業務上の必要性がない配置転換・転勤を命じられた場合の対処法

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会社で働いていると職種の変更(配属先の変更)や勤務地の変更(いわゆる転勤)といった配置転換(配転)を命じられることがありますが、業務上の必要がないのに会社から配転を命じられてしまうという類のトラブルを聞くことがあります。

たとえば、閉鎖が決まっている支店に合理的な理由なく転勤させられたり、技術職の新規募集がかけられているにもかかわらず技術職で働く既存の社員が技術職から営業職に配置換えさせられるようなケースです。

このような業務上の必要性のない配置転換(配転)の命令を受けた場合、その配転命令を断ることはできないのでしょうか。

また、実際にそのような業務上の必要性のない配転命令を受けた場合、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか。

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業務上の必要性のない配転(配置転換)の例

勤務先の会社から配転(配置転換)を命じられた場合に、その配転命令に業務上の必要性があるかないかは容易に判断できるわけではありませんが、以下のようなケースでは業務上の必要性がないと判断されるのが一般的です。

ア)閉鎖が決定している支店や工場への転勤

たとえば、東京本社で勤務している会社員が閉鎖が決定している大阪支店に転勤を命じられるようなケースは業務上の必要性のない配転命令といえるでしょう。

大阪支店が閉鎖されることが決定されているのであれば、大阪支店という職場自体が近い将来に消滅してしまいますので、常識的に考えて大阪支店に新たな人材を補充しなければならない合理的な理由はないと考えられるからです。

イ)廃止が決定している業務への配置転換

たとえば、社内の組織変更で品質管理部門の外部委託が決定されているにもかかわらず、営業職から品質管理部門への職種変更を伴う配置転換が命じられる場合には、その配転命令は業務上の必要性がない配転といえます。

品質管理部門の外部委託が決定しているのであれば、あえて営業職の従業員を品質管理職に職種変更させてまで移動させなければならない合理的な理由はないと考えられるからです。

ウ)新規の従業員を募集しながら既存の従業員を他部署に移動させる配置転換

たとえば、本社で新規採用の募集をかけているにもかかわらず、本社で勤務している従業員を工場に転勤させるようなケースは業務上の必要性のない配転といえるでしょう。

このようなケースでは、工場で人員が不足しているのであれば本社で新規採用しなくても工場の方で新規従業員を募集すれば済むからです。本社から工場に従業員を転勤させているにもかかわらず本社で新たな従業員を募集する必然性はありませんから、その本社から工場への配置転換は業務上の必要性がない配転と判断されることになるでしょう。

エ)リストラを行っている部署に異動を命じる配転

たとえば、大阪支店でリストラや希望退職者の募集が行われているにもかかわらず、東京本社に勤務する労働者が大阪支店への転勤を命じられるような配転は業務上の必要性のない配転といえます。

大阪支店で人員が必要であれば、大阪支店のリストラや希望退職者の募集を停止すればよいだけであって東京本社に勤務する労働者をあえて大阪支店に転勤させなければならない合理的理由は存在しないからです。

オ)その他

以上のほかにも、業務上の必要性がない配転と言える配置転換は様々なケースがあると思いますので、上記のア~エ以外のケースでも業務上の必要性があるのかという点を個別に検討してみる必要があります。

業務上の必要性がない配転命令は権利の濫用として労働者の一存で自由に一方的に拒否することができる

以上のように、業務上の必要性がない配転命令を勤務先の会社から命じられるケースがあるわけですが、このような業務上の必要性がない配転命令については、労働者の一存で自由に一方的意思表示によって拒否することが可能です。

なぜなら、使用者(雇い主)はその雇い入れた労働者に対して雇用契約(労働契約)で合意した範囲で業務上の命令を強制させることができますが、その命令はあくまでもその合意した労働契約を遵守したうえで信義に従い誠実に行わなければならないからです(労働契約法第3条4項)。

【労働契約法第3条4項】

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

業務上の必要性がない配転命令は、労働者と合意した労働契約の範囲内の命令であったとしても信義に従った誠実な権利行使とは言えません。そのような合理的必要性のない命令は労働契約で認められた雇用契約上の権利を濫用した命令として違法性を帯びてくるからです(労働契約法第3条5項)。

【労働契約法第3条5項】

労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

ですから、業務上の必要性がない配転命令については、労働者の一存で自由に一方的に拒否できると考えられているのです。

(1)業務上の必要性のない配転は雇用契約(労働契約)で会社の配転命令権が明記されている場合でも拒否することができる

このように、業務上の必要性がない配転命令を会社から命じられたとしても労働者は自由にその一存で断ることが可能です。

なお、これは仮に会社との間で合意した雇用契約(労働契約)や会社の就業規則などで会社の配転命令権が明記されている場合であっても拒否できるということを意味します。

会社との間で取り交わした雇用契約(労働契約)や就業規則、労働協約等に使用者(雇い主)の配転命令権が明記されている場合は労働者は使用者からの配転命令を拒否することができないのが基本ですが(※詳細は→人事異動における配転命令(配置転換・転勤)は拒否できるか)、そのような配転命令権が使用者に与えられていてもその権利を濫用する配転命令権の行使は認められませんので、業務上の必要性がない配転命令は無効ということになります。

