計画運休・計画停電による休業でも給料や休業手当を請求できるか

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台風や豪雨災害、地震その他の災害が予測される場合、交通機関や運送機関が計画運休を実施する場合があります。

たとえば、台風の接近が予測される時間帯に鉄道会社やバス会社が路線の運行を停止したり、運送機関が配送を取りやめるケースが代表的です。

また、そのような災害が発生した場合に、設備に問題の生じた電力会社が送電をストップしたり時間帯を限って送電の供給を制限する計画停電を実施する場合もあります。

たとえば、豪雨の影響で土砂崩れが発生し送電設備に異常が生じて送電をストップしたり、発電所の機能が低下して発電の調整が行われるようなケースです。

このような計画運休や計画停電が行われた場合、その交通機関や電力に依存している会社では休業を余儀なくされる場合がありますが、その場合労働者は会社に対して休業期間中の賃金や休業手当の支払いを求めることができるのでしょうか?

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雇用契約(労働契約)で合意があれば、計画運休や計画停電を理由とした休業でも賃金や休業手当が支払われる

このように、地震や台風、豪雨災害等の影響によって計画運休や計画停電が行われ、そのために会社(個人事業主も含む)が休業を余儀なくされた場合に、労働者がその休業期間中の賃金や休業手当の支払いを求めることができるかという点が問題となりますが、基本的にはその会社と労働者の間で結ばれている雇用契約(労働契約)の内容によって定められます。

つまり、会社と労働者の間で結ばれている雇用契約(労働契約)の内容で、計画運休や計画停電の場合にも会社が賃金を支払うことで合意されている場合は休業期間中に賃金が支払われますし、会社が休業手当を支払うことで合意されている場合は休業期間中に休業手当が支払われることになります。

具体的に説明すると、たとえば労働者が入社する際に会社との間で

「天災事変等の不可抗力によって計画運休または計画停電等が生じたことにより会社が休業した場合は当該休業期間中の賃金の全額を支払う」

といった合意がなされている場合にはその合意が雇用契約(労働契約)の内容となって契約当事者を拘束することになりますので、会社は計画運休や計画停電の影響で休業する場合であっても労働者にその休業期間中の「賃金の全額」を支払わなければなりませんし、労働者もその休業期間中の「賃金の全額」を会社に請求することができるということになります。

また、仮にその合意が

「天災事変等の不可抗力によって計画運休または計画停電等が生じたことにより会社が休業する場合は平均賃金の6割の休業手当を支払う」

といった内容で結ばれている場合であれば、会社は計画運休や計画停電の影響で休業する場合であっても労働者にその休業期間中の「平均賃金の6割の休業手当」を支払わなければなりませんし、労働者もその休業期間中の「平均賃金の6割の休業手当」の支払いを会社に請求することができるということになります。

この「休業手当」に関する合意がなされている場合では、労働基準法第26条で「平均賃金の6割」の支払いが義務付けられていますので、後述するように計画運休や計画停電で休業することが「使用者の責めに帰すべき事由」と判断できるケースの場合には、会社は必ず「平均賃金の6割」以上の休業手当を支払わなければなりません。ですから、たとえば「平均賃金の5割の休業手当を支払う」という形で合意されていたとしても労働者は「平均賃金の6割」の休業手当の支払いを求めることができるということになります。

なお、このような合意が雇用契約(労働契約)にあるかないかをどのようにして確認するかという点が問題となりますが、通常は入社する際に会社から交付を受けた雇用契約書(労働契約書)や労働条件通知書、あるいは会社にある就業規則や労働協約などで確認することになるでしょう(※具体的には以下の確認方法を参考にしてください)。

以上のように、計画運休や計画停電によって会社が休業した場合に休業期間中の賃金や休業手当を受け取ることができるかはまずその会社との間の雇用契約(労働契約)の内容を確認することが必要ですので、これらの書面に休業期間中の賃金や休業手当の請求の根拠となる規定がないか確認することがまず必要となるでしょう。

そして、その確認を行ってもそのような合意がない場合にはじめて、以下で解説する法律上の基準を基に会社からその支払いを受けられないか検討することになります。

なお、上記のような就業規則等の規定があるにもかかわらずその支払いがなされない場合の対処法については『計画運休/停電で就業規則等で定めた休業手当が支払われない場合』のページで詳しく解説しています。

雇用契約(労働契約)で合意がない場合、計画運休や計画停電を理由とした休業でも「賃金」や「休業手当」を請求できるか?

