面接での政治やデモ、気候変動に関する質問は採用差別になるか

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採用面接で、政治や社会運動(デモなど)、気候変動問題に関する見解を尋ねられるケースがごく稀にあるようです。

例えば、採用面接の場で面接官や人事担当者から支持政党を聞かれたり、デモに参加したことがあるかなどを聞かれたり、気候変動問題に関する政府の姿勢をどう考えるかなどその見解を尋ねられるようなケースです。

しかし、政治や社会運動などに対する見解や姿勢は、業務に関する適性や能力とは関係がないはずですから、そのような業務と無関係な内容な要素を採否の判断にするのは合理的な理由がないように思えます。

では、採用面接の場で政治や社会運動(デモ等)、気候変動などに関する質問をすることは許容されているのでしょうか。

また、そのような質問を受けた場合、求職者は具体的にどのような対処を取ることができるのでしょうか。

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採用面接における政治や社会運動(デモ等)、気候変動などに関する質問は採用差別(就職差別)につながるおそれがある

このように、採用面接の場で面接官や人事担当者が、求職者の政治思想(支持政党など)や社会運動に関する姿勢(デモに参加したことがあるかなど)、あるいは気候変動などに関する考え方などについて質問するケースがあるわけですが、結論から言えばこのような質問は採用差別(就職差別)につながる可能性を指摘できます。

なぜなら、そのような個人の思想信条に関係する事項は憲法で保障された基本的人権の問題でもあり個人の自由に委ねられるべきものですから、それを採否の判断基準とすれば、個人の思想信条によって差別が生じることになり、求職者の「就職の機会均等」が損なわれることになり得るからです。

企業には「採用の自由」が認められていますから、企業がどのような思想を持つ労働者を募集し採用するかはもっぱら企業側の自由意思に委ねられるべきとも考えられます。

しかし、その「採用の自由」も公共の福祉の範囲で許されるものに過ぎませんから、国民の基本的人権を制限してまで無制約にその自由が許されるわけではありません。

憲法は職業選択の自由(憲法22条)や法の下の平等(憲法14条)などを保障していますから、それら基本的人権を制限してまで「採用の自由」が無制限に許されるわけではないのです。

この点、憲法は19条で「思想及び良心の自由」を保障していますから、個人がどのような政治思想を持ち、どのような社会運動に関心を示し、気候変動などについてどのような見解を持つかも個人の自由に委ねられなければなりません。

どのような思想信条を持つかは個人の自由として保証されなければなりませんから、特定の政治思想や信条を持っていることをもって、いかなる差別的取扱いも受けることがあってはならないのです。

しかし、採用面接において思想信条に関する事項で採否が決定されるなら、その特定の思想信条を持っているために採用が受けられない事態が生じることになりますが、それは思想信条を理由にした差別となりますので、思想信条にかかわる事項で求職者の「就職の機会均等」が損なわれる結果となってしまいます。

ですから、採用面接で政治(支持政党など)や社会運動(デモなど)への関心、気候変動などについての知見を質問することは、採用差別(就職差別)につながる恐れがあると言えるのです。

企業側に差別の意図がなくても採用差別(就職差別)につながり得る

なお、企業側に差別の意図がないのなら思想信条に関する質問も許されるのではないかと考える人もいるようですが、企業側の意図にかかわらず、思想信条に関する質問は採用差別(就職差別)につながる恐れを否定できません。

仮に面接官や人事担当者に、その質問した政治思想や社会運動に対する見解などを採否の判断に使う意図がなかったとしても、その求職者の思想信条をいったん聞いてしまえば、その情報を全く聞かなかったことにして判断することはできないからです。

いったん聞いてしまえば、それは面接官や人事担当者の心象に何らかの影響を与え、それが予断や偏見となり得ますから、当人にその意思がなくても影響を排除することは不可能でしょう(影響を排除したいのならそもそも最初から聞くべきではありません)。

ですから、企業側に差別の意図がなかったとしても、政治思想や社会運動にかかわる事項など求職者の思想信条に関する質問はすべきではないのです。

なお、労働基準法第3条は「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と規定して労働者の均等待遇を義務付けていますが、労働基準法は労働契約が締結されていることが前提となっていますので、この規定を根拠に採用面接における思想信条を理由とした採用差別(就職差別)の違法性を直接的に問うことは難しいものと考えられます。

厚生労働省の指針でも個人の思想・信条に関する質問は控えるよう指導されている

なお、以上の点は厚生労働省の指針(※参考→https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo.htm)でも述べられていますので、念のため引用しておきましょう。

「宗教」「支持政党」「人生観・生活信条など」「尊敬する人物」「思想」「労働組合(加入状況は活動歴など)」「学生運動などの社会運動」「購読新聞・雑誌・愛読書」など、思想・信条にかかわることを採否の判断基準とすることは、憲法上の「思想の自由(第19条)」「信教の自由(第20条)」などの精神に反することになります。思想・信条にかかわることは、憲法に保障された本来自由であるべき事項であり、それを採用選考に持ち込まないようにすることが必要です。

※出典:公正な採用選考を目指して|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/dl/saiyo-01.pdfより引用

採用面接で支持政党やデモへの参加、気候変動などについての見解などを聞かれた場合の対処法

以上で説明したように、採用面接の場において支持政党やデモへの参加歴、あるいは気候変動等の社会問題についてどのような見解を持っているかなど質問する行為は、採用差別(就職差別)にあたる可能性がありますので、本来的に考えれば、そのような質問がなされるべきではありません。

もっとも、実際の採用面接の場でそのような質問を受けた場合には、求職者の側でどう対処するか考えなければなりませんので、その場合に取り得る選択手段が問題となります。