(2)業務上の必要性のない配転は職種や勤務地の限定の有無にかかわらず拒否することができる

また、これは職種や勤務地の限定がなされていない場合であっても同じです。

職種や勤務地の限定がなされていない雇用契約(労働契約)では、基本的に労働者は会社からの配置転換を拒否できませんが(※詳細は→人事異動における配転命令(配置転換・転勤)は拒否できるか)、そのような配転命令権が使用者に与えられていてもその権利を濫用する配転命令権の行使は認められませんので、業務上の必要性がない配転命令は無効ということになります。

業務上の必要性のない配置転換(配転)を命じられた場合の対処法

以上で説明したように、仮に勤務先の会社から雇用契約(労働契約)の範囲内で配置転換(職種や勤務地の変更)を命じられたとしても、その配転命令が業務上の必要性のないものである場合には、労働者の一存で自由に一方的に拒否することが可能といえます。

もちろん、労働者が自由に拒否することができるのですから、その場合の労働者は正当な理由の有無にかかわらず配転命令を拒否することができるということになるのです。

もっとも、このような法解釈をすべての会社が理解しているわけではありませんので、会社によっては業務上の必要性がない配転命令を労働者に強制するケースが少なからず見受けられますので、労働者が実際にそのような業務上の必要性がない配転命令を受けた場合には、具体的な行動をとって対処することが求められます。

(1)業務上の必要性がない配転命令に拘束力がないことを通知する書面を作成し会社に送付する

勤務先の会社から業務上の必要性がない配転命令を受けた場合には、その業務上の必要性のない配置転換が雇用契約(労働契約)で会社に与えられた配転命令権を濫用するものであることを通知する文書を作成し会社に送付するというのも一つの解決方法として有効です。

口頭で「業務上の必要性のない配置転換に応じなければならない雇用契約(労働契約)上の義務はない」と抗議して応じない会社でも、書面で改めてその不当性を指摘すれば事の重大性に気付いて命令を撤回する会社もありますので、書面という形で正式に抗議することも比較的重要だからです。

なお、その場合の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

○○株式会社

代表取締役 ○○ ○○ 殿

業務上の必要性のない配転命令の撤回申入書

私は、〇年〇月に貴社に入社して以来、営業職として貴社の本社営業所に勤務しておりますが、〇年〇月〇日、直属の上司である○○(課長)から、来月から八王子配送センターへの転勤に関する配置転換の打診を受けました。

この転勤に関して私は、八王子配送センターに移動する意思が全くなかったことからこの配転命令を拒否する旨明確に伝えていますが、○○からは「社内会議で決まったことだから拒否することはできない」と説明され、事実上、来月から八王子配送センターへの転勤が決定されているものと認識しております。

しかしながら貴社は、先月からハローワークにおいて本社勤務の営業職の新規採用を募集している一方で、八王子配送センターでは従業員の募集をかけていません。

この点、八王子配送センターで人員不足が生じているのであれば本社の営業職を新規採用せずに八王子配送センターで新規採用の募集をかければ足りるのであって、本社の営業職として勤務する私をあえて八王子配送センターに移動させたうえで本社の営業職を新規採用しなければならない合理的理由は存在しないといえます。

したがって、貴社の私に対する八王子配送センターへの配転命令は、業務上の必要性のない配転命令権を濫用したものであり、労働契約法第3条5項の規定から無効といえますから、当該配転命令を直ちに撤回するよう、本状をもって申入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

会社に送付する前に証拠として残すため必ずコピーを取っておき、相手方に「到達した」という客観的証拠を残しておく必要があるため、普通郵便ではなく特定記録郵便など客観的記録の残る方法を用いて郵送すること。

(2)その他の対処法

以上の通知書を送る方法を用いても会社がなお業務上の必要性のない配転命令を強要しようとする場合は、労働局の紛争解決援助の申し立てを行ったり、労働委員会の主催する”あっせん”の手続きを利用したり、弁護士や司法書士に相談して裁判所の裁判手続などを利用して解決する必要がありますが、それらの方法については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

(3)労働基準監督署に相談して解決できるか

なお、このように業務上の必要性のない配転命令を強要されるというトラブルについて労働基準監督署に相談して解決できるかという点が問題になりますが、そのようなトラブルについては労働基準監督署は積極的に介入してくれないのが通常です。

労働基準監督署は基本的に「労働基準法」という法律に違反する事業主を監督する機関ですから、労働基準法で禁止している行為を会社が行っている場合だけしか行政機関としての監督権限を行使できないからです。

「業務上の必要性のない配転命令の強制」という行為自体は労働基準法で禁止されている行為ではなく、雇用契約(労働契約)に違反する行為にすぎませんので、監督署は直接介入したくても法的な権限がないので介入することができません。

ですから、このようなトラブルについては労働基準監督署ではなく労働局の紛争解決手続や労働委員会の”あっせん”の手続を利用するのがまず考えられる適当な対処法になると考えた方がよいでしょう。