リストラの必要性がないのに解雇されたときの対処法

このような会社では人員削減の必要性があるどころか新規事業や新規事業の展開のためにむしろ人員が必要なはずですから、こういった事実が見受けられるケースではたとえ整理解雇されたとしても「人員削減の必要性がない」と判断されることが多いのではないかと思います。

ですから、会社から整理解雇された場合は、その会社で事業を拡大させる取り組み等がなされていないかという点もチェックする必要があります。

もっとも、以上はあくまでも代表的な例に過ぎず、これら以外にも「人員削減の必要性はない」と判断されるケースはあると思いますので、具体的な案件では弁護士に相談するなどして助言を受けることも必要です。
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リストラ(人員削減)の必要性のない整理解雇の対処法

このように、人員削減の必要性がない整理解雇は整理解雇の四要件(四要素)を満たさないことから労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がないと判断される結果、権利の濫用として無効と判断することも可能と言えます。

この点、そのような「人員削減の必要性がない」と判断できる無効な整理解雇を受けた場合に労働者が具体的にどのように対処すればよいかという点が問題となりますが、一般的には以下のような方法で対処することになろうかと思われます。

(1)リストラ(人員削減)の必要性のない整理解雇が無効である旨記載した書面を送付する

勤務先の会社から「人員削減の必要性がない」と判断できる整理解雇を受けた場合には、その解雇が権利の濫用として無効であることを記載した書面を作成し通知書という形で会社に送付してみるのも一つの対処法として有効な場合があります。

先ほど説明したように、人員削減の必要性のない整理解雇は整理解雇の四要件(四要素)を満たさず労働契約法第16条の「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を満たさない権利を濫用するものとして無効と判断できますが、そもそも人員削減の必要性がないにもかかわらず労働者を解雇する会社がまともな会社なはずがありませんので、その理屈を会社に説明したとしても会社が解雇の撤回に応じる可能性はほとんどないかもしれません。

しかし、書面という形にして文書でその権利の濫用性を指摘すれば、将来的な訴訟への発展などを警戒して態度を改め、解雇を撤回することも期待できますから書面で通知してみる価値はあると言えます。

なお、この場合に会社に送付する通知書の文面は以下のようなもので差し支えないと思います。

株式会社 ○○

代表取締役 ○○ ○○ 殿

人員削減の必要性のない整理解雇の無効確認および撤回申入書

私は、〇年〇月〇日、貴社から、同月末日をもって解雇する旨記載された解雇予告通知書の交付を受けました。

この解雇に至った理由について上司の○○に説明を求めたところ、今年度に入って売り上げが減少し収支の安定化を図るため人員削減の必要性が生じたため、リストラの一環として全社員の1割にあたる〇名の整理解雇を実施することになった旨の回答がなされております。

しかしながら、貴社においては来年度も新卒学生の採用が例年通り行われることが決定されているようですし、また現時点においてもハローワークで中途採用者の求人が出されていますから、貴社において人員削減の必要性があるとは思えません。

この点、解雇に関しては労働契約法第16条の規定から客観的合理的理由と社会通念上の相当性の両方が必要となりますが、人員削減の必要性がないのであればそもそも整理解雇の必要性も存在しないと評価できますので、貴社において人員削減のために労働者を解雇しなければならない客観的合理的な理由は存在しないと言えます。

したがって、貴社の私に対して行った整理解雇は労働契約法第16条の要件を満たさず、権利の濫用として無効ですから、直ちに当該解雇を撤回するよう申し入れいたします。

以上

〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号○○マンション〇号室

○○ ○○ ㊞

※実際に送付する場合は会社に通知が到達した証拠を残しておくため、コピーを取ったうえで普通郵便ではなく特定記録郵便など配達記録の残される郵送方法を用いて送付するようにしてください。

(2)その他の対処法

上記のような書面を通知しても会社が整理解雇を撤回しないような場合は、労働局の紛争解決援助の申し立てを行ったり、労働委員会の主催する”あっせん”の手続きを利用したり、弁護士や司法書士に相談して裁判所の裁判手続などを利用して解決する必要がありますが、それらの方法については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

(3)リストラの無効を労働基準監督署に相談して解決できるか

なお、このような不当な整理解雇が行われた場合に労働基準監督署に相談することで解決を図ることができるかという点が問題となりますが、このような解雇に関する問題については労働基準監督署は積極的に介入しないのが普通です。

なぜなら、労働基準監督署は「労働基準法」やそれに関連する命令等に違反する事業主を監督する機関であり、労働基準法に規定のない違法行為や契約違反行為については行政権限を行使することができないからです。

不当解雇に関しては先ほど説明したように労働契約法にはそれを禁止する規定がありますが、労働基準法で禁止される行為ではありませんので、解雇に関しては労働基準監督署に相談しても対処は望めないのが一般的です。

ですから、このような案件に関しては、弁護士に相談して示談交渉や訴訟を利用するか、労働局の紛争解決手続きや都道府県労働委員会のあっせん手続きを利用して解決を図るしかないと思います。