めさせないぞ!」と言われて退職を妨害されるケースが散見されます。

会社を辞める人の退職理由は「他にいい仕事が見つかったから」とか「会社の人間関係が嫌だから」とか「仕事が性に合わない」といったものが圧倒的に多いと思いますが、そのような理由は主観的には「正当な理由」であっても第三者的目線に立って考えれば「正当な理由」に当たるのかは微妙です。

そのため、人員の流出を防ぎたい会社の一部では、退職に「正当な理由」を要求し、それを説明できない労働者の退職を事実上妨害して労働力の確保を図ろうとすることがあるのです。

では、このように退職に際して使用者(会社)側から退職に関する「正当な理由」を求められた場合、「正当な理由」がないと辞めることができないのでしょうか?

また、上司等から「正当な理由がないと辞めさせないぞ!」と言われ退職を拒否された場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか?

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労働者には「正当な理由」の有無にかかわらず退職することができる「退職の自由」が認められている

結論から言うと、仕事を辞めるのに「正当な理由」は必要ありませんので、上司や会社側から「正当な理由がない限り辞めさせないぞ!」などと言われて退職を拒否された場合であっても、そのような会社側の主張は無視して一方的に退職届(退職願)提出するなどして退職の意思表示を行えば法律上有効に退職することが可能です。

なぜなら、労働者には法律で「退職の自由」が保障されており、これらの法律は”強行法規”としてこれを労働者の不利益に制限することは認められないものと考えられていますし、仮にそのような法律がなくても、そもそも退職の意思を有する労働者に「正当な理由」を求めて退職を制限する行為自体が労働基準法5条の「強制労働の禁止」の規定に、ひいては憲法18条で保障された「奴隷的拘束の禁止」に違反することになるからです。

(1)「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」の場合

働く期間が「いつからいつまで」というように限定されず定年まで勤めあげることが前提となるいわゆる終身雇用として働く場合の雇用契約は「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」と呼ばれます。

一般に正社員などいわゆる正規雇用の労働者として雇い入れられる場合がこれに当たりますが、アルバイトやパートなどいわゆる非正規労働者であっても働く期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」というように限定されていない場合にはこの「期間の定めのない雇用契約」となります。

この「期間の定めの無い雇用契約」で働く労働者は、法律で退職希望日の2週間前までに退職の意思表示を行えば法律上有効に退職の効果を生じさせることが認められています(民法627条)。

【民法第627条1項】
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

そして、この民法627条の規定は憲法18条で保障された「奴隷的拘束の禁止」を具現化する法律として”強行法規”と解釈されており、労働者に不利益に制限を加えることはできませんから、使用者(会社)側で労働者の退職に「正当な理由」を求めることはできないものと考えられています。

【日本国憲法第18条】
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

つまり、法律上は憲法18条の「奴隷的拘束の禁止」の要請から、「期間の定めのない雇用契約」で働く労働者は「2週間の予告期間」さえ置けば「正当な理由」の有無に関係なく「いつでも」「自由に」退職する「退職の自由」が認められているということになるわけです。

したがって、会社との雇用契約が「期間の定めのない雇用契約」の場合には、たとえ会社側が「辞めるには正当な理由が必要だ!」として退職を拒んだ場合であっても、退職する労働者としては退職予定日の2週間前までに退職届(退職願)を提出するなどして退職の意思表示を行えば足り、「正当な理由」がなくても「いつでも」「自由に」退職することができるということになるのです。

もちろんこの場合は、法律で認められた規定に従って退職を申し出ていることになりますので、仮にその労働者が退職したことで会社に損害が発生したとしても、労働者にその損害を賠償をしなければならない責任は一切生じないことになります。

「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」の労働者が2週間の予告期間を置かずに退職する場合

この点、「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」で働く労働者が「2週間の予告期間」を「置かずに」退職した場合にその退職の効果がどうなるか、という点が問題となりますが、仮に労働者が民報627条1項に違反して2週間の予告期間を置かずに退職したとしても、その退職の効果は有効に生じることになります。

なぜなら、退職を希望する労働者の意思に反して、退職に「正当な理由が無い」ことを理由に労働者の退職を制限することは労働基準法5条で規定された「強制労働の禁止」に抵触することになるからです。

【労働基準法第5条】
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

ですから、たとえば「期間の定めのない雇用契約」で働く労働者が、ある日突然退職することを決意し、特段の「正当な理由」が一切ないにも関わらず退職日希望日の当日に上司に「本日をもって退職します」と記載された退職届(退職願)を提出し、実際にその翌日以降出社しなかったとしても、その労働者が「退職した」という効果は法律上有効に成立することになります。

もっとも、この場合には民法627条1項で規定された「2週間」という予告期間を置かずに使用者(会社)側の承諾なく退職していますので、仮にその労働者が退職したことで会社に何らかの損害が発生した場合には、その退職した労働者は契約違反として債務不履行責任(民法415条)を負い使用者(会社)側から損害賠償請求される余地は発生することになります。

【民法第415条】
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
もっとも、よほど会社で重要な職種にでもついていない限り、労働者が退職したことで会社に損害が発生するケースが実際に生じる可能性はほとんどないと思いますので、実際に2週間の予告期間を置かずに退職したとしても現実に会社からの損害賠償請求が認められるケースはほとんどないのではないかと思われます。

(2)「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」の場合

「期間の定めのある雇用契約」とは、働く期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」というように一定の期間に限定される雇用契約をいいます。

一般的にはアルバイトやパート、契約社員などいわゆる非正規労働者として雇い入れられる場合がこれに当たりますが、正社員として働く場合であっても契約に更新があったり働く期間が「いつからいつまで」というように一定の期間に定められている場合はこの「期間の定めのある雇用契約」となります。

この「期間の定めのある雇用契約」で労働者が雇い入れられた場合、その労働者は契約期間が満了するまでその使用者(雇い主)の下で労働力を提供しなければならない労働契約上の義務を負担していることになりますので、その契約期間が満了するまでは労働者の一存で一方的に退職することは制限されます(※契約期間満了前に退職した場合は雇用契約違反に基づく債務不履行責任(民法415条)として損害賠償債務を負担しなければならないことになります)。

もっとも、契約期間が満了した場合は契約上の義務をすべて履行していることになりますので、契約満了日をもって退職することは労働者の自由です。

契約満了日をもって退職する労働者は「正当な理由」の有無にかかわらず退職しても契約違反に問われる余地はないわけですから、契約満了日をもって退職する労働者が使用者(雇い主)から「正当な理由がないと辞めさせない」と言われたとしても、そのような主張は無視して一方的に退職することは可能なわけです。

なお、これは「期間の定めのある雇用契約」で働く労働者が契約期間が満了する「前」に退職する場合であっても変わりません。

なぜなら「期間の定めのある雇用契約」で働く労働者であっても「やむを得ない事由」がある場合(民法628条)か「契約期間の初日から1年が経過」した場合(労働基準法137条)には使用者の承諾を必要とせず「いつでも」「自由に」退職することが法律で認められているからです。

【民法第628条】
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
【労働基準法第137条】
期間の定めのある労働契約(中略)を締結した労働者(中略)は、(中略)民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
(※注釈:ただし厚労大臣が定める高度な専門的知識を有する労働者や満60歳以上の労働者は適用除外されています)
具体的にどのような事由が民法628条の「やむを得ない事由」に該当するかという点についてはこちらのページを参考にしてください→バイトや契約社員が契約期間内でも会社を辞められる3つのケース

これは、たとえ「期間の定めのある雇用契約」で働く労働者であっても「やむを得ない事由」があったり「契約期間の初日から1年が経過」した後にまで使用者の下で縛り付けておくことは先ほど説明した憲法18条の「奴隷的拘束の禁止」の要請上好ましくないからです。

雇用契約は労働者が一定期間その身体の自由を使用者(雇い主)に拘束されることを意味しますので、憲法18条で保障された「奴隷的拘束の禁止」の要請に鑑みると必要最小限に抑える必要があります。

