面接での政治やデモ、気候変動に関する質問は採用差別になるか

(1)その会社への就職を取りやめる

採用面接の場で支持政党やデモへの参加歴、気候変動など社会問題に関する知見を聞かれた場合には、その会社への就職を取りやめるのも一つの選択肢として考えられます。

先ほど説明したように、そのような思想・信条にかかわる質問はそもそも採用差別(就職差別)につながるおそれのあるものであって厚生労働省の指針でも否定的に指導されているわけですから、そのような問題に無頓着にその質問をする企業があるとすれば、人権意識が低い会社であることが推認されるでしょう。

そうであれば、そのような会社に就職してもいずれ何らかの労働トラブルに巻きこまれることが容易に予想できますので、将来的なリスクを考えれば他のまともな会社を探す方が賢明です。

ですから、そうした質問を受けた場合には、その会社への就職を取りやめることも考えてよいように思います。

(2)政治思想や社会運動に関する質問が採用差別(就職差別)につながる危険性を指摘してみる

採用面接の場で支持政党やデモへの参加歴など思想・信条にかかわる事項の質問を受けた場合には、それが採用差別(就職差別)につながるおそれがあることを指摘してみるのも選択肢の一つとして挙げられます。

そうした質問を受けた場合に、先ほど挙げた厚生労働省の指針を提示するなどしてその質問が惹起する問題点を指摘すれば、企業側が差別性に気付くことで差別的な採用面接が改善されることも期待できるからです。

もちろん実際にそうすれば企業側の機嫌を損ねて不採用になるでしょうが、社会から違法性を帯びる採用面接を一つ無くすことができると考えれば、その差別性を指摘してみる社会的な意義はあります。

ですから、その会社への就職を取りやめても良いと考えるのであれば、厚生労働省の指針などを参考に差別性を指摘してみるのも良いと思います。

(3)支持政党やデモへの参加歴などを聞かれた事実をハローワークに申告(相談)してみる

採用面接で支持政党やデモへの参加歴、気候変動など社会問題に関する見解などを聞かれた場合には、その事実をハローワークに申告(相談)してみるというのも、対処法の一つとして考えられます。

前述したように、思想・信条にかかわる質問は採用差別(就職差別)につながるものとして厚生労働省の指針でも否定的に指導されていますが、厚生労働省の指針の指導機関はハローワークとなりますので、ハローワークにその事実を申告(相談)すれば、情報提供として受け付けてもらえるはずです。

また、仮にその採用面接がハローワークから紹介を受けた会社のものである場合には、厚生労働省の指針に反する面接があったものとしてハローワークから厚生労働省の指針に沿うような面接を行うよう指導などがなされる可能性も期待できます。

もちろんそれで不採用の結果が採用に覆ることはないかもしれませんが、採用差別(就職差別)につながる面接を社会から一つ無くすことができる可能性がある点において社会的な意義はあると言えます。

ですから、もし仮に採用面接で思想信条に関する質問をされた場合は、その事実をハローワークに申告(相談)することも考えてよいかもしれません。

(4)労働局の紛争解決援助の手続きを利用してみる

採用面接で支持政党やデモへの参加歴、気候変動など社会問題に関する見解を聞かれた末に不採用になった場合には、労働局が主催する紛争解決援助の手続きを利用してみるのも一つの選択肢として考えられます。

労働局では労働者と事業主との間で紛争が発生した場合にその紛争解決を図る紛争解決援助の手続きを用意していますが、この手続きは雇用契約が締結される前の段階の募集や採用の際に発生したトラブルについても利用することができますので、採用面接で採用差別(就職差別)につながる質問がなされて不採用になったようなケースでもその解決を委ねることが可能です。

この紛争解決援助の手続きに法的な拘束力はありませんので、会社側が手続きへの参加を拒否するようなケースでは解決は図れませんが、会社側が手続きに参加するのであれば労働局から出される助言や指導に会社が従うことで、採用面接の際に行われた思想信条に関する質問の非を認めて謝罪がなされたり、ケースによっては採用差別(就職差別)があったことを認めて不採用の判断が覆られて内定が受けられる可能性もあるかもしれません。

ですから、採用面接で支持政党やデモへの参加歴などを聞かれて不採用になり、それに納得できない場合には、とりあえず労働局に相談して紛争解決援助の手続きを利用できないか検討してみるのも選択肢の一つとして考えても良いように思います。

なお、労働局の紛争解決援助の手続きの詳細は『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説していますので参考にして下さい。

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その他の対処法

これら以外の対処法としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用する方法が考えられます。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは

ただし、このようなケースで裁判などしても「採用面接で政治思想や社会運動に関する事項を質問すること」自体を禁止する法律がありませんので、裁判上でその行為自体の違法性が認定されるか否かは判断が難しいかもしれません。

裁判などをしたとしても採用差別(就職差別)を理由に慰謝料などの請求が認められるかは難しいかもしれませんのである程度の割り切りは必要かもしれません。