労働委員会の相談・あっせん等を利用して労働問題を解決する場合

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勤務先の会社で労働トラブルに巻き込まれた場合、具体的な行動を起こしてそのトラブルの解消に努める必要があります。

労働トラブルが発生している場合には勤務先の会社(個人事業主も含む)が何らかの法令違反や雇用契約違反行為をしていることが推測されますが、その違反行為を使用者(雇い主)が故意または過失にもとづいて行っている以上、使用者(雇い主)側の判断で自主的に法令違反や契約違反状態を改善することは期待できないからです。

この点、労働問題の解決手段としては、裁判所における裁判手続や労働基準監督署、あるいは労働局の手続きを思い浮かべる人が圧倒的に多いと思いますが、これら以外にも各都道府県に設置された「労働委員会」を利用して労働問題の解決を図るという手段も存在しています。

都道府県の各労働委員会では、労働者からの雇用に関する相談や労働者と使用者(雇い主)との間に生じた紛争解決のための「斡旋(あっせん)」や「調停」「仲裁」などの手続きを取り扱っていますので、勤務先の会社で発生しているトラブルの性質によっては、労働委員会を利用することで問題の解消を図ることも十分に見込めるはずです。

そこでここでは、労働委員会を利用した労働問題の解決方法について簡単に解説してみることにいたしましょう。

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労働委員会とは?

労働委員会を利用した労働問題の解決方法を解説する前提として、まず労働委員会が具体的にどのような組織として存在しているのかという点を理解してもらう必要がありますので、ここで簡単に説明しておくことにしましょう。

労働委員会とは、使用者(雇い主)を代表する「使用者委員」と、労働者を代表する「労働委員」、公益を代表する「公益委員」の3者によって組織される、労働組合法に基づいた組織のことを言います(労働組合法第19条1項)。

【労働組合法第19条第1項】
労働委員会は、使用者を代表する者(以下「使用者委員」という。)、労働者を代表する者(以下「労働者委員」という。)及び公益を代表する者(以下「公益委員」という。)各同数をもって組織する。

この点、労働委員会は「国(厚生労働大臣)」の所管として設置される「中央労働委員会」と、「都道府県(都道府県知事)」の所管として設置される「都道府県労働委員会」の2種類が存在していますが、労働者が労働問題を解決する場合には「都道府県」が設置する「都道府県労働委員会」を主に利用することになりますので、ここでも「都道府県労働委員会」について解説することにいたします。

【労働組合法第19条第2項】
労働委員会は、中央労働委員会及び都道府県労働委員会とする。
【労働組合法第19条の12第1項】
都道府県知事の所轄の下に、都道府県労働委員会を置く。

都道府県労働委員会の担う役割は多岐にわたりますが、労働者との関係で主に利用されるのは労働委員会が主催する「相談事業」と、労働組合法に基づいて行われる「あっせん」「調停」「仲裁」の手続きです。

【労働組合法第20条】
労働委員会は、第五条、第十一条及び第十八条の規定によるもののほか、不当労働行為事件の審査等並びに労働争議のあっせん、調停及び仲裁をする権限を有する。

(1)労働委員会の「相談」で労働問題の解決を図る

都道府県知事が各都道府県に設置した労働委員会(都道府県労働委員会)では、労働者や使用者(雇い主)から雇用関係で生じる様々な問題について相談に応じる相談事業を行っています。

労働者や使用者(雇い主)からの相談については基本的に労働委員会の委員(労働組合経験者、弁護士、社会保険労務士など労働関係法規の専門家)や労働委員会の職員が担当しますので、簡単な労働トラブルであれば労働委員会の相談を受けてアドバイスをもらうだけで解決が見込めるケースもあります。

ですから、勤務先の会社(個人事業主も含む)で労働問題に巻き込まれた場合は、まず最初に都道府県労働委員会の実施する無料相談を受けてみるというのもトラブル解決の手段として有効と考えられます。

(2)労働委員会の「あっせん」で労働問題の解決を図る

各都道府県に設置された労働委員会では、労使間に生じた個別の労働紛争に関して「あっせん」の手続きを実施しています。

「あっせん」とは、労働者と使用者(雇い主)の間で生じた労働関係の紛争に関して労働委員会の委員が中立的な仲介人となって当事者間の話し合いを促し、当事者の間で合意をまとめる手続きを言います。

