採用面接で結婚観や欲しい子の数などの質問は採用差別と言えるか

(1)その会社への就職を取りやめる

採用面接で結婚観や家族観を聞かれた場合には、その会社への就職を止めて他の会社を探す方が賢明かもしれません。

前述したように、そのような質問は採用差別(就職差別)や職業安定法違反の問題を惹起させますから、本来であれば許されない質問です。

それにもかかわらず、それを承知で、あるいはそれを知らずにそのような質問をしているということは、そもそも倫理観が欠落しているか、そもそも法令遵守意識の低い会社であることが推測できますので、そのような会社から内定を受けたとしても、いずれ何らかの労働トラブルに巻き込まれる蓋然性は非常に高いと思われます。

そんな会社に就職しても将来的なリスクを抱えるだけですから、早々に辞退して他の会社を探すことも考えてよいと思います。

(2)結婚観や家族観を聞くことが採用差別(就職差別)や職業安定法上の問題を惹起させる点を説明する

採用面接で結婚観や家族観を聞かれて納得できない場合、面接官や人事担当者にその質問が採用差別(就職差別)の問題や職業安定法上の違法性を指摘できる点を先ほど挙げた厚生労働省の指針などを提示して説明してみるのも一つの選択肢として考えられます。

もちろんそうすれば、機嫌を損ねた企業側に不採用の判断をされてしまうかもしれませんが、(1)で述べたようにそのような会社から採用を貰ってもリクすしかありませんし、その倫理違反や違法性を指摘することでその企業の面接態様が改善されれば、社会から一つの差別的な面接を無くすことができたということで社会的な意義はあると言えます。

ですから、不採用になっても構わないというのであれば、その不当性や違法性を指摘してみるのもよいかもしれません。

(3)ハローワークに面接で結婚観や家族観を聞かれた事実を申告(相談)する

採用面接で結婚観や家族観を聞かれ、それに納得できない場合には、ハローワークにその事実を申告(相談)してみるという選択もあります。

前述したように、そのような質問は採用差別(就職差別)につながるため厚生労働省の指針でも注意喚起されていますが、厚生労働省の指針の指導はハローワークの管轄でもありますので、ハローワークにその事実を申告(相談)することで情報提供の一つとして将来的な指導に役立てられる可能性もあります。

また、先ほど説明したように、そのような質問は職業安定法の「求職者等の個人情報の取り扱い」規定に抵触する可能性を指摘できますが、そのような企業(その他職業紹介業社や派遣事業者等も含む)の職業安定法違反行為について厚生労働大臣は、その業務の運営を改善させるために必要な措置を講ずべきことを命じることができ(職業安定法第48条の3第1項)、その厚生労働大臣の命令に企業が違反した場合には「6月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰の対象とすることも可能です(職業安定法第65条第7号)。

職業安定法第48条の3第1項

厚生労働大臣は、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者又は労働者供給事業者が、その業務に関しこの法律の規定又はこれに基づく命令の規定に違反した場合において、当該業務の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、これらの者に対し、当該業務の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

職業安定法第65条第7号

次の各号のいずれかに該当する者は、これを6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
第1号∼6号(中略)
第7号 第48条の3第1項の規定による命令に違反した者

そうすると、その事実をハローワークに申告(相談)することで厚生労働大臣からの監督権限の行使を促し、その企業の採用差別や違法な個人情報の収集行為を改善させることができるかもしれませんから、社会から採用差別や違法行為を無くす一助となり得る点においてハローワークに情報提供する社会的な意義はあると言えます。

もちろん、それで自分の不採用が覆ることはないかもしれませんが、社会全体の利益を考えれば、ハローワークに申告(相談)してみることも考えてよいと思います。

(4)労働局の紛争解決援助の手続きを利用して解決を図る

採用面接で結婚観や家族観を聞かれて不採用になった場合には、その事実を労働局に申告(相談)し、労働局が主催する紛争解決援助の手続きを利用して解決を図るというのも一つの選択肢として考えられます。

労働局では労使間で発生した紛争を解決するための紛争解決援助の手続きを整備していますが、この手続きは募集し採用など労働契約が成立する前の段階で発生した紛争についても受理していますので、採用面接で結婚観や家族観を聞かれるなど採用差別(就職差別)の疑いのある行為で不採用になったようなケースもこの手続きで解決を図ることが可能です。

もっとも、この労働局の手続きに法的な拘束力はありませんので、企業側が手続きへの参加を拒否してきた場合には解決は図れませんが、企業側が手続きに応じる場合には、労働局から出される助言や指導に企業側が従うことで不当な採用面接が改善されたり、場合によっては企業側が非を認めて採用差別(就職差別)によって判断された不採用を覆し採用内定を出すこともあるかもしれません。

ですから、採用面接で結婚観や家族観を聞かれて不採用にされた判断に納得できない場合には、とりあえず労働局に相談して紛争解決援助の手続きを利用できないか検討してみるのも一つの選択肢としてアリかと思われます。

なお、労働局の紛争解決援助の手続きの詳細は『労働局の紛争解決援助(助言・指導・あっせん)手続の利用手順』のページで詳しく解説していますので参考にして下さい。

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その他の対処法

これら以外の対処法としては、各都道府県やその労働委員会が主催するあっせんの手続きを利用したり、弁護士会や司法書士会が主催するADRを利用したり、弁護士(または司法書士)に個別に相談・依頼して裁判や裁判所の調停手続きを利用する方法が考えられます。

なお、これらの解決手段については以下のページを参考にしてください。

労働問題の解決に利用できる7つの相談場所とは