採用面接で信仰や宗教を質問する企業に就職差別を指摘できるか

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採用面接で信仰や宗教に関する質問をしてしまう面接官や人事担当者がごく稀にいるようです。

たとえば、採用面接の席上で「入信している宗教はあるか」などと聞いたり、「○○教についてどう思うか」などと信仰に対する意見を聞くようなケースがそれです。

しかし、このような信仰や宗教に関する事項は本人の適性や能力とは関係がありませんから、それを聞くこと自体合理的な理由がないようにも思えます。

では、採用面接で信仰や宗教について尋ねるのは問題とならないのでしょうか。

また、実際の採用面接の場で宗教や信仰について聞かれた場合、応募者はどのように対応すればよいよいのでしょうか。

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採用面接における信仰や宗教に関する質問は採用差別(就職差別)につながる

このように、採用面接の場で宗教や信仰に関する質問をする面接官や人事担当者がいるわけですが、結論から言えばこのような質問は採用差別(就職差別)につながります。

なぜなら、信仰や宗教は本来的に個人の自由に委ねられるものであって他者からの干渉がなされてはならないものですし、そもそも本人の適性や能力とは関係がありませんから、それが採否の判断とされてしまえば、特定の宗教感を持っている応募者だけが採用選考から排除されることにつながり、応募者の「就職の機会均等」が損なわれることになるからです。

日本は自由主義経済を採用していますので「契約自由の原則」から企業には「採用の自由」が保障されることになりますが、だからと言ってその自由が際限なく認められるわけではありません。

憲法は国民の基本的人権を保障していますから、応募者の「職業選択の自由(憲法22条)」や「法の下の平等(憲法14条)」あるいは「信教の自由(憲法20条)」など人権を不当に制限する採用活動は許されないからです。

ですから、企業に「採用の自由」が認められるとしても、それは応募者の人権保障の枠内で許されるものに過ぎませんので、応募者の「就職の機会均等」が損なわれるような採用選考は認められないわけです。

そうであれば、採用面接で信仰や宗教に関する質問をすることは許容されません。

それを許容してしまえば、特定の宗教や信仰を持つ就職希望者だけが採用面接で不採用の判断を下されることになり、本来自由で他者からの干渉が排除されるはず「信教の自由」が侵害されるだけでなく、その宗教や信仰を持つ人だけが就職の機会を取り上げられることになり「就職の機会均等」が損なわれてしまうからです。

憲法が保障した「職業選択の自由(憲法22条)」や「法の下の平等(憲法14条)」「信教の自由(憲法20条)」などの人権を尊重するためには、宗教や信仰にかかわらず平等に就職の機会が与えられなければなりませんから、採用面接で信仰や宗教に関する質問を行い、それを採否の判断に用いること自体が差別につながります。

ですから、採用面接で信仰や宗教に関する質問をすること自体が採用差別(就職差別)につながるとの指摘ができることになるわけです。

企業側に差別の意図がなかったとしても採用面接で信仰や宗教に関する質問をすることは採用差別(就職差別)につながる

この点、企業側に差別の意図がないのならたとえ採用面接で信仰や宗教に関する質問が行われても採用差別(就職差別)につながらないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、企業側の意図にかかわらず差別につながります。

なぜなら、企業側の意図がなくても、宗教や信仰について質問してしまえば、その情報が少なからぬ予断や偏見を生む可能性を惹起させるからです。

いったん面接官や人事担当者が信仰や宗教について聞いてしまえば、差別する意図がなかったとしてもその応募者の信仰や宗教に関する情報を完全に排除して採否の判断をするのは事実上困難になってしまうでしょう。

また、求職者が社会的に評価されていない宗教や信仰を持つ場合、面接で信仰や宗教に関する質問を受けること自体が大きなストレスとなりますから、そうした質問が心理的な負担となって本来の力を発揮できないことになれば、特定の宗教や信仰を持つ受験者だけが面接で不利益を被ることになり「就職の機会均等」が損なわれる結果となってしまいます。

このように、仮に企業側に差別の意図がなかったとしても、採用面接で信仰や宗教に関する質問をすること自体が採用差別(就職差別)を惹起させることにつながるわけですから、企業側の認識に関係なく、本来的にそのような質問はすべきではないと言えるのです。

厚生労働省の指針でも宗教や信仰に関する質問が採用差別(就職差別)につながるとして注意喚起されている

なお、採用面接における信仰や宗教に関する質問が採用差別(就職差別)につながることは厚生労働省の指針(※参考→https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo.htm)でも注意喚起されていますので念のため引用しておきましょう。

「宗教」「支持政党」「人生観・生活信条など」「尊敬する人物」「思想」「労働組合(加入状況は活動歴など)」「学生運動などの社会運動」「購読新聞・雑誌・愛読書」など、思想・信条にかかわることを採否の判断基準とすることは、憲法上の「思想の自由(第19条)」「信教の自由(第20条)」などの精神に反することになります。思想・信条にかかわることは、憲法に保障された本来自由であるべき事項であり、それを採用選考に持ち込まないようにすることが必要です。

※出典:公正な採用選考を目指して|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/dl/saiyo-01.pdfより引用

採用面接で信仰や宗教に関する質問をすることは職業安定法の「求職者等の個人情報の取り扱い」規定に抵触する可能性がある

以上で説明したように、採用面接で信仰や宗教に関する質問をすることは採用差別(就職差別)につながる問題を指摘できますが、これとは別に職業安定法で義務付けられた「求職者等の個人情報の取り扱い」規定に抵触する問題も指摘できます。

職業安定法第5条の4では、求職者の個人情報については「その業務の目的の達成に必要な範囲内で収集・保管し使用すること」と規定されていますので、企業が採用活動において「業務の目的の達成に必要な範囲」を超える応募者の個人情報を収集し保管することは、そもそも法律で禁止されていることになります。

職業安定法第5条の4

第1項 公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者(中略)は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(中略)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
第2項 公共職業安定所等は、求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。

そうであれば、求職者の信仰や宗教は個人の能力や適性に関係しませんから、その企業の「業務の目的達成に必要な範囲」を超えた情報となりますので、それを質問すること自体この職業安定法上の違法性を惹起させることにつながります。

ですから、この職業安定法上の違法性を考えてみても、採用面接で信仰や宗教に関する質問をすることは許されるものではないと言えるのです。

採用面接で信仰や宗教に関する質問を受けた場合の対処法

以上で説明したように、採用面接で信仰や宗教に関する質問をすることは採用差別(就職差別)につながるだけでなく職業安定法の「求職者等の個人情報の取り扱い」にも違反する可能性がありますから、そもそもあってはならないものであるということが言えます。

もっとも、実際の採用面接の場でそうした質問がなされれば、求職者の側で何らかの対応を取らなければなりませんのでその場合に取り得る対応が問題となります。