災害などによる解雇で解雇予告手当が支払われない場合の対処法

スポンサーリンク

災害などいわゆる天災事変の影響で勤務先の会社(雇い主が個人事業主の場合も含む)の事業継続が不可能になり、やむを得ず会社から解雇を言い渡されてしまう場合があります。

このような解雇の場合、勤務先の会社は事業継続が不可能になったことを理由に従業員を解雇するのですから、それは不可抗力ともいえるものですので、多くの場合、その会社は解雇予告手当を支払わずに即日解雇することが多いと思います。

しかし、いくら災害などの天災事変が生じたとしても、解雇される労働者は解雇された時点で仕事を失うわけですから、次の日から収入を全く失うことになることを考えても30日分の平均賃金にあたる解雇予告手当ぐらいは会社から支給されてしかるべきであるとも思えます。

では、災害など天災事変その他やむを得ない事由で会社の事業継続が不可能になったことを理由にある日突然、解雇予告も解雇予告手当の支払いもないまま即日解雇された場合、会社に対して30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いを求めることはできないのでしょうか。

スポンサーリンク

災害などによる解雇だからといって解雇が必ずしも有効になるわけではない

前述したように、災害など天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になったという理由で従業員を解雇してしまう会社(個人事業主の雇い主も含む)があるわけですが、そのような理由で解雇された労働者がまず覚えておかなければならないのが、災害など天災事変その他やむを得ない事由があったからといって必ずしも使用者の解雇が許されるわけではないという点です。

解雇については労働契約法第16条に規定されていますが、そこでは使用者が労働者を解雇する場合に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件を定めています。

【労働契約法第16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

この要件は使用者が労働者を解雇する場合に絶対的に必要とされる法律上の要件ですから、たとえ災害など天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合であっても、この「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件は必ず存在しなければなりません。

つまり、仮に「災害など天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ような事実が現実に発生したとしても、ただそれだけで労働者の解雇が認められるわけではなく、その災害等の事実を理由に解雇することに「客観的合理的な理由」があると判断できる場合でなければなりませんし、その理由で解雇することに「社会通念上の相当性」があると判断できる場合でなければ、その解雇自体が無効と判断されることになるのです。

仮に会社の解雇が無効と判断される場合には、たとえ会社が「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」状態にあったとしても、解雇された労働者は解雇の無効を主張して会社に対して復職を求めたり、解雇日以降復職が認められるまでの賃金の支払いを請求できることになります。

ですから、災害等を理由に解雇されてしまった場合には、解雇予告手当の支払いを請求する前に、まずその解雇自体が有効なのか(具体的にはその解雇が「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2つの要件を満たしているか)という点を十分に検討しなければならないのです。

なお、具体的にどのような事案でその解雇に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」があったと判断できるかという点については、『整理解雇の四要件とは(不況・経営不振による解雇の判断基準)』のページでさらに詳しく解説しています。

災害などによる解雇であっても解雇予告手当の支払いを請求できる場合がある

労働契約法第16条に照らして検討して災害等を理由にした解雇が有効だと判断できる場合、また解雇された労働者が解雇の効力自体を争わない場合は、解雇した会社に対して解雇予告手当の請求ができないか検討しましょう。

ただし、解雇予告手当の請求はあくまでも解雇自体の効力を争わない(解雇自体は受け入れる)ことが前提です。仮に解雇が労働契約法第16条に照らして無効であるにもかかわらず解雇予告手当の請求をしてしまうと「無効な解雇を追認した」と判断されて解雇の無効を主張することが難しくなってしまいますので注意しましょう。

さて、会社から解雇された場合に解雇予告手当の支払いがない場合は、まず解雇予告手当の請求ができないかという点を検討するわけですが、解雇予告手当については労働基準法第20条に規定されていますので、まずは条文を確認しましょう。

【労働基準法第20条】

第1項 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
第2項 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
第3項 前条第2項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

労働基準法第20条はこのように労働者を解雇する使用者に対して30日前の解雇予告と解雇予告をしない場合(または解雇予告期間を短縮する場合)の解雇予告手当(30日に不足する日数分の平均賃金)の支払いを義務付けていますが、第1項の但し書きで「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合」と「労働者の責めに帰すべき事由(懲戒解雇など)」に基づく解雇などの場合には、その支払いを免除しています。

つまり、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に労働者を解雇する場合には、30日の解雇予告期間を省略して即日解雇しても、解雇予告手当を支払わなくて良いことになっているわけです。

そうすると、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に解雇された場合には、会社に対して解雇予告手当の支払いを請求できないようにも思えますが、それは間違いです。

なぜなら、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に労働者を解雇する場合において30日の予告期間に不足する日数分の平均賃金の支払い(解雇予告手当)の支払いを省略する使用者は、必ず労働基準監督署の認定を受けなければならないからです。

確かに、労働基準法第20条1項但書では「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に労働者を解雇する使用者に30日前の解雇予告をしないことや30日に不足する日数分の平均賃金の支払いをしないことを認めていますが、その場合には同条第3項で準用する前条第2項、つまり労働基準法第19条第2項に規定された「行政官庁の認定」を受けることが要件とされています。

【労働基準法第19条】

第1項 使用者は…(中略)…30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が…(中略)…又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
第2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

つまり、使用者が「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に労働者を解雇する場合に、30日前の解雇予告や30日間の平均賃金の支払いを省略する場合には、事前に労働基準監督署において「天災事変その他やむを得ない事由」の存在について認定を受けておかなければならないのです。

仮に使用者がその労働基準監督署の認定を受けていないのなら、その使用者は労働基準法第20条第3項に違反して解雇予告を省略したということになりますから、その行為自体が労働基準法第20条第1項違法となりますので、労働基準法第20条第1項但書は適用されず、原則に立ち戻って労働基準法第20条第1項に基づいて30日前の解雇予告を行うか、即日解雇する場合には30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

ですから、仮に「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に即日解雇された場合に、解雇予告手当の支払いがなかったとしても、それが必ずしも許されるわけではなく、会社が労働基準監督署の認定を受けていない場合には、会社に対して30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払えと請求できるということになるのです。

災害などによる解雇で解雇予告手当が支払われない場合の対処法

以上のように、仮に「災害など天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に即日解雇された場合であっても、その「天災事変その他やむを得ない事由」のあったことに関して会社が労働基準監督署の認定を受けていない場合には、解雇した会社に対して「30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払え」と請求できることになります。

もっとも、実際に災害などで即日解雇され解雇予告手当も支払われない場合には、労働者の方で具体的な対処を取らなければなりません。その場合の対処法としては以下の方法が考えられます。

(1)会社が労働基準監督署の認定を受けたか確認する

勤務先の会社から「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった」ことを理由に即日解雇された場合には、まずその会社が労働基準監督署の認定を受けたか確認するようにしてください。

仮に労働基準監督署の認定を受けていない場合には、その認定がないことを理由に会社に対して解雇予告手当の支払いを請求できるからです。

なお、会社が労働基準監督署の認定を受けたか否か確認する具体的な方法については『災害等による解雇で労働基準監督署の認定を受けたか確認する方法』のページで詳しく解説しています。