このように、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合にその休業期間中の賃金または休業手当の支払いを請求することができるかは、その会社との契約内容によって左右されます。

そのため、計画停電の影響で休業が生じた場合に給料や休業手当を受け取れるか否かは、まず契約書や就業規則等でその支払いに関する合意規定がないか確認することが必要ですが、仮にその合意がなかった場合には法律の規定に基づいて判断するしかありません。

この点、計画運休や計画停電によって生じた休業の場合における「賃金」や「休業手当」の支払いについては「賃金」と「休業手当」でそれぞれ別の法律の適用を考えなければなりませんので、以下それぞれ別個に検討していくことにいたします。

(1)計画運休や計画停電の影響による休業で「賃金」は請求できない

まず、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合にその休業期間中の「賃金」の請求ができるかといった点を検討しますが、結論から言うと「賃金」の支払いは請求できません。

なぜなら、会社が休業した場合の「賃金」の支払いを求める場合の根拠条文は契約一般における危険負担を規定した民法第536条2項になりますが、そこでは「債権者の責めに帰すべき事由」がある場合に債務者の反対給付請求権の行使を認めていますが「債権者の責めに帰すべき事由ではない事由」によって債務者が債務の履行ができなくなった場合までは反対給付請求権の行使を認めていないからです。

【民法第536条2項】

(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(後段省略)

契約当事者の双方が債権と債務を負担する契約は双務契約と呼ばれますが、その双務契約では債務者は債権者に対して負担する債務を履行する代わりに債権者から反対に給付を受ける権利を有しています。

しかし、その反対給付請求権は債務の履行と不可分なので債権者が債務の受け取りができない状況に陥った場合はその反対給付請求権も行使できなくなってしまいます。

そのため、その債務者の反対給付請求権が行使できなくなる「危険負担」を債権者に転嫁させるため民法第536条2項では「債権者の責めに帰すべき事由」によって債務の履行ができなくなった場合に限って債務者の反対給付請求権を失わないと規定して債務者を保護しているのです。

そして、雇用契約(労働契約)も契約である以上この民法第536条2項の規定が適用されるのですが、この民法第536条2項の規定を雇用契約(労働契約)に当てはめた場合には、

「会社の責めに帰すべき事由によって仕事ができなったときは、労働者は賃金を受け取る権利を失わない」

という文章になります。これは言い換えると

「会社の責めに帰すべき事由によって休業する場合であっても労働者は賃金の支払いを受ける権利を失わない」

ということになりますが、計画運休や計画停電は電力会社等の都合によって行われているものであってその労働者が勤務する「会社の責めに帰すべき事由」によって行われているものではありませんから、この民法第536条2項の規定の「債権者の責めに帰すべき事由」の要件を満たさないことになります。

つまり、計画運休や計画停電が原因で会社が休業する場合には、その休業の原因に「会社の責めに帰すべき事由」は存在しないので、この民法第536条2項を適用することができないわけです。

ですから、計画運休や計画停電による休業の場合には労働者は民法第536条2項の規定を根拠にして会社にその休業期間中の「賃金」の支払いを求めることができないという結論になるのです。

(2)計画運休や計画停電の影響による休業で「休業手当」は請求できる場合もある

では、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合に会社に対して「休業手当」の支払いを請求することはできるのでしょうか。

