退職届・退職願の退職日と提出日はいつの日付けを記載すべきか

勤務している会社を退職する場合、上司などに退職届(または退職願)を提出して退職の意思表示を行うのが通常です。

もちろん、退職はたんに「意思表示」の問題にすぎませんから、口頭で「〇月〇日に辞めます!」と告知するだけでも退職としての効果は有効に成立するわけですが、口頭で告知しただけでは記録として残しておくことができません。

その結果、後になって「言った、言わない」の水掛け論になってトラブルになったりしても問題ですし、会社の事務処理上も退職の意思表示がなされたという客観的記録が残っておく方が望ましいという側面もあることから、一般社会では退職届(または退職願)などの「書面」で意思表示することが通例となっているわけです。

ところで、このように退職する際に退職届(または退職願)の提出が社会常識的に求められるとはいっても、いざ労働者がその退職届(または退職願)を作成する場合、その日付けを具体的にいつの日付けにすればよいかわからないことも多いようです。

例えば、「来月の月末いっぱいで会社を辞めたい!」と思っても、提出しようとする退職届(または退職願)の「提出日」や「退職日(退職予定日)」に具体的に何月何日の日付を記載すればよいか分からない、といった具合です。

では、実際に退職届(または退職願)を作成する場合、その書面に記載すべき日付けは具体的にいつの日付けを記載すればよいのでしょうか。

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退職届(または退職願)の記載例

退職届(または退職願)に具体的にいつの日付けを記載すればよいかという点を考える前提として、そもそも退職届(または退職願)の文面すらわからない人もいるかもしれませんので、念のため実際に提出する場合の退職届(または退職願)のひな型を挙げておきます。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたします。

以上

△年△月△日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

退職届(または退職願)を作成する上での注意点

なお、退職届(または退職願)は単に「退職する」という意思表示を行うための手段に過ぎませんので、「退職する」という文言とその退職する日の「日付け」だけを記載すれば足ります。

一般的に退職届(または退職願)では「一身上の都合により」という文言を挿入するのが常識となっていますが、本来はこの文言さえも不要です。

特に、「一身上の都合により」という文言は通常、自身の意思で能動的に退職する場合、つまり自己都合退職する場合に使用するのが一般的ですので、たとえばハラスメントや会社の違法行為等、会社側に責任ある行為で仕方なく退職する場合は「一身上の都合により」という文言は記入しないようにしなければなりません。

会社の違法行為を理由に退職する場合に「一身上の都合により」と記載してしまうと「自己都合退職」として処理されてしまうことになり、失業保険給付が退職日から3か月たたないと支給されなくなったり不都合を受けることがあるからです。

ですから、会社側の違法行為を理由に退職する場合は「一身上の都合により」の部分は削除して単に「私は、〇月〇日をもって退職いたします。」と記載してください。

退職届(または退職願)の日付けは具体的に「いつ」の日付けを記載するか

前置きはこの程度にして、本題に戻りましょう。退職届(または退職願)の日付けを具体的に「いつ」の日付で記入するかという点です。

この点、退職届(または退職願)の日付けの記載については、その労働者が会社(個人事業主も含む)との間でどのような雇用契約を結んでいるか、つまり正社員に代表される「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」として雇い入れられているのか、それともアルバイトやパートなどに代表される「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」として雇い入れられているのかという点で異なりますので、以下それぞれ別個に解説することにいたします。

(1)「期間の定めのない雇用契約」として雇い入れられていた場合

正社員など、いわゆる終身雇用を前提として雇用される場合は、契約期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」というように一定期間に限定されずに雇用されることが多いですが、このように働く期間が限定されていない雇用契約は「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」と呼ばれます。

労働者がこのような「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」で雇用されている場合、その労働者は退職希望日の2週間前までに退職の意思表示をすることにより「いつでも自由に」退職することが民法第627条1項で認められていますから、労働者が退職の意思表示をする場合も、退職希望日と退職の意思表示日との間に2週間以上の期間があれば法的には問題ないということになります。

【民法第627条1項】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

たとえば、6月末日で退職したいというのであれば、退職届(または退職願)を提出する日付けとその退職日である6月30日との間に14日間の期間が空いていればよいわけですから、6月16日以前の日付を記載すればよいということになります。

ですから、このようなケースで提出する退職届(または退職願)は以下のようなものになります。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、20XX年6月30日をもって退職いたします。

以上

20XX年6月16日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

もちろん、退職日の6月30日から2週間以上期間を空ければよいだけですから、たとえば6月10日に退職届(または退職願)を提出するというのであれば以下のように提出日を6月10日と記載しても問題ありません。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、20XX年6月30日をもって退職いたします。

以上

20XX年6月10日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

(2)アルバイト・パート・契約社員などとして雇い入れられていた場合

一方、アルバイトやパート、契約社員など働く期間を「〇年〇月から〇年〇月まで」というように一定の期間に限定されて雇い入れられている場合は会社(個人事業主も含む)との契約は「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」となります。

このような「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」では、その契約期間が満了する「前」に退職する場合と、契約期間が満了する「満了日」に退職する場合とで異なりますので、それぞれ別個に解説します。

ア)契約期間が満了する「前」に退職する場合

このような「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者はその契約期間が満了するまではその会社で働くことを約束していることになりますので、その契約期間が終了するまでは自分の意思だけで退職することは契約上認められません。契約の相手型となる会社側もその契約期間が満了するまでは働いてくれるだろうと考えて採用しているため、その会社側の利益も考えなければならないからです。