たとえば、セクハラに悩む労働者が労働委員会に「あっせん」の申請を行った場合であれば、労働委員会の選任したあっせん委員がセクハラの事実関係や会社側の対応などを労働者と使用者(雇い主)の双方から聴取し、そのうえで必要な助言をしながら当事者の話し合いに立ち会うことになります。
そして、当事者間の話し合いでセクハラの改善策がまとまる場合はその合意によって、当事者間における合意の形成が難しい場合には労働委員会からセクハラの改善策等の一定の「あっせん案」が提示されることによって、当事者間で生じた問題の解決が図られることになります。

「あっせん」の手続きには強制力がないため、労働者の申し込みによって開始する場合は使用者(雇い主)側が「あっせん」の手続きへの参加に協力してくれることが前提となりますが、使用者(雇い主)側が参加してくれる程度に協力的なケースではこの「あっせん」の手続きを利用して問題解決を図ることも十分に可能であると思います。

なお、労働委員会は本来、労働組合という「団体」と使用者(雇い主)との間で生じた紛争を解決する「団体交渉」の場として機能していましたので、従来は労働者「個人」の申し込みによる「あっせん」等の個別労働紛争の解決は利用が制限されていましたが、現在では「東京・兵庫・福岡」の3都県を除いたすべての都道府県労働委員会において「労働者個人」による「あっせん」の手続きの利用が認められています。

「東京・兵庫・福岡」の労働委員会については、従来どおり「あっせん」等の紛争解決手続きは労働組合の申し立てによる「団体交渉」に限られているため「労働者個人」からの「あっせん」の申し込みはできませんが、「東京・兵庫・福岡」以外の道府県の労働委員会では労働組合に加入していない「労働者個人」であっても労働委員会に「あっせん」の申請をすることで労働問題の解決が図れるようになっていますので、「東京・兵庫・福岡」以外の道府県で労働委員会の「あっせん」で問題解決を図りたい場合には、その利用を検討してみるのもよいのではないかと思います。

※東京・兵庫・福岡で働く労働者やその地域の会社で働く労働者が「あっせん」の手続きを利用したい場合は、東京都や兵庫県、福岡県など自治体が主催する「あっせん」の手続きを利用するか、労働局の紛争解決援助の手続きにおける「あっせん」を利用することになります。

(3)労働委員会の「調停」で労働問題の解決を図る

労働委員会では(1)で説明した「あっせん」の他にも「調停」も扱っています。

労働委員会の「調停」を利用する場合は、労働委員会の組織する調停委員会が当事者双方から事実関係の聴取を行って一定の調停案を当事者に提示し、その調停案に当事者双方が合意する場合にその調停案を基にした解決がまとめられることになります(※調停案に合意するかしないかは労働者と使用者の自由ですので調停案が納得できない場合は拒否しても構いません)。

もっとも、先ほどの(1)で説明した「あっせん」については「東京・兵庫・福岡」を除くすべての都道府県労働委員会で「労働者個人」からの申し込みが可能でしたが、この「調停」に関しては基本的に労働組合からの申し込みしか受け付けておらず「労働者個人」による利用は認められていないようです。

ですから、この労働委員会の「調停」を利用して労働問題の解決を図りたい場合は労働委員会に相談をしたうえで労働組合等に加入し、その労働組合を介して「調停」の申し込みをする必要があるかもしれません。

(4)労働委員会の「仲裁」で労働問題の解決を図る

労働委員会では「仲裁」による労働問題の解決も行っています。

「仲裁」は労使の紛争当事者双方からの申請か、労働協約に基づいた紛争当事者一方からの申請があった場合に行われる手続きで、労働委員会の仲裁委員会が当事者双方から事実関係等の聴取を行い一定の仲裁裁定が出され、紛争当事者双方がその労働委員会の仲裁裁定に拘束される形で労働問題の解決が図られる手続きになります(労働委員会から出される仲裁裁定は労働協約と同一の効力が生じるためその仲裁裁定に従うことが強制されます)。

