採用面接で求職者の病気に関する質問は採用差別にならないのか

(1)その企業への応募を取りやめる

採用面接で過去の病歴や現在罹患している病気等を質問された場合において、その質問に合理的な理由がないと判断できる場合には、その会社への就職を取りやめるというのも選択肢の一つとして考えられます。

前述したように、そのような病気に関する質問は合理的な理由があれば格別、そうでなければ採用差別(就職差別)につながる恐れがあるものであり職業安定法上の違法性を指摘することもできるものですから、そうした問題を考えずに病気の確認をしていること自体がその企業の倫理意識や法令遵守意識の欠落を推認させます。

そうであれば、仮にその会社から内定をもらって就職したとしても、いずれ何らかの労働トラブルに巻き込まれるのは容易に想像できますから、将来のリスクを考えれば他のまともな会社を探す方が無難です。

ですから、合理的な理由もなく病気に関する質問を受けた場合には、その会社に就職すること自体を考え直しても良いと思います。

(2)病気に関する質問が採用差別(就職差別)や職業安定法上の違法性を惹起させることを説明してみる

採用面接で病気に関する質問を受けた場合には、その面接官や採用担当者にその差別性・違法性を指摘してみるというのも一つの対応として考えられます。

もちろん、採用面接で企業側の差別性や違法性を指摘してしまえば面接官や人事担当者の機嫌をそこねてしまうので不採用にされてしまうかもしれませんが、それを指摘することでその企業が採用面接における質問事項を改善するのであれば、社会から採用差別や違法行為を一つ無くすことができるからです。

その質問の差別性や違法性の可能性を指摘することに社会的な意義はあると言えますから、 その会社から採用をもらえなくても良いと思うのであれば、 苦言を呈してみるのもよいのではないかと思います。

(3)採用面接で病気に関する質問を受けた事実をハローワークに申告(相談)してみる

採用面接で合理的な理由もなく病気に関する質問を受けた場合には、その事実をハローワークに申告(相談)してみることを考えてもよいかもしれません。

先ほどから説明しているように、採用面接で病気に関する質問をすることは採用差別(就職差別)につながるものとして厚生労働省の指針でも注意喚起されていますが、その指針の指導はハローワークがになっていますのでハローワークに申告(相談)することで情報提供の一つとして受理されてもらえれば、以後の指導などに役立ててもらえるかもしれないからです。

また、病気に関する質問は職業安定法における「求職者等の個人情報の取り扱い」規定に抵触する可能性も指摘できますが、企業(その他職業紹介業社や派遣事業者等も含む)の職業安定法違反行為について厚生労働大臣は、その業務の運営を改善させるために必要な措置を講ずべきことを命じることができ(職業安定法第48条の3第1項)、その厚生労働大臣の命令に企業が違反した場合には「6月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰の対象とすることも可能です(職業安定法第65条第7号)。

職業安定法第48条の3第1項

厚生労働大臣は、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者又は労働者供給事業者が、その業務に関しこの法律の規定又はこれに基づく命令の規定に違反した場合において、当該業務の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、これらの者に対し、当該業務の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

職業安定法第65条第7号

次の各号のいずれかに該当する者は、これを6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
第1号∼6号(中略)
第7号 第48条の3第1項の規定による命令に違反した者

そうであれば、ハローワークに申告(相談)し、その監督権限の行使を促すことで、行政から出される指導や勧告などによってその企業の採用面接における差別を誘発する質問や法律で許容された範囲を超える個人情報の収集が改善されることも期待できるかもしれません。

ですから、採用面接で合理的な理由もなく病気に関する質問を受けた場合には、とりあえずその事実をハローワークに申告(相談)してみるというのも選択肢の一つとして考えてよいのではないかと思います。

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その他の対処法

これら以外の対処法としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、労働局の紛争解決援助の手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用する方法が考えられます。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは