障害者が会社に障害への配慮を求める際に知っておきたいこと

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身体的又は精神的な障害を抱える労働者が働く場合、勤務先の会社がその障害の程度や態様に応じて必要な配慮をしてくれなければ、障害のない労働者と同じような労働力の提供ができない場合があります。

たとえば、車イスを利用する障害者は階段を移動できないため社内の段差を極力なくすような配慮が必要になりますし、聴覚障害者は口頭での指示が理解しにくいため書面等での伝達を利用するような配慮が必要になります。それらの配慮をしてくれない会社では、十分な能力を発揮できなくなってしまうでしょう。

しかし、障害者に対する理解が不十分な会社も現実には多く存在しますので、障害者が必要とする配慮に消極的な企業に就職してしまった場合には、障害者の側から会社に対して具体的な配慮を申告し、その配慮を実施するよう求めていくことも必要になるかもしれません。

もっとも、障害に配慮した必要な措置を求めるにしても、会社側とどのような話し合いの場を確保してその必要な措置を求めればよいかという点は判然としません。

では、障害者が企業等で働く場合、会社側に対してどのような要領で障害に必要な配慮を求めて行けばよいのでしょうか。

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障害者を雇用した企業には障害に配慮した必要な措置を実施しなければならない義務がある

障害者が会社に対してどのように配慮を求めることができるのかという点を考える前提として、そもそも法律が障害者に対する配慮についてどのように規定しているかを確認しておきましょう。

この点、障害者雇用促進法は第36条の3ですべての事業主に対して雇用した障害者が働くうえで支障となっている事情を改善するために、その事業主に過重な負担とならない範囲でその障害の特性に配慮した必要な措置を実施することを義務付けています。

障害者雇用促進法第36条の3

事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。

また、障害者雇用促進法第36条の4は、その障害に配慮した必要な措置の実施に当たっては、雇用した障害者を十分に尊重し当該障害者からの相談に応じなければならない義務も規定しています。

障害者雇用促進法第36条の4

第1項 事業主は、前二条に規定する措置を講ずるに当たつては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。
第2項 事業主は、前条に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

ですから、事業主の下で働く障害者は、この障害者雇用促進法の規定に基づいて、勤務先の企業に対して障害に配慮した必要な措置を実施するよう求めることができますし、その措置の実施に当たっては、企業側に対して障害者側が納得できるまで相談に応じるよう求めることもできるということになります。

障害者が会社に対して障害に配慮した必要な措置の実施を求める場合の注意点

このように、障害者雇用促進法は障害者を雇用した事業主に障害に配慮した必要な措置(合理的な配慮の提供)を実施すること、また雇用した障害者と話し合いを行い事業主に過重な負担とならない範囲でその合理的な配慮を実施することを義務付けています。

ですから、障害者は勤務している会社に対してその障害に配慮した必要な措置をとることを求めることができますが、会社側が具体的にどのような要領で合理的な配慮を実施すべきかという点はこの法律からは判然としません。

そのため、障害者の側としても、会社に対して具体的にどのような要領で合理的配慮を求めればよいか迷うところですが、この点に関しては厚生労働省が指針(「合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)」※以下「指針」といいます)である程度具体的に説明していますので、その指針が参考になります。

この指針によれば、次の(1)~(3)の要領で合理的配慮を行うことが企業側に義務付けられていますので、障害を持つ労働者は会社側に合理的配慮を求めるに際してはこの要領をある程度理解しておくことも自分を守るうえで必要になるでしょう。

(1)職場において支障となっている事情の有無等の確認

ア)障害を持つ労働者を雇用する事業主にはその障害の支障となっている事情の有無を確認する義務がある

指針では、労働者を雇用する事業主に対して、その労働者が障害者であることを雇い入れ時までに把握している場合には、その雇い入れ時までに当該障害者に対して職場において支障となっている事情の有無を確認することが義務付けられています(指針第3-2(1)参照)。

つまり、雇い入れようとしている労働者が障害を持っていることを把握している場合には、会社はその雇い入れする時までに、その障害によって職場で具体的にどのような支障が生じうるかを確認することが義務付けられているわけですが、具体的には以下の要領で確認することが求められています。

  • 労働者が障害者であることを雇い入れ時までに把握できなかった場合→障碍者であることを把握した際に職場においてどのような支障が生じうるか確認しなければならない。
  • 労働者が雇い入れ時に障害者でなかった場合→障碍者となったことを把握した際に職場においてどのような支障が生じうるか確認しなければならない。

また、障害者の障害の程度や職場の状況は変化することもありますので、事業主には、必要に応じ定期的に職場において支障となっている事情の有無確認することも義務付けられています(指針第3-2(1))。

ですから、障害を持つ労働者を雇用している会社がその障害に支障となっている事情の有無を確認することを怠ったり、その確認が不十分である場合には、その会社の態様は障害者雇用促進法を順守していないということになるでしょう。

イ)障害者は事業主からの確認を待たずに自ら障害の支障となっている事情を申し出ることもできる

障害を持つ労働者は、事業主からその支障となっている事情の有無の確認がなされない場合であっても、自分から会社側に対して職場において支障となっている事情を申し出ることが認められています(指針第3-2(1))。

ですから、会社側が障害の支障となっている事情の有無の確認を怠っていたり、その確認が不十分で十分な合理的配慮を受けられていないと感じた場合には、障害を持っている労働者の側から会社に対してその支障となっている事情を説明し、具体的な措置を求めることができるのは当然です。

この場合、会社側にはその改善のために障害者が希望する措置の内容を確認することが義務付けられていますので(指針第3-2(1))、障害を持つ労働者から職場において支障となっている事情の申し出があった場合には、会社はそれを無視することはできません。

ですから、たとえば車イスを利用する障害者が会社内の段差で移動が困難だと感じる場合において、会社側がその確認を怠って十分な対処を取らない場合には、車イスを利用する障害者の側から会社に対してその段差の解消等を申し入れることも何ら差し支えありませんし、その申し出を受けた会社側はその支障になっている事情を確認し、適切な対処が求められるといえます。