使用者(個人事業主も含む)が休業した場合に支給される「休業手当」については労働基準法第26条に規定がありますので、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合にもこの規定を適用することができるのか検討してみましょう。

【労働基準法第26条】

(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない

(ア)計画運休や計画停電による休業では「休業手当」は請求できないのが原則

この点、上に挙げた労働基準法第26条の規定を見てもわかるように、会社が休業する場合に労働者に対して「休業手当」を支払わなければならないのは「使用者の責めに帰すべき事由」による休業の場合に限られています。

しかし、先ほども述べたように計画運休や計画停電は公共交通機関や運送機関、あるいは電力会社などの都合で行われたものであって、その休業する会社自体に帰責事由の生じるものではありませんから、計画運休や計画停電の影響で行われる会社の休業については「使用者の責めに帰すべき事由」は存在しないと言えるでしょう。

ですから、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合には労働基準法第26条の適用はできないと考えられますので、そのような場合は労働者は会社に対して休業期間中の「休業手当」の支払いを求めることはできないということになるでしょう。

(イ)「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」による休業と言える事情がある場合は「休業手当」の支払いを求めることができる(場合もある)

(ア)で説明したように、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合には、その計画運休や計画停電という事実に「会社の責めに帰すべき事由」はないと考えられますので労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」による休業にはあたらないことから労働者はその休業期間中の休業手当の支払いを求めることができないのが原則です。

もっとも、だからといって必ずしも計画運休や計画停電の影響で会社が休業する場合のすべてのケースで労働基準法第26条の適用がないというわけではありません。

計画停電の影響で会社が休業する場合であっても「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」によって会社が休業する場合には、労働基準法第26条の適用が認められるケースもあるものと考えられます。

なぜなら、「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」によって休業する場合には、経営者が通常の注意義務さえ払っておけば休業を回避できたことが推測できますから、その場合には「債権者の責めに帰すべき事由」によって休業したものとして労働基準法第26条の適用を認めても差し支えないからです。

この点、具体的にどのような事実があれば「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」と言えるかという点が問題となりますが、たとえば豪雨による土砂崩れの影響で道路が寸断されて資材を搬入する運送会社が運送を取りやめたことで工場が操業を停止したようなケースを例にとると、例えば運送会社に別のルートで搬入してもらえば資材の搬入が可能であったようなケース(例えば国道58号線が土砂崩れで通行止めになっていても県道475号線を使って迂回すれば搬入できたのにそれを運送会社に伝えないまま休業してしまったようなケースなど)であれば、会社の方で仮に土砂崩れで道路が寸断しても代替えルートで資材を搬入することで休業を回避できた可能性もありますから、その点でその運送会社の運休は「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」と言える余地があるので労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」があったと判断して労働基準法第26条の適用が認められる場合もあるかもしれません。

また、台風の影響で発電所が故障して電力会社が計画停電をしたことで工場が休業した場合であっても、たとえばその工場に自家発電装置があって台風が来る前に自家発電装置の点検をしておけば発電できたのにそれを怠って結局発電することができず休業をせざるを得なかったというようなケースでもその停電による休業は自家発電で回避できた可能性も否定できないので「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」ということになって労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」による休業と認定されて休業手当の請求ができる場合もあるかもしれません。

もちろん、仮にこのようなケースがあったとしても必ずしも「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」と判断できるわけではありませんし、そのように判断されて労働基準法第26条の適用が認められるのはレアケースかもしれません。

ただ、そのような可能性もないわけではないのですから、計画運休や計画停電の影響で会社が休業した場合に休業手当が支払われない場合には、この「経営者が通常の注意義務を払えば予測できるような障害」といえる事情がなかったかといった視点から十分に検討することも必要でしょう。

もっとも、この点の判断は法律の専門家でないと難しい面がありますので、実際にそういったトラブルに巻き込まれた場合は速やかに弁護士等の法律専門家の助言を受けることをお勧めします。