採用面接で本籍地記載の住民票の提示を求められた場合の対処法

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採用面接の際、本籍地の記載された住民票の提示や提出を求める会社があります。

しかし、本籍地がどこにあるかは業務には関係ないのでそれが記載された住民票の提示は必要ないようにも思えます。

また、本人確認資料として住民票が必要だとしても、採用面接の段階でそれが必要な理由も不明ですから、そもそも採用面接の段階で住民票の提示(または提出)を求める行為自体もその必要性がわかりません。

では、このように本籍地記載の住民票の提示や提出を求める会社の意図はどこにあるのでしょうか。

また、実際に採用面接の際に本籍地の記載された住民票の提示や提出を求められた場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか。

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採用面接で住民票の提示(提出)を求める会社の意図はどこにあるか

このように、採用面接で本籍地の記載された住民票の提示や提出を求める企業があるわけですが、その意図はどこにあるのでしょうか。

この点、その意図は主に次の2つがあると考えられます。

(1)本籍地を確認したい(被差別部落差別のため)

まず考えられるのが、被差別部落出身者を差別する意図です。

かつて日本では特定の地域を出身地とする人を部落民として差別する風潮がありましたが(同和問題)、そのような被差別部落出身者を差別する思想を持つ経営者や役職者のいる会社では、被差別部落出身者か否かを本籍地で確認するために、本籍地記載の住民票の提示を求めるケースがあります。

つまり、被差別部落出身者を差別して排除するために、あえて本籍地が記載された住民票の提示または提出を求めているケースが考えられます。

(2)従来からの慣行で特に意味はない

もう一つ考えられるのが、本籍地記載の住民票の提示や提出を求めていることに特段の意図はなく、たた従来の慣行に従ってその提示を求めているに過ぎないケースです。

かつての日本では戸籍謄抄本によって労働者の身元確認を行っていた慣行がありますから、その古い慣行をそのまま受け継いでいる会社だったり、古い考え方を持つ経営者や役職者がいる会社では、何の疑念も抱かずに採用の際に本籍地の確認をしてしまうことがあります。

このような会社では、単に慣行に従って本籍地記載の住民票の提示や提出を求めているだけなので、そこに差別的な意識や意図はありません。ただ何も考えず事務的に本籍地記載の住民票の提示や提出を求めているだけということになります。

採用面接で本籍地が記載された住民票の提示や提出を求めることは採用差別(就職差別)につながる

このように、採用面接で本籍地が記載された住民票の提示や提出を求める企業の意図は2つに分類されると考えられますが、たとえ差別の意図がなく慣行で行われているとしても、その行為は採用差別(就職差別)につながります。

なぜなら、たとえ企業側に差別の意図がなくても、その収集した本籍地の情報が同和関係者の差別を招く恐れを生じさせますし、本籍地を確認すること自体が差別を受けてきた同和関係者への心理的な負担となり得るからです。

仮に企業側に被差別部落出身者を差別の意図がなくても、本籍地の記載された住民票の提示や提出を求めてしまえばその本籍地の情報は企業側に把握されることになりますから、面接官や人事担当者の思想如何によってはそれが差別に用いられる危険性が生じてしまいます。

また、差別の意図がなくても、本籍地を確認された求職者にとってはその情報が収集された事実自体が大きな心理的な負担となり、面接で本来の力を発揮できなくなってしまう恐れも生じてしまうでしょう。

このように、本籍地が被差別部落出身者の差別に用いられてきた歴史を踏まえれば、その情報を収集すること自体が差別に直結する行為になるわけですから、その意図がなかったとしても、その行為自体に採用差別(就職差別)が包含されるということが言えるのです。

企業側の「採用の自由」は公共の福祉の枠内で保障されるもの

この点、企業側に「採用の自由」があることから、どの本籍地の求職者を採用するかの判断はもっぱら企業側の自由意思に委ねられるべきだという意見があるかもしれません。

しかし「採用の自由」も無制約なものではなく、職業選択の自由(憲法22条)や法の下の平等(憲法14条)など国民の基本的人権を制限してまでそれが許されるものではありません。

ですから、企業側に「採用の自由」が認められるとしても、求職者の「就職の機会均等」を損なうような採用基準や採否の判断は許されてよいものではないのです。

この点、本籍地は求職者本人の能力や適性とは全く関係のない属性ですから、それを理由に採否を決定するというのであれば、それは本人の能力や適性とは関係のない要素でその労働者を排除することになりますからそれは合理的な理由のない差別であって「就職の機会均等」を損なう採用差別(就職差別)に他なりません。

ですから、企業側に「採用の自由」を考えても、本籍地の記載された住民票の提示や提出を求める行為は、採用差別(就職差別)につながるものとして許容されるべきではないのです。

厚生労働省の指針も採用面接における本籍地記載の住民票の提示・提出を求めないよう指導している

なお、採用面接で本籍地が記載された住民票の提示や提出を求めないことは厚生労働省の指針(※参考→https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo.htm)でも述べられていますので、それを無視する企業があれば、その行為自体が違法性を帯びる要素となり得ます。

人を雇う際に「戸籍謄(抄)本の提出」を求めるなどによって「本籍」を調べる習慣は、我が国の資本主義発達段階の初期において、身元を確認するための手段として生まれたものだと言われています。その後、この習慣は踏襲され続け、今となっては何のためにこれを求めるのか明確でないのに従来からの慣行として事務的に求めている場合があります。

しかしながら、この本籍・戸籍謄(抄)本というものは、同和関係者であることなどを理由とした差別に用いられたり偏見を招くおそれのあるものであるということや、それが把握されることによって多くの人々を不安にさせているということについて、深く認識する必要があります。「本籍によって差別するつもりはなく、特に必要性はないけれども事務的に戸籍謄(抄)本の提出を求めた」では済まされないことについてご理解ください。本籍が記載された「住民票(写し)」も、考え方は「戸籍謄(抄)本」と同様です。

※出典:公正な採用選考を目指して|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/dl/saiyo-01.pdfより引用

採用面接で本籍地が記載された住民票の提示や提出を求められた場合の対処法

以上で説明したように、採用面接で本籍地が記載された住民票の提示や提出を求める行為は採用差別(就職差別)につながりますから、そもそも採用面接の場においてそのような要求をすべきではありません。

しかし、実際に求職者が採用面接で本籍地が記載された住民票の提示や提出を求められた場合には、求職者の側でそれへの対応を迫られますので、その場合にどのように対処すれば良いかが問題となります。