もし仮にこの「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が契約期間が満了する前に退職した場合、その労働者は雇用契約の債務不履行として契約違反の責任が生じ損害賠償請求の対象となりますから、その契約期間満了前に退職したことで会社に何らかの損害が発生した場合はその損害を賠償しなければならなくなってしまうでしょう(※ただし、アルバイト等が期間満了前に退職しても通常は会社に損害が発生することはないので実際に損害賠償される可能性はほぼありませんが…)。

もっとも、このような「期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)」で働いている労働者が契約期間が満了する「前」に退職しても契約違反にならない場合が3つだけあります。以下の3つのケースです。

  • 3年を超える有期雇用契約で3年を超えて働いている場合
  • やむを得ない事由がある場合
  • 契約期間の初日から1年を経過した場合

以上のケースでなぜ契約期間が満了する「前」に退職しても契約違反の責任が生じないかという点については『バイトや契約社員が契約期間内でも会社を辞められる3つのケース』のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしていただきたいのですが、この場合に(1)の「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」と異なるのは、労働者が即日に辞めることも認められるという点です。

先ほどの(1)で説明した「期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)」の場合は退職日から「2週間前」までに退職の意思表示をしなければいけませんでしたが、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が契約期間の「前」に退職する場合はその「2週間」という期間は必要ありません。それを強制する法律がないからです。

ではなぜ「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」の労働者が契約期間の満了「前」に退職する際に「2週間」の猶予期間が必要とされていないかというと、「2週間の猶予期間」を必要としてしまうと労働者に不利益を及ぼしてしまうからです。

バイトや契約社員が契約期間内でも会社を辞められる3つのケース』のページでも説明したように、有期労働契約は通常は3年が上限となっていますから、その上限を超えて働かせられている労働者は法律の上限を超えて違法に働かせられていることになりますので、2週間の猶予期間を与えずに「即日」辞めることを認めてあげないと労働者にとって酷な結果となってしまいます。

また「やむを得ない事由」がある場合も労働者は「やむを得ない事由」があるからこそ契約期間満了前に辞めるわけですから、そのような労働者に2週間の猶予期間を強制するのはナンセンスで「即日」の退職を認めなければならないでしょう。

「契約期間の初日から1年が経過した後」の労働者についても、1年間勤務すれば有期労働契約の責任は果たしたということで労働者の保護のために契約期間満了前の退職を認めているわけですから、そのような労働者になお猶予期間をおかなければならない理由もないので「2週間」という猶予期間は置かれていないわけです。

ですから、このように「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が、契約違反の責任が生じない状況において契約期間が満了する「前」に退職する場合には、退職希望日と退職届(または退職願)の提出日は、極端に言うと同日でも差し支えありませんので、例えば先ほどの例のように6月30日で退職したい場合であれば、以下の記載例のように同日の日付を記載しても構わないことになります。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、20XX年6月30日をもって退職いたします。

以上

20XX年6月30日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

もっとも、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」でその契約期間が満了する「前」に退職ができる場合であっても、その日に言われてその日に退職されてしまっては会社側としても困りますので、退職したくなった時点で早めに会社にその意思を伝えるようにして、会社が困惑してしまわないように配慮することは求められると言えるでしょう。

ですから、たとえば2020年の1月1日から2年契約で働き始めた労働者が契約期間が満了する2020年の12月31日付けで「契約期間の初日から1年が経過した」ことを理由に退職する場合に、その退職する意思が12月10日の時点で確定しているという場合には、以下のように12月10日を提出日として退職届(または退職願)を提出するように心がけた方がよいかもしれません(※もちろん提出日を12月31日にして即日に提出して辞めても法律上は問題ありません)。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、2020年12月31日をもって退職いたします。

以上

2020年12月10日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

イ)契約期間が満了する「満了日」に退職する場合

「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で契約期間が満了する「満了日」をもって退職するようなケースでは、その「満了日の日付」を退職日として記載すればよく、提出日はいつでも構いません。極端に言うと提出日は「ア」の場合と同じように即日でも構わないことになります。

ですから、たとえば2020年の1月1日から2年契約で働き始めて契約期間の2年が満了する2021年の12月31日で退職するというようなケースでは以下のような記載例でも構わないということになります。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、2021年12月31日をもって退職いたします。

以上

2021年12月31日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

ただし、この場合も会社側としてはなるべく早く退職届(または退職願)をもらっておきたいと思うのが通常ですので、ある程度余裕をもった日付け、たとえば12月15日に提出するというのであれば以下のような記載をして15日までに提出すべきであろうと思います。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、一身上の都合により、2020年12月31日をもって退職いたします。

以上

2020年12月15日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

もっとも、「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で契約期間が満了する時点で退職する場合は、会社との間で契約を更新するかしないか事前に話し合いをして決めるのが通常ですし、有期労働契約の場合において使用者が契約の更新をしない場合(雇止めする場合)は契約期間が満了する1か月前までに使用者から労働者に対して雇止めの予告をすることが義務付けられていることから(労基法14条2項に基づく告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」)、契約期間満了時には退職届(または退職願)の提出を求めずに退職関係の書類にサインさせるだけのところもありますので、その場合には退職届(または退職願)の提出はそもそも不要かもしれません。

会社側と話し合って日付を決めるのが望ましい

退職届(または退職願)における「退職日」と「提出日」の具体的な日付けの記載方法は以上ですが、上記はあくまでも「法律的にはこのような記載でもかまいませんよ」という意味に過ぎません。

実際に退職する場合はほとんどの労働者が円満退社を希望すると思いますので、退職届(または退職願)を作成する場合は日付を空欄のまま作成し、上司などと話し合いをして合意できた日付を記入するなど会社側に過度の負担を与えないように配慮することも必要です。

もちろん、ブラック体質を持った会社からのがれるために退職する場合はその必要はありませんが。