障害者が企業の採用選考や面接に応募する際に注意すべきこと

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障害者は採用選考で企業にどのような配慮を求めることができるか』のページでも解説したように、障害者が企業の採用選考に応募し採用試験や面接を受けるに際しては、その障害の特性や事情などについて企業側に申し出ることで、企業に必要な配慮を求めることができますし、その申し出を受けた企業はその障害に配慮した必要な措置を取らなければならないことが障碍者雇用促進法で義務付けられています。

もっとも、この募集や採用に際して企業に義務付けられる「障害に配慮した必要な措置」については、それを求める障害者の側で注意しなければならない点がいくつかあります。

では、障害者が障碍者雇用促進法に基づいて求職活動を行う企業に対して「障害に配慮した必要な措置」を求める場合、具体的にどのような点に気を付ける必要があるのでしょうか。

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障害者が企業の採用選考で「障害に配慮した必要な措置」を求める際に注意すべき点

障害者が企業の採用選考に応募し採用選考に臨むにあたって、その採用選考で「障害に配慮した必要な措置(※以下「合理的配慮」といいます)」を求めたい場合は、いくつかの注意すべき点があります。

具体的にどのような点に留意すべきかという点は厚生労働省が作成した指針 「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」で解説されていますので、以下その指針の内容を基に確認していくことにいたしましょう。

(1)障害者から企業側に「合理的配慮」を申し出る必要があること

障害者が企業の採用選考に応募し採用選考を受ける際に「合理的配慮」を求めたい場合には、それを応募する障害者の側から企業側に申し出る必要があります。

事業主に対して障害者に配慮した必要な措置を義務付けた障碍者雇用促進法第36条の2は「障害者からの申出により…措置を講じなければならない」とされていますので、まずその配慮を求める障害者側(求職者側)が申し出を行う必要があるわけです。

障害者雇用促進法第36条の2

事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。

ですから、障害を持つ求職者は、その合理的配慮を自分から採用選考を受ける企業に対して能動的に求める必要がある点をまず理解しておく必要があります。

(2)募集及び採用に当たって支障となっている事情及びその改善のために希望する措置の内容を具体的に申し出ること

(1)で障害者に求められる合理的配慮の申出は、「その支障となっている事情」とその改善のために「希望する措置の内容」について『具体的に』申し出る必要があります。

障害の内容や必要となる措置は個人によっても異なるため、障害者の側から「支障となっている事情」とその改善のために「希望する措置の内容」が『具体的に』説明されなければ、企業側で必要な配慮をすることもできないからです。

ですから、たとえば視覚障害を持つ求職者が募集要項を確認するのに支障がある(その支障となっている事情)と考える場合には、企業に対して音声等で募集要項を開示(希望する措置の内容)してくれるよう申し出る必要がありますし、たとえば聴覚障害を持つ求職者が企業の採用選考に応募する場合において、採用面接で口頭での面接に支障が出る(その支障となっている事情)と思う場合には、企業に対して筆談で面接を行って(希望する措置の内容)くれるよう申し出る必要があります。

(3)(2)の事情及び内容を具体的に申し出ることが困難な場合でも、少なくとも「支障となっている事情」を明らかにすること

このように、企業の採用選考に応募した障害者が合理的配慮を求める場合には、「その支障となっている事情」とその改善のために「希望する措置の内容」について『具体的に』申し出る必要がありますが、障害者が「希望する措置の内容」を具体的に申し出ることが困難な場合には「支障となっている事情」を明らかにすることで足りると解されています(厚生労働省の指針「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」参照)。

そのため、仮に障害者が企業の採用選考に応募する場合において、「障害に配慮した必要な措置」が必要となる場合において、「希望する措置の内容」が具体的にどのようなものになるか分からない場合であっても、少なくとも「支障となっている事情」は申し出る必要があります(厚生労働省の指針「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」の「第3 合理的配慮の手続1(1)」参照)。

第3 合理的配慮の手続
1 募集及び採用時における合理的配慮の提供について
(1)障害者からの合理的配慮の申出
募集及び採用時における合理的配慮が必要な障害者は、事業主に対して、募集及び採用に当たって支障となっている事情及びその改善のために希望する措置の内容を申し出ること。
その際、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りること。

※出典: 「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)|厚生労働省

ですから、たとえば車イスを利用している障害者が、企業の面接会場で移動に支障が出ることが懸念されるものの、その企業で具体的にどのような「希望する措置の内容」が必要になるか分からない場合(たとえばスロープが必要になるのか、車イスを押す介助者が必要になるのか分からないなど)であっても、「車椅子を使う必要があるので移動に支障がある」などの「支障となっている事情」については明らかにする必要があると思われます。

