解雇予告・解雇予告手当の適用が除外される4つの雇用形態とは

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有期労働契約における「契約期間満了時の雇止め」の場合は解雇予告と解雇予告手当の適用は排除されるのが原則

以上の4つとは別に、契約期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」というように一定の期間に限定された有期労働契約(有期雇用契約)の契約期間が満了して「雇止め」される場合に労働基準法第20条の適用があるかという点が問題となりますが、有期労働契約の契約期間が満了する場合には、「解雇」ではなく単なる「期間満了による退職」となりますので、基本的には労働基準法第20条は適用されません。

ですからたとえば、「契約期間が半年」の契約で1月1日から6月30日まで勤務した場合に、契約更新がなされず6月末日で退職扱いになる場合は、会社から解雇予告や解雇予告手当の支払いがなされなかったとしても、その会社は労働基準法第20条違反とはならないわけです。

有期労働契約で働く労働者が期間満了で雇い止めされる場合であっても解雇予告と解雇予告手当の適用がある場合がある

ただし、厚生労働省のガイドライン (労基法14条2項に基づく告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」) では、以下の3つのケースで例外的に解雇予告と解雇予告手当の支払いを義務付けていますので注意が必要です。

  • A)有期労働契約が3回以上更新されている場合
  • B)1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える場合
  • C)1 年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

A)有期労働契約が3回以上更新されている場合

使用者が3回以上にわたって有期労働契約(有期雇用契約)の更新をしている労働者を解雇する場合には、労働基準法第20条に従って解雇日の30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告期間を短縮した日数に応じた平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労基法第14条2項に基づく告示)。

これは、契約期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」といったように限定されて雇用される労働者であっても3回以上契約が更新されれば「次の契約も更新されるだろう」という期待が生じるため、解雇予告をせずに解雇することを認めてしまうと労働者に不測の不利益を与えてしまうため労働者の保護を図る必要があるからです。

ですからたとえば、「契約期間3か月」の契約で1月1日から勤務をはじめ、3月末、6月末、9月末と3回契約更新を受けている労働者が12月10日に「次の契約更新はしない」と言われた場合には、解雇予告期間が10日間足らないので10日分の平均賃金を解雇予告手当として請求することができるということになります。

また、同様に「契約期間3か月」の契約で1月1日から勤務をはじめ、3月末、6月末、9月末と3回契約更新を受けている労働者が12月31日になっていきなり「今日で雇止めするから」と言われた場合には、30日分の平均賃金を解雇予告手当として請求できることになります。

なお、この点の詳細については『有期契約の「雇止め」でも解雇予告手当を請求できる3つのケース』のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。

B)1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える場合

使用者が、1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超えている労働者を解雇する場合についても、使用者は労働基準法第20条に従って解雇日の30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告期間を短縮した日数に応じた平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労基法第14条2項に基づく告示)。

これは、たとえ契約期間が1年未満の短い期間で限定されて雇用される労働者であったとしても、その短い契約が更新されて1年を超えて継続して雇用され続けていれば「次の契約も更新されるだろう」という期待が生じるため、解雇予告をせずに解雇することを認めてしまうと労働者に不測の不利益を与えてしまうことになり、労働者の保護を図る必要があるからです。

ですから、たとえば「契約期間が6か月」の有期契約で働いている労働者が2回の契約更新を受けて契約期間の通算が1年を超えた後、3回目の契約期間が満了する日になって「次の(3回目の)更新はしないから」と言われて雇止めされた場合には、会社に対して30日分の平均賃金を解雇予告手当として請求できるということになります。

なお、この点の詳細については『有期契約の「雇止め」でも解雇予告手当を請求できる3つのケース』のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。

C)1 年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

使用者が、1年を超える契約期間の有期労働契約で雇用している労働者を解雇する場合についても、労働基準法第20条に従って解雇日の30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告期間を短縮した日数に応じた平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労基法第14条2項に基づく告示)。

これは、契約期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」といったように限定されて雇用される労働者であっても、1年を超えるような比較的長期の契約で雇用されている場合には、実質的には期間の定めのない雇用契約(無期労働契約)で働く正規労働者と変わりはなく、解雇予告をせずに解雇することを認めてしまうと労働者に不測の不利益を与えてしまうため労働者の保護を図る必要があるからです。

ですから、たとえば「契約期間が2年」の有期契約で働いている労働者が契約期間の2年が満了する日になって「次の更新はしないから」と言われて雇止めされた場合には、会社に対して30日分の平均賃金を解雇予告手当として請求できるということになります。

ただし、「1年を超える」有期労働契約でなければなりませんので、「契約期間1年間」の有期労働契約で雇用された労働者が解雇される場合には、その契約は1年を超えてはいないことになりますので(※厚労省の告示では「1年以上」ではなく「1年を超えて」となっている点に注意)、最初の更新の際に雇止めされた場合には、解雇予告手当の支払いがなされなくても違法性を指摘することはできないでしょう。

なお、この点の詳細については『有期契約の「雇止め」でも解雇予告手当を請求できる3つのケース』のページで詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。