企業の採用活動に応募する際、その企業が指定する応募書類に必要事項を記入して郵送するよう求められるケースがあります。
「エントリーシート」などと呼ばれる書類がそれで履歴書などもこれに含まれますが、このエントリーシートを受け取ったときに必ずチェックした方が良い点が一つあります。
それは、そのエントリーシートが厚生労働省が示す基準に準拠しているかという点です。
エントリーシートや履歴書は厚生労働省の指針に準拠することが求められる
企業が採用活動で使用するエントリーシートや履歴書は、応募者の様々な個人情報が記入されることになりますので、そこで指定される記入事項には、応募者における「就職の機会均等」が損なわれないような配慮が求められます。
この点、厚生労働省は採用差別(就職差別)につながる事項を具体的に説明した指針(※参考→https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo.htm)を公開していますので、企業が採用活動する場合には、この指針に沿ったエントリーシートや履歴書を使用することが求められることになります。
特に、履歴書については、厚生労働省が採用差別(就職差別)につながる事項を除外したモデルとなる様式をサイトで公開しており、その様式を使用しない場合はJIS規格の履歴書を使用するよう指導されていますので、常識的な会社では、この厚生労働省が指定する様式かJIS規格の履歴書を使用するのが通常です。
【新規中卒・高卒予定者のエントリーシート等】
【新規大卒等予定者のエントリーシート等】
- 新規大学卒等卒業予定者用標準的事項の参考例
- JIS規格の様式例に基づいた履歴書
※一般求職者(中途採用等)はJIS規格の様式例に基づいた履歴書」を使用
ではなぜ厚生労働省がこのような指針を出しているかというと、それは企業が独自に作成したエントリーシートや履歴書では、本籍地や家族関係、あるいは病歴など、その応募者の適性や能力とは関係のない応募者に責任のない事項を記入する欄が設けられているものがあるからです。
企業が労働者を募集し採用する際には、憲法で保障された基本的人権の要請から応募者の「就職の機会均等」が損なわれないように配慮することが求められますが、本人の能力や適性に関係ない事項や本人に責任のない事項までエントリーシートや履歴書に書くことを強いられて採用基準に用いられれば、応募者が不当な差別に晒される危険があります。
そのため厚生労働省は、採用差別(就職差別)につながる質問項目について指針を出しているのです。
厚生労働省が推奨する様式を使わない企業の意図とは
このように、厚生労働省は採用差別(就職差別)につながるエントリーシートや履歴書を排除するために指針を公開していますから、まともな会社であれば厚生労働省の指針に沿ったエントリーシートや履歴書を応募者に配布(または指定)するはずです。
にもかかわらず、それを無視して企業独自の様式に固執している企業があるとすれば、その企業は採用差別(就職差別)の問題に頓着しない倫理観の欠落した会社であるか、法令遵守意識の低い会社であるか、あるいは採用差別(就職差別)を差別にあたるとは考えてもいないブラック体質を持った会社であるかのいずれかであることが強く推認されるでしょう。
つまり、企業からエントリーシートや履歴書を指定された場合には、その指定された様式が厚生労働省の指針に準拠しているか否かを確認するだけで、その企業がどのような体質を持つ会社であるかという点を容易に推測することができるわけです。
エントリーシートや履歴書を指定されたときは厚生労働省の指針に沿っているか確認しよう
以上で説明したように、厚生労働省は採用差別(就職差別)を防ぐためにエントリーシートや履歴書の記入事項について指針を出していますから、企業からエントリーシートや履歴書の提出を求められた際は、その企業が指定する様式が厚生労働省の指針に準拠するものであるか確認する方が無難です。
その確認を行い、厚生労働省の指針に準拠するものではないその企業独自の様式が指定されている場合には、その企業の倫理意識や法令遵守意識を疑った方が良いかもしれません。
もちろん、厚生労働省の指針に沿わないその企業独自のエントリーシートを指定する企業のすべてがブラック体質を持っているということはできません。
しかし、厚生労働省が指針を出しているにもかかわらずあえて企業独自の様式を使用しているということは何らかの意図があるはずですから、その意図が何かというところは十分に検討した方が良いでしょう。
企業独自の様式に本籍地や家族構成、個人の思想や信条にかかわる事項などを記入する欄がある場合には特に注意が必要です。
そのような本来個人の自由に委ねられる要素や個人の責任でどうにもならない事柄を記入するよう求めるエントリーシートが使用されている場合には、採用差別(就職差別)をする会社であることが強く推認されます。
そのような会社に間違って就職してしまわないように、エントリーシートや履歴書の様式から注意して確認することが必要です。