そのため法律では「やむを得ない事由」がある場合と「契約期間の初日から1年が経過」した場合に労働者の一方的な意思表示による退職を認めているのです。

ですから、たとえ使用者(雇い主)が「正当な理由がないと辞めさせない」と言って来たとしても、「やむを得ない事由」か「契約期間の初日から1年が経過」した事実がありさえすれば「正当な事由」の有無にかかわらず、そのような主張は無視して退職して何ら問題ないことになるわけです。

「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で「やむを得ない事由」がなく、「契約期間の初日から1年が経過」していない場合

なお、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が契約期間の途中で退職する場合において、「やむを得ない事由」がなかったり、「契約期間の初日から1年が経過」していない場合に退職することができるのか、という点が問題となりますが、その場合であっても「退職すること」自体は可能です。

なぜなら、その場合であっても「正当な理由がない」として労働者の退職を制限することは、憲法18条の「奴隷的拘束の禁止」が具現化された法律である労働基準法5条の「強制労働の禁止」の趣旨から認められないからです。

「期間の定めのある雇用契約」で働く労働者が「やむを得ない事由」が「無く」、「契約期間の初日から1年が経過」する「前」に退職した場合は民法628条や労働基準法137条の要件を満たさない状態で退職することになりますので、その退職した労働者は雇用契約違反となり債務不履行責任(民法415条)を負担しなければなりません。

しかし、その場合であっても労働者の「退職の自由」は憲法18条や労働基準法5条の規定の要請によって保障されることになりますから、「期間の定めのある雇用契約」で働く労働者が「やむを得ない事由」が「無く」、「契約期間の初日から1年が経過」する「前」に退職する場合であっても使用者(雇い主)はいかなる手段を用いても労働者の「退職の自由」を制限することはできません。

したがって、仮に「やむを得ない事由」が「無く」、「契約期間の初日から1年が経過」する「前」に退職しようとした労働者が、使用者(雇い主)から「正当な理由がないと辞めさせない」と言われたとしてもそのような使用者の主張は無視して一方的に退職すること自体はできるということになります。

もっとも、先ほど説明したように、この場合には法律で認められた例外(民法628条、労働基準法137条)規定の要件を満たさないで会社の承諾もなしに辞めることになるわけですから、使用者(雇い主)側から契約違反として債務不履行責任(民法415条)に基づく損害賠償請求される余地があることは甘受しなければならないことになります。

ただし、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者はいわゆる非正規労働者として雇われているのが通常で、非正規労働者が会社の重要な仕事を任されることはほとんどないと思いますから、仮に「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が契約に違反して、「やむを得ない事由」もなく、契約期間の初日から1年を経過していないにもかかわらずやめた場合であったとしても、その退職によって会社に損害が発生することは常識的に考えてあり得ませんので、そのことで会社から実際に損害賠償請求される可能性はほとんどないのではないかと思います。

「正当な理由がない限り退職しない」旨の誓約書を差し入れていた場合でも退職することができる

なお、以上の結論は、仮に労働者が使用者(雇い主)に対して「正当な理由がない限り退職いたしません」などと記載された誓約書等にサインしていた場合であっても同じです。

これまで述べたように、労働者に保障された「退職の自由(民法627条,同628条,労働基準法137条)は憲法18条で保障された「奴隷的拘束の禁止」から要請されるもので”強行法規”と言えますから、これを労働者にとって不利益に制限する当事者間の合意は「無効」であり、そういった「無効」な合意を根拠に労働者の退職を妨害することは強制労働の禁止」を規定した労働基準法5条に違反することになります。

ですから、たとえそういった誓約書に署名捺印していたとしても、そのような誓約は「無効」と考えて差し支えありませんので、使用者(雇い主)の「正当な理由がない限り辞めさせない」というような主張は一切無視して一方的に退職届(退職願)を提出するなどして退職の意思表示を行って退職しても全く問題無いということになります。