もっとも、この都道府県労働委員会による「仲裁」の手続きも(3)の「調停」の場合と同様に、労働組合からの申し込みしか受け付けられておらず「労働者個人」が労働紛争解決の手段として利用することはできないのが通常です。

労働者個人がこの都道府県労働委員会による「仲裁」の手続きを利用したい場合は、まず最初に労働組合に加入して組合から申し込みを行ってもらう必要がありますのでその点に注意が必要です。

労働委員会の「相談」「あっせん」を利用して解決を図るのに適した労働問題、適さない労働問題

以上で説明したように、都道府県に設置された各労働委員会で利用できる「相談」「あっせん」「調停」「仲裁」の手続きは、基本的に労働組合という団体にのみ利用が認められたものですが、「東京・兵庫・福岡」を除くすべての労働委員会では「労働者個人」に対しても「相談」と「あっせん」の利用が認められていますので、労働組合に加入していない労働者であっても「東京・兵庫・福岡」以外に所在する会社で労働トラブルに巻き込まれている場合には、労働委員会の「相談」や「あっせん」を利用して問題の解決を図ることも可能といえます。

先ほども説明したように、労働委員会の「調停」や「仲裁」は労働組合を申立人とする利用しか認められていませんので労働組合に加入していない労働者は労働委員会の「調停」「仲裁」を利用できないのが通常です。

もっとも、労働委員会の「相談」の手続きは単に労働委員会の職員や労働委員会から委託を受けた弁護士や社会保険労務士が相談に応じるだけですし、「あっせん」の手続きも使用者(雇い主)に対する強制力がありませんので、労働委員会の「相談」や「あっせん」の手続きを利用して労働問題の解決を図る場合には、その生じているトラブルが労働委員会を利用して解決を図るのに適したものなのか、それとも労働基準監督署への申告や裁判所における裁判手続きなど労働委員会以外の手続きを利用する方がよいものなのか、という点について十分に理解したうえで利用を検討する必要があります。

(1)労働委員会の「相談」または「あっせん」を利用するのに適した労働問題とは?

ア)会社の行為が法令または雇用契約に違反するか否かをとりあえず確認したい場合

勤務先で労働トラブルに巻き込まれた場合であっても、ほとんどの一般労働者は労働基準法などの労働法の知識が十分ではありませんので、その会社側の行為が労働法や雇用契約に違反するもので違法性を指摘して良い事案なのか、それとも会社側の措置に違法性がなく自分の勘違いで違法だと思っているだけなのか、明確に判断することができないのが通常です。

しかし、会社側の行為が「労働法に違反するのか違反しないのか」「雇用契約に違反するのかしないのか」という点が明確に判断できないと、会社側の違法性なり契約違反性なりを指摘して会社に改善を求めること自体ができませんから、労働問題に巻き込まれた場合は、その巻き込まれた問題が本当に「労働問題」として声を上げて良い事案なのか否かをまず明確に判断することは不可欠といえます。

この点、労働委員会の「相談」を利用して労働法に精通した専門家(弁護士や社会保険労務士あるいは労働委員会の職員等)からの助言を受けられれば、その点の疑問はある程度解消できると思われます。

ですから、勤務先の会社(個人事業主も含む)で発生している労働トラブルについて、その原因となっている会社側の行為が労働法や雇用契約に違反しているのか違反していないのか、とりあえず知りたいと考えている場合には、労働委員会に「相談」してみるのもよいのではないかと思います。

イ)使用者(雇い主)が問題解決に協力的である場合

先ほど説明したように、労働委員会が主催している「あっせん」の手続きには強制力はありませんが、会社側が労働委員会の「あっせん」に協力する姿勢を示している場合には発生している労働トラブルの解決を図ることも不可能ではありません。

そのため、勤務先の会社で労働問題に巻き込まれた場合であっても、その会社の経営者や上司が問題解決のための話し合いにある程度応じる姿勢を示している場合には、労働委員会に相談を行い、労働委員会の「あっせん」の手続きを利用してみるのもよいのではないかと思います。

(2)労働委員会の「あっせん」を利用して解決を図るのに適さない労働問題とは?