(4)面接日等より前に余裕をもって申し出ること

なお、以上の要領で障害者から申し出られる合理的配慮の要請については企業側でも相当な時間と労力を割いて対処することが求められますので、面接日等の直前になって申し出が行われても企業側で十分な措置がとれません。

ですから、以上の申出を行う障害者は、実際の面接日等が到来するより前に、時間的な余裕をもって企業側にその障害に関する事情やその必要となる具体的な措置について申し出る必要があります(※厚生労働省の指針「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」の「第3 合理的配慮の手続1(1)なお書き」参照)。

なお、合理的配慮に係る措置の内容によっては準備に一定の時間がかかる場合があることから、障害者には、面接日等までの間に時間的余裕を持って事業主に申し出ることが求められる。

※出典:「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)|厚生労働省 「第3 合理的配慮の手続1(1)なお書き」より引用

(5)合理的配慮に係る措置の内容について話し合うこと

以上のように、企業の採用選考に応募する障害者は必要となる合理的配慮を企業側に求めることができますが、その申し出があった場合、合理的配慮としてどのような措置を講ずるかについて企業側から協議を求められることがありますので、その場合には障害者の側から希望する措置の内容を具体的に説明することも必要になるでしょう。

なお、その話し合いで障害者が希望する措置(合理的配慮)の内容を具体的に申し出ることが困難な場合であっても、企業側から実施可能な措置を示すことが義務付けられていますので、具体的にどのような合理的配慮が必要になるか自分で申告できなかったとしても心配する必要はありません(※厚生労働省の指針「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」の「第3 合理的配慮の手続1(2)」参照)。

(2)合理的配慮に係る措置の内容に関する話合い
事業主は、障害者からの合理的配慮に関する事業主への申し出を受けた場合であって、募集及び採用に当たって支障となっている事情が確認された場合、合理的配慮としてどのような措置を講ずるかについて当該障害者と話し合いを行うこと。
なお、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、事業主は実施可能な措置を示し、当該障害者と話し合うこと。

※出典:「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)|厚生労働省 「第3 合理的配慮の手続1()」より引用

(6)障害者が申し出た合理的配慮について企業側から「過重な負担」を理由に実施できない旨の回答がなされた場合に十分な説明が受けること

なお、上記の要領で企業側に合理的配慮を申し出て話し合いを実施し、企業側がその措置を検討したとしても、企業側から「過重な負担」を理由にその措置ができないと回答されるケースがあります。

たとえば、資格障害を持つ求職者が音声等による採用試験の受験を合理的配慮に係る措置として求めたものの、面接日の当日までに採用試験の問題を音声等に変換するのが「過重な負担」になると判断されたようなケースです(※「過重な負担」が具体的にどのような基準で判断されるかについては→採用選考で障害者への合理的配慮が除かれる「過重な負担」とは)。

もっとも、このような場合であっても企業側で合理的配慮の実施義務が免れるわけではなく、企業側においては、合理的配慮の選択肢が複数ある場合は当該障害者話し合いをしたうえでより提供しやすい別の措置を講じたり、当該障害者の意向を十分に尊重したうえで、過重な負担とならない範囲で別の合理的配慮に係る措置を講ずる義務があります(※厚生労働省の指針「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」の「第3 合理的配慮の手続1(3)」参照)

(3)合理的配慮の確定
合理的配慮の提供義務を負う事業主は、障害者との話し合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講ずるかを検討し、講ずることとした措置の内容又は当該障害者から申し出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、当該措置を実施できないことを当該障害者に伝えること。
その検討及び実施に際して、過重な負担にならない範囲で、募集及び採用に当たって支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話し合いの下、その意向を十分に尊重したうえで、より提供しやすい措置を講ずることは差し支えないこと。また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であった時、事業主は、当該障害者との話し合いの下、その意向を十分に尊重したうえで、過重な負担とならない範囲で、合意的配慮に係る措置を講ずること。
講ずることとした措置の内容等を障害者に伝える際、当該障害者からの求めに応じて、当該措置を講ずることとした理由又は当該措置を実施できない理由を説明すること。

※出典:「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)|厚生労働省 「第3 合理的配慮の手続1(3)」より引用

そのため、たとえば今のケースであれば、面接日当日までに採用試験を音声等に変換することができないとしても、面接日を後日にずらせば企業側に「過重な負担」とならない範囲で音声等による採用試験が実施できるような事情があれば、そうした代替措置をしてもらってもよいと思います。

ですから、企業側に合理的配慮に係る措置を求めた際に、企業側から「過重な負担」を理由にその実施が困難である旨の回答があった場合には、その「過重な負担」が本当に過重な負担となっているのかという点、またその代替措置が企業側に過重な負担とならない範囲で障害に配慮した必要な措置として十分かいった点を十分に確認する必要があります。

企業側から納得のできる説明がなされない場合には、厚生労働大臣の指針を提示するなどして説明を求めることも必要になるかもしれません。