「正当な理由」が「ない」ことを理由に退職を拒否された場合の対処法

以上で説明したように、労働者には法律で「退職の自由」が認められており、労働者の退職を制限することは憲法18条の「奴隷的拘束の禁止」の保障から導かれる「強制労働の禁止(労働基準法5条)」の趣旨から認められませんから、使用者(雇い主)から「正当な理由がないと辞めさせない」と言われて退職を拒否された場合であっても、「正当な理由」の有無にかかわらず、労働者の一方的な意思表示によって退職することは可能といえます。

ただし、先ほども説明したように「期間の定めのない雇用契約」で2週間の予告期間を置かずに退職する場合、「期間の定めのある雇用契約」で「やむを得ない事由がない」のに契約期間の途中で退職する場合、同じく「期間の定めのある雇用契約」で「契約期間の初日から1年が経過する前」に退職する場合には、使用者(雇い主)の許可なく一方的に退職することはできますが、契約違反として債務不履行責任(民法415条)としての損害賠償請求を受ける可能性があります。

もっとも、そうはいってもブラック体質を持った会社ではそのような法的な考え方など無視して「正当な理由がない」という理由で退職届(退職願)の受け取りを拒否したり、労働者の退職を認めず執拗に就労を強要するケースも見られますので、そういった場合には以下のような具体的な方法を用いて対処する必要があります。

(1)郵送で退職届(退職願)を送り付ける

使用者(雇い主)側が「正当な理由」が「無い」という理由で退職届(退職願)の受け取りを拒否するような場合は、作成した退職届(退職願)を郵送で会社に送り付けて退職の効力が発生した日以降は出社しないようにするのも一つの対処法として有効です。

退職は「退職します」と口頭で通知するか、もしくは退職届(退職願)を提出し、その意思表示が受理権限のある者に到達した時点で有効に成立しますので、仮に退職届(退職願)の受け取りを拒否されたとしても退職の効果は法律上有効に発生することになります。

しかし、後に裁判になった場合に会社側が「退職届(退職願)は受け取っていない」などと反論してきた場合は労働者側で「退職届(退職願)を提出した」ということを立証しなければなりませんから、会社側が退職届(退職願)の受け取りを拒否しているようなケースでは「退職届(退職願)を提出した」という事実の証拠が残らない”手渡し”よりも、客観的な証拠の残る”郵送”で送付しておく方が無難です。

具体的には、提出する退職届(退職願)のコピーを取ったうえで特定記録郵便など「配達された」という記録が残される郵送方法で送付しておけば問題ありませんが、将来的に裁判に発展することが確実なケースでは内容証明郵便で退職届(退職願)を送り付ける方が無難かもしれません。

なお、この場合に提出する退職届(退職願)は以下のようなもので差し支えありません。

【退職届(退職願)の記載例】


株式会社○○

代表取締役○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、△年△月△日をもって退職いたします。

以上

〇年〇月〇日

東京都〇区○○一丁目〇番〇号

○○ ○○ ㊞


※会社との雇用契約が「期間の定めのない雇用契約」である場合は、退職届(退職願)が会社に到達した日から2週間後の日付を退職日とする必要がありますので、退職予定日となる「△年△月△日」は、この退職届(退職願)が会社に配達される日から2週間経過後の日付にする必要があります(※郵便局の窓口で配達日を確認し、その日から2週間が経過した日以降の日付を退職日とする必要がありますので、退職希望日となる「△年△月△日」には退職届(退職願)の作成日である「〇年〇月〇日」から2週間+2~3日後の日付を記載しておく必要があります)
※会社との雇用契約が「期間の定めのある雇用契約」の場合は「やむを得ない事由」がある場合か「契約期間の初日から1年を経過した後」であれば退職の意思表示が会社側に到達したその時点で退職の効果を生じさせることができますので、退職希望日となる「△年△月△日」には、この退職届(退職願)が会社に配達される日付もしくはその日付以降の日付を記載しておく必要があります(※郵便局の窓口で配達日を確認し、その配達日かその配達日以降の日付を「退職日」として「△年△月△日」の部分に記載する必要があります)が、「本書面到達日をもって退職いたします」でもよいと思います。