ウ)会社が問題解決に非協力的またはブラック体質のある会社である場合

労働トラブルに巻き込まれている勤務先の会社が問題解決に非協力的であったり、そもそもブラック体質のある会社であるような場合には、労働委員会の「あっせん」の手続きを利用しても問題の解決は図れないと考えたほうがよさそうです。

先ほども説明したように、労働委員会の「あっせん」には裁判所の判決のように強制力はありませんから、たとえ会社側が労働委員会の「あっせん」のテーブルに参加し労働委員会が出す「あっせん案」に合意したとしても、その合意を会社側が無視するようなケースでは労働委員会の「あっせん」を利用すること自体が無駄になってしまいます。

ですから、会社側が最初から問題解決に非協力的な姿勢を示していたり、会社自体がブラック企業的な体質を持っていて上司や経営者が法令違反行為を行うことに罪悪感を感じていないようなケースでは、労働委員会の「あっせん」を利用するよりも、最初から弁護士や司法書士に相談して通常の裁判手続きや労働審判などを利用して解決を図る方がよいのではないかと思います。

エ)会社側が明確に労働問題の違法性等を争っている場合

会社側が発生している労働トラブルの原因について明確に会社側の違法性や契約違反性を争っているケースでも、労働委員会の「あっせん」の利用はあまりおススメできません。

そのようなケースでは、仮に労働委員会の「あっせん」を利用して会社側と話し合いをしたとしても、会社側が「あっせん」に合意するとは思えないからです。

会社側が明確に違法性なり契約違反性なりを明確に争っていて裁判も辞さないような姿勢を示しているような案件では、会社側の協力を必要とする労働委員会の「あっせん」を利用しても合意に至る可能性は少なく、結局は裁判を起こさなければならなくなって二度手間になります。

そうすると、最初から弁護士や司法書士に相談して裁判手続きを利用する方が良いケースが多いと思いますので、その点を十分に考えたうえで労働委員会を利用するか判断する必要があるといえるでしょう。

労働委員会の「相談」「あっせん」を利用する方法

以上のように、生じている労働問題の事案によっては労働委員会の「相談」や「あっせん」を利用することでトラブルの解消が図れる事案もあるといえますので、労働問題を解決する手段として労働委員会の手続きも検討してみる余地はあるといえます。

都道府県に設置された労働委員会の「相談」や「あっせん」を利用したいと思う場合は、労働トラブルが生じている会社(雇い主)の所在する都道府県に設置された労働委員会にまず電話等で連絡を入れ、労働委員会の職員等に「相談」を受けてもらってから「あっせん」に移行するかしないか決めるのが普通です。

なお、各都道府県に設置された労働委員会の連絡先等は厚生労働省のサイトに掲載されています。

「東京・兵庫・福岡」の会社におけるトラブルについて労働委員会の手続きを利用したい場合

先ほども説明したように、「東京・兵庫・福岡」の労働委員会では「労働者個人」による労働委員会の「あっせん」や「調停」「仲裁」の申し立てを受理していません。

そのため、「東京・兵庫・福岡」に所在する会社とのトラブルを労働委員会で解決しようとする場合には、その前提として労働組合に加入する必要がありますので、勤務先の会社に労働組合がない場合には、個人の加入を認めている労働組合(○○ユニオンなど)に加入する必要があります。

なお、「東京・兵庫・福岡」の会社で労働組合がない場合に個人加入を認めている労働組合にも入りたくない場合には、労働委員会の手続きを利用すること自体ができなくなりますが、「東京・兵庫・福岡」では「東京都・兵庫県・福岡県」という自治体が労働問題に関する相談事業や「あっせん」を主宰していますので、労働組合に加入するのが面倒な場合は自治体の主催する「相談」や「あっせん」を利用してもよいでしょう。

「東京・兵庫・福岡」以外の道府県では「労働委員会」の「相談」「あっせん」とは別に「道府県」も「相談」や「あっせん」を行っていますので、「東京・兵庫・福岡」以外の自治体では「労働委員会の相談・あっせん」を利用することもできますし「自治体の相談・あっせん」を利用することもできるということになります。

自治体が主催する「相談」や「あっせん」の利用方法についてはこちらのページで詳しく解説しています

なお、「自治体の相談・あっせん」とは別に、各都道府県に設置された労働局でも労働トラブルに関する「相談」や「あっせん」を行っていますので、労働局の手続きを利用して解決を図ることも可能です。