(2)労働基準監督署に対して労働基準法違反の申告を行う

先ほども説明したように、法律で労働者に「退職の自由(民法627条,同628条,労働基準法137条)」が認められており、「強制労働の禁止(労働基準法5条)」や「奴隷的拘束の禁止(憲法18条)」が保障されている以上、労働者が退職する際に「正当な理由」は必要ありませんから、「正当な理由」の有無にかかわらず退職届(退職願)を提出するなどして退職の意思表示を行えば問題なく退職することは可能です。

そのため、それでもなお「正当な理由」にこだわって退職を認めず労働者の退職を妨害するような会社があれば、その会社は労働者に対して法律上(または契約上)の根拠なく労働を強制しているということも言えますので、その会社は強制労働の禁止を規定した労働基準法第5条に違反することになることから、労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行うことが可能になるものと考えられます(労働基準法第104条1項)。

【労働基準法第5条】
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
【労働基準法第104条1項】
事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行い、監督署から勧告等が出されれば、会社の方でも退職に際して「正当な理由」を求める行為を止める可能性もありますので、退職届(退職願)を提出した後も会社側が退職を拒絶し就労を強要する場合には労働基準監督署への申告も考えた方がよいのではないかと思います。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する労基法違反の申告書は、以下のような文面で差し支えないと思います。

【労働基準法104条1項に基づく労基法違反に関する申告書の記載例】


労働基準法違反に関する申告書

(労働基準法第104条1項に基づく)

○年〇月〇日

○○ 労働基準監督署長 殿

申告者
郵便〒:***-****
住 所:東京都〇〇区○○一丁目〇番〇号○○マンション〇号室
氏 名:申告 太郎
電 話:080-****-****

違反者
郵便〒:***-****
所在地:東京都〇区〇丁目〇番〇号
名 称:株式会社○○
代表者:代表取締役 ○○ ○○

申告者と違反者の関係
入社日:〇年〇月〇日
契 約:期間の定めのない雇用契約
役 職:特になし
職 種:製造

労働基準法第104条1項に基づく申告
申告者は、違反者における下記労働基準法等に違反する行為につき、適切な調査及び監督権限の行使を求めます。

関係する労働基準法等の条項等
労働基準法第5条

違反者が労働基準法等に違反する具体的な事実等
・申告者は〇年〇月〇日に上司である◆◆に2週間後の◇月◇日をもって「一身上の都合」により退職する旨記載した退職届を提出したが、違反者は「辞める理由はなんだ」「正当な理由がないと辞めさせないぞ」と主張し、申告者の退職届の受け取りを拒否した。
・申告者は当該上司に対し法律(民法627条)では労働者の退職に正当な理由は必要ないことを説明して理解を求めたが、違反者は「うちの会社では正当な理由がない限り退職は認めないんだ」の一点張りで退職を認めようとしない。
・そのため申告者は〇年〇月〇日付けで作成した退職届を特定記録郵便で違反者に送付し(当該退職届は同年〇月〇日に違反者に配達されている)退職希望日の◇月◇日以降、出社しないようにしたが、違反者は申告者の自宅に押し掛けるなどしていまだに復職を迫っている。

添付書類等
1.〇年〇月〇日に上司の◆◆に提出した退職届の写し 1通
2.〇年〇月〇日付けで特定記録郵便で送付した退職届の写し 1通

備考
特になし。

以上


なお、会社側に労働基準監督署に法律違反の申告をしたことを知られたくない場合は「備考」の欄に「本件申告をしたことが違反者に知れると更なる被害を受ける恐れがあるため違反者には申告者の氏名等を公表しないよう求める。」の一文を挿入してください。

(3)その他の対処法

以上の方法でも解決しない場合には、労働局に紛争解決援助の申し立てを行ったり、自治体や労働委員会の「あっせん」を利用したり、弁護士会と司法書士会が主催するADRを利用することも検討する必要があります。

また、案件によっては弁護士や司法書士に個別に依頼して裁判手続きで解決を図る必要がありますので、自力での解決が困難であることがわかった時点で早めに弁護士や司法書士に相談するよう心掛けてください。

なお、これらの対処法を取る場合の具体的な相談場所等についてはこちらのページでまとめていますので参考にしてください。

